第39話 マルテリィーア王国に着いて
休みの関係で1日ずれました。
マルテリィーア王国。
国民の約9割がエルフによって構成されたエルフの国。
国民がエルフであるが為に、その歴史も長く5000年もの歴史を持つ。
そんな国の王都エルフンガンドの王城の1室に私、ネリア・シャルティス・ドリュッセンは居た。
ここは王城の一番高い所にある貴賓室、天蓋の間という部屋である。
何でもほんの一部の人しか入れない部屋らしい。
他国はといえ伯爵家の令嬢程度の私に対して、必要以上の待遇で迎えられているのはどうしても腑に落ちない。
確かに上位者スキルによって、上位の位の人であるようになってしまうのだが、それにしても扱いが良すぎる。
何かウラでもあるのかと思ってしまったが、様子をみる限り、それは無さそうだ。
そんな感じで部屋に通されてから30分ぐらい経った頃に誰かがやって来た。
「ネリア様。今よろしいでしょうか?」
「どうぞ」
そういうと部屋の中にお揃いの白い軽甲冑を着た5人のエルフ達が入ってきた。
そのまま5人は私の座っている前まで来ると、跪いて首を垂れる。
そして5人のうち1人が前に進み出る。
「お初にお目にかかります。私はマルテリィーア王国近衛隊隊長のヨセフ・ミストルティア・パーシーと申します。今後ともよろしくお願いいたします」
「どうも。それでどのようなご用件で?」
「はっ、ネリア様の護衛を言いつかっておりますゆえに、ご挨拶をと思いましてやって来た次第でございます。それと今後のご予定に関してのご説明しようかと思っております」
「わかった」
それから残りの4人からも挨拶をもらい、ついで今後の予定について説明を受けた。
国王との謁見の後は、少しの自由時間があるそうだ。
そのあとは私の歓迎パーティーを開くそうだ。
これが1日目で、そのあとの予定は私の方で決めてよいとのことだ。
「わかりました。あと確か、この国にいらっしゃるんですよね?古代エルフの方が」
「はい。ミトラスト様ですね」
「その方と会うことはできますか?」
「ネリア様がお望みとあらば、私たちの方で調整させていただきます」
「わかりました。お話はこれでお終いで?」
「そうですね。お伝えしなければならないことは以上でございます」
伝えるべきことを伝え終わると、近衛隊の5人は部屋を後にしていった。
それから10分ほどで謁見の準備が出来たとかで、再び先ほどの5人が迎えに来た。
「準備が整いましたので謁見の間へとご案内いたします」
と四方を近衛隊に守られ、謁見の間の前へと到着した。
しかし、目の前にある扉に違和感を覚える。
普通謁見の間は、対外的に国の力を見せつけるためにもかなり豪華な造りとなっている。
もちろん入る扉も豪華である。
しかし目の前の扉は良い材質の扉ではあるがそれだけで、特に凝った造りはしていない。
これでは裏方にあるような造りではないか。
これはどういう事だと、隊長であるヨセフを見つめるも、さぁどうぞと扉を開けて、中に入るように促してくる。
なんだか嫌な予感はするが、ここで立ち止まっていても仕方がない。
彼に導かれるまま、中へと入る。
そこには広場にずらーっと並んだ人達がいた。
「あ~ぁ、そういう事」
なるほど、私が謁見するのではなく、私がされる側なのか。
これはなんて言えばよいか分からない。
どうしよ、これ。まぁ、適当に座っていれば何とかなるだろう。
何もどうしろとか、こうしろとか言われていないのだから。
適当に相槌でもしていればいいのだろう。
「さぁ、どうぞこちらにお掛けくださいませ。後の進捗は私達にお任せください」
ヨセフがそう言って、中央の豪華な座席へと私を案内する。
言われたとおりに、本来なら王様が座るはずの玉座へと座る。
玉座は絶妙な柔らかさで、私を包み込む。
そして私が座るのを確認すると、ヨセフは高らかに話始める。
「これより謁見の儀を開始します。本日は隣国ミドルテッシモ王国騎士爵のネリア・シャルティス・ドリュッセン様がおいである!一同、控えよ!」
一斉に皆が頭を下げる。
それから私の事が関わった迷宮の事について説明される。
それが終わると、この謁見の間に居る人間の紹介となる。
はじめはこの国の国王である、ノルマン・マルテリィーア・シャンセンから始まり、王妃、そして大臣達と紹介が進んでいく。
紹介が終わると、この場の代表として国王ノルマンが前に出て、挨拶を読み上げる。
「この度は我が国、マルテリィーア王国へお越しくださいましてありがとうございます。これより1週間ほどではありますが、我が国でおくつろぎくださいませ」
国王の挨拶が終わると、再びヨセフが前に進み出て、閉式の言葉を言う。
これにて謁見は終了した。
結局、私は一言も発することもなく終了した。
謁見が終了すると、私は再び天蓋の間へと戻ってきた。
「ネリア様、謁見お疲れ様でした」
「いや。特に疲れたという事は無いけどね。まぁ、少し退屈ではあったけど」
「そうですね。ただ座って1刻ほど何もしないのは退屈でしょう。とにかくお疲れ様でした。これから昼食をお持ちいたしますのでお待ちください」
そういえば既に昼は半ばを過ぎていた。
すっかり忘れていた。
ヨセフは私との会話を終えると、退室していった。
それからしばらくすると昼食が運ばれてきた。
「お初にお目にかかります。わたくし、宮廷料理長のジュラル・ベークタルでございます。これから短い時間ではありますが、ネリア様のご料理の担当をいたします。よろしくお願いいたします」
「どうも。料理、楽しみにしてますから」
「ありがとうございます。それでは本日の昼食は、今までの長旅などがありましたでしょうから、軽めの物をご用意いたしております」
そう言って配膳係が私の前に料理を並べる。
「本日の昼食は、取れたての夏野菜サラダにベルガース芋のスープと3種類のパンでございます」
まず最初に焼き立てのパンの香ばしい匂いが漂ってくる。
せっかくなので最初にパンを手に取り、一口頬張る。
その瞬間、パンの柔らかな甘みが口の中に広がり、そのあとにしっかりとした小麦の味がやって来る。
次にベルガース芋のスープを口に入れる。
ベルガース芋は前世のカボチャと似たような味がするものだ。
パンも甘みがあるが、こちらはパンの甘みを消さないように、絶妙な味付けがされている。
これは中々美味である。
そして最後の一品であるサラダに手を付ける。
サラダには特製のドレッシングがかけられている。
野菜は瑞々しく、そして表面はしっかりとした艶が出ている。
フォークで刺して一口だべる。
クリーミーな特製ドレッシングが、野菜本来の味にいいアクセントになっている。
「ジュラル。大変美味しいです」
「ありがとうございます」
それから私は、しっかりと味わいながら完食したのだった。
昼食を終えて、今日の最後のイベントである歓迎パーティーまでは準備などをする時間を差し引くと、この後の自由時間は4刻ほどである。
城下町などを散策してもよいが、まだ日にちはあるので後日、時間がもっとある時にするべきだろう。
という事で、いつになるかは分からないが、最後の古代エルフであるミトラストに会うまでに、少しばかり事前情報を入手しておきたい。
なので、机に置いてある呼び鈴を鳴らす。
呼び鈴はチリンと軽やかな音を立てる。
すると扉の前で警護している近衛隊の1人が、扉を開けて中に入ってくる。
「どのようなご用件でしょうか?」
「少し調べ物をしたいので、図書室なんかに案内してくれないか?」
「わかりました。ご案内いたします」
そうして連れて来られたのは、他の部屋と違って重厚な扉がある部屋だった。
「図書室はこちらでございます」
「ありがとう。それにしてはかなり厳重な扉だね」
「はい。大切な書物を保管しておりますので、災害や敵からの攻撃より書物を防ぐために、このような厳重な造りの扉となっております」
「そうなのか。ありがとう」
「いえ」
そして近衛は、扉の取っ手部分に触れると、何やら言葉をつぶやいている。
すると扉が自動的に開き始める。
今つぶやいていたのは、この扉を開けるための合言葉だったようだ。
「これより先は、担当の司書が居りますので、何かございましたらお声をおかけください」
「ん」
という訳で中に入る。ずらーっと並んだ書庫に圧倒されながら、カウンターと思われる場所へと近づく。
カウンターの中には、1人の女性が座っている。
私が近づいてきた音に反応してこちらに顔を向けてきた。
「あら、ようこそおいで下さいましたネリア様。私はこの王城の図書室の司書をやっておりますフランシスと申します。お見知りおきを」
「あぁ、既に名前は知っているんだね。私がネリア・シャルティス・ドリュッセンだ。よろしく頼む」
「それで、どのような物をお探しで?」
「ハイエルフと古代エルフについて、簡単にまとめられているものを数冊ほど頼む」
「わかりました。すぐにお持ちいたしますので、あちらの方でお持ちください」
私は言われたとおりに、読書机へと向かってそこでフランシスさんが戻ってくるまで待つ。
それから10分ほどで、数冊の本を持ってきてくれた。
「こちらがご指定の物でございます」
手渡されたのは3冊の本である。
1冊は、今までのエルフの歴史をスマートにまとめたもの。まとめたといってもエルフの歴史であるからかなりの分厚さである。
次は古代エルフの暮らしについての本だった。
そして最後の本はあまりにも意外なものだった。
「なにこれ?」
本の題名が“私というエルフについて”とある。
そして著者のところにミトラストと書かれている。
なんとなくオチが見えているが、取り敢えず確認だけはしてみる。
ざーっと斜め読みしてみると、やっぱり自伝であった。
それも最初は好きなものとか嫌いなものとか、自己紹介がやたらと小難しい文言で書かれている。
始めの数ページ読んだところで止めた。
多分だが、この本を読むよりも直接会った方が早い気がする。
という訳で自伝を読むのは止め、他の2冊を読むことにした。
やはり、本国のギルド支部で読んだ物とは大違いであった。
どうして他国に対してこうまで厳しい情報統制をしているのかが、今回の事で少し分かってきた。
古代エルフの生活は今の価値観に合わせてみると、かなりの爛れたものに見えてしまう。
多分このような事があり、自分達エルフの印象が間違って伝わってしまわない様にしているのだろう。
とはいってもこれは私の憶測でしかないため、会って確かめるべきだろう。
それから暫く読み続けていると、先程から側に控えていたミセルが声を掛けてきた。
「ネリア様、そろそろお時間です」
「ん?あぁ、そっか。分かった」
それからフランシスさんに本の片付けを頼んで、部屋へと戻る。
部屋へと戻れば直ぐに化粧や衣服の乱れなどを直しにかかる。
そして全ての身支度を整え、本日最後の催しである歓迎パーティーへと臨んだのだった。




