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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第2章 学生生活と冒険者生活
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第40話 最古と最新のハイエルフ

 昨日の歓迎パーティーは、かなり疲れた。

 ずーっと有力貴族や官僚たちと挨拶をして回っていた為だ。

 パーティーの間、長時間同じような笑顔でいた為、なんか顔の表情筋がおかしくなっているように感じてしまう。

 そんなパーティーを終え、やっと部屋に戻ってきて私は、すぐにドレスを脱いで、はしたないが下着のままでベッドへとダイブしたものだ。

 そしてその翌日、しっかりと寝たおかげでスッキリとした私は、暇潰しがてら城内を見学することにした。


「ネリア様、おはようございます」

「おはよう、警務ご苦労様」

「ありがとうございます」


 廊下ですれ違う警備兵に挨拶をしながら、城内を練り歩く。

 私の後ろでは、私の警護役として近衛隊の副隊長であるダイリス・ミジスタと側使いのミセルが付いて歩いている。


「今日はどのようなご予定で?」


 メインの主城内を大体散策を終える頃、ダイリスが問いかけてきた。

 今日はまだ古代エルフであるミトラストとの会う予定が決まっていない。

 なので今日は、そこまで色々とする予定ではない。

 それに城内に居た方が、会う日程が決まってもすぐに私に伝える事が出来るだろうから、今日1日は城内に居る予定である。


「今日は図書室で1日調べ物をする予定だ」

「わかりました。この後別の警護をまわしますので」

「わかった。では図書室にいかせてもらう。あと、何かあったらミセルに言伝してくれ」

「わかりました。ではそのように」


 こうしてダイリスとは別れ、図書室へと向かう。

 図書室の前まで来ると、1人の若い男性がいる。


「お待ちしておりました。今開けますのでお待ちを」


 現在の図書室の警護担当のようだ。

 昨日と同じく呪文を唱え、扉を開く。

 中に入り、受付のところに居るフランシスに声をかける。


「今日もお邪魔してるよ」

「おはようございます、ネリア様。今日はお手伝いの方は致しますか?」

「いや今日は大丈夫だ。それに一度ゆっくりとこの中も散策したいしね」

「わかりました。何かあればお声かけを」


 そう言って再び自分の仕事へと戻っていった。

 それから私は、図書室内を一度一回りすることにした。

 そして、歩きながら時々立ち止まり、中身を確認しながら必要な本を探していった。

 それから約1刻ほどだろうか。すべての本棚をまわり終え、その中から5冊の本を選んだ。

 その中には昨日持ってきてもらった3冊も含まれていえる。

 最初は昨日の3冊を中心に読み進めることにした。



 あれからどのぐらい経っただろうか?

 お腹の空き具合から大体お昼ぐらいだろう。

 一旦備え付けのしおりを挟み、ミセルを伴い図書室を出る。

 そして部屋まで戻ってしばらくしてからノックがあった。


「ネリア様。お食事の準備が整いました。どこで召し上がれますか?」

「部屋まで運んできてくれるか?」

「わかりました。すぐにお持ちいたします」


 そうして部屋まで食事を持ってきてもらい、昼食を済ませる。

 それから昼食を終えて、食後のお茶を楽しんでいた時、扉をノックする音がした。


「ネリア様。お伝えしたき事がございます。よろしいでしょうか?」

「どうぞ」


 入室を許可するとダイリスが入ってきた。


「ネリア様大変お待たせいたしました。ミトラスト様との会合の日程が決まりましたのでお伝えに参りました」

「わかった。聞こう」

「はっ。日程のほどは明日。時間は10の刻よりとなっております。それから会合場所はミトラスト様のご自宅にて行うこととなりました」

「ありがとう」

「いえ。それでご出発のお時間ですが、ミトラスト様のご自宅まで1刻半ほどかかりますので8の刻までに昨日、御入城されました南口の場所まで、お越しください」

「わかった」

「それでは失礼いたします」


 そう言ってダイリスは下がっていった。

 会合は明日か。それならば午後の予定を少しばかり早めに済ませるとしよう。

 少しばかりプランの練り直しをしながら、後ろに控えているミセルにお使いを頼む。


「ミセル」

「はい。ここに」

「このメモに記載されていることをお願いね。何かあったら念信にて連絡を頂戴」

「わかりました」

「あと、夕食は第2食堂の方でとるから、料理長の方に用事ついでに伝えておいて。とりあえずそれだけ」

「わかりました。それでは失礼します」

「行ってらっしゃい」


 こうしてミセルにお使いを頼み、私は再び図書室へと戻って行った。

 それから図書室で5冊の本を読み、ある程度の予備知識を入れて、図書室を後にする。

 図書室から戻ると部屋ではミセルが待っていた。

 どうやら夕食の準備が整ったという事だった。なのですぐさま第2食堂へと向かう。

 第2食堂はこの城で働く者達の食堂の1つなのだが、今回こちらで食事をとるのは、ちょっとした声掛けのためである。

 こういうところで話をすると、色々と聞けることがある。

 ちょっとした噂話から、その日その日に起こった城内での話など多岐にわたる。

 そんな話を聞きながら食事を勧めた。

 今回こちらでとる際に、食堂に訪れるものは普段通りにしてほしいと、ミセルに城内に話が回るようにしてもらっている。

 こうでもしないと、私がいるだけで委縮した雰囲気になってしまう。

 ただそれだけだと弱いので、場の雰囲気を万理眼でちょっとだけ弄っておいた。

 こうすれば食堂に来たものは、知らぬ間に緊張が解け、普段通りの姿を見せてくれる。

 そうして色々と収穫のあった夕食を終えて、明日の用意を素早く済ませると、今日は寝ることにしたのだった。



 そして約束の日の朝、私は集合時間の10分前に南通用口へと来ていた。

 この南通用口は、魔導車等の乗り場となっている場所である。

 そこで待っていると、向こうから聞きなれた声が聞こえてきた。


「ネリア、おはようございますわ」

「おぉ、ミランダか、おはよう」

「ミランダ様おはようございます」

「ミセルもおはようですわ。今日は私もご一緒することになりましたわ。案内役としてですけど」

「そうなのか、ふ~ん。わかった。案内よろしく」

「承りましたわ」


 それから私達は再びこの国に訪れた時と同じ魔導車にてミトラスト宅へと向かった。

 ミトラスト宅があるのは王都の端にあるサガワルトの森と言われているところである。

 この森は古代エルフの最後の生存領域とされた場所である。

 この森は私たちの村にある霊脈上にある森である。

 しかし、長年の間にその流れが変わり、今は支流程度の規模となっている。

 それでも普通の土地に比べ魔力濃度は高い。

 その為、今では魔力鍛錬の修練所ともなっている。

 そんな森の主としてミトラストは暮らしているとのことだ。

 そして魔導車は1刻半かけてミトラストの自宅前へと到着する。


「ようこそ最後の古代エルフの自宅へ。ネリアちゃん初めまして、儂がミトラスト・サガワルトじゃ。よろしくのう」


 と70代ごろの老エルフが迎えてくれた。

 私達は魔導車から降り、ミトラストの前まで行く。


「初めまして、ミトラスト殿。私が1番若手のハイエルフで、ネリア・シャルティス・ドリュッセンと申します」


 と挨拶を返す。

 それからミセルとミランダも挨拶を済ませると、ミトラストに招かれて、彼の自宅へと入った。

 中の様子はよくある山のコテージのような感じである。

 ダイニングに通されると、それぞれ席につく。


「それでネリアちゃんは、今回どんな用事で儂に会いに来たのかのう?」

「はい。それは私というハイエルフについてお聞きしたく参った次第です」

「そうか。まずは最初に質問するが、ハイエルフとはどんな存在かな?」


 なるほど。初めにどのぐらいの知識があるのか確かめている訳だ。

 簡単に言えばハイエルフとは、いわば先祖返りというヤツである。

 その為、ハイエルフは古代エルフの特徴が色濃く表れる。

 特に一番大きな特徴は、その身体的能力にある。

 なので、ハイエルフは通常のエルフに比べて身体能力が高い。

 どうして身体能力が高いかというと、それは古代では現代よりもかなり魔力濃度が高かった事に起因するらしい。

 魔力濃度が高いという事は、それだけ体に大きな負担をかけることになる。

 だからこそ、それに耐えうる肉体が必要になるわけだ。

 そんな理由よりハイエルフや古代エルフは、現代エルフより身体能力が高いのだ。


「なるほど、良く調べてきた様じゃな。概ねその理解であっておる。ただ満点とはいかなかったようじゃな」

「満点ではなかった?」

「それは…、何じゃと思う?」


 何やら意味ありげな言い方である。

 特に調べてきたことの中にはなかったような気がするが、何かあっただろうか?

 考えてみるが何も思いつかなかった。

 するとミトラストが何やら両手を使って、何やら示している。

 片方は丸で、もう片方を棒にして何やら、入れ差し……


「あっ」


 まさかあれの事についてか!

 なるほど、そういう事であったか。

 どうやらミトラストは性欲について言いたかったらしい。

 するとここでミランダがため息交じりでとあることを教えてくれた。


「ネリアも分かったと思いますが、身体的能力の高さともう一つ大きな違いが、性欲なのですわ。それとなぜ我が国がハイエルフや古代エルフについて隠しているかというと…。ミトラスト様、今まで何人の御愛人がいらっしゃったのですか?」

「おぉ!そうじゃな、数え切れのう。1000人ぐらいから先は面倒になって数えていなかったからのう」


 とんでもない数だった。

 なるほど。だからあそこまで異常だったのか。

 それにしても私はいいとして、どうしてシャルティス村のエルフたちも同じだったのだろうか。

 それに関して聞いてみると簡単な答えが返ってきた。


「そりゃ、霊脈の上にあるからじゃろうな。あそこはまるで古代の頃に近しいほどであったから、エルフの奥底に眠る生存本能が刺激されるからじゃろう」


 という事はシャルティス村や古代エルフにハイエルフの性欲が高かったのは、今より環境が厳しかった為に、生存本能を高めることにより種を残すためだった時の名残なのだろう。

 確かにこれはエルフとしては、あまり広まってほしくはない事柄だろう。


「これでネリアも分かっていただけましたか?」

「あぁ、大体は…、何となく?」

「そうですわね…」


 なんか期待していた事とは大きく違っていた。

 それにしてもミランダが言っていた、会ってみたら分かるとは何だったのだろうか?

 今のところ、それらしき感じは無いがそのうち分かるのだろうか?

 そんな事を思っていると、一旦話が終わったのを見計らってミトラストが私のとなりに座る。

 何だろうかと思って、ミトラストの方を向くと顔を寄せてこう言ってきた。


「のう、ネリアちゃん」

「何ですか?」

「このあと時間あるかのう?」

「……」


 あ~ぁ、そういうことかぁ。

 なるほど、こういう事だったのか。

 確かに会えば分かるとはそうだった。

 なんかちょっと不愉快な気持ちになったので、威圧に上位者スキルを併用して睨みつける。

 そうすれば、苦笑いしながらすごすごと元の席に戻る。

 その様子をなんだか悟った様な顔で、ミランダが見ていた。

 やはりこれが、ミランダの言っていた事らしい。

 そんなこんな事がありつつ、ミトラストとの会合は終了となった。

 そして今日を振り返ると、あまり知りたくもないことを知った、そんな1日だった。

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