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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第2章 学生生活と冒険者生活
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第27話 新たなる人材強制勧誘

 授与式を終え、夜には夕食会が開かれることになった。

 それまでの時間までは自由時間となった。

 冒険者達は滅多に訪れることのない王城を堪能するために、案内の者を付けてもらい王城を見て回りに行った。

 私の方には何人かのメイドが付けられた。


「それではネリア様。この部屋でお寛ぎ下さい」


 そう言って案内されたのは、最初に通された部屋とはまた別の部屋であった。

 内装が迎賓用に比べて、あからさまに良いものになっている。

 この感じからするにどうやら案内された部屋は、一般の迎賓用では無く、貴賓室の方に通されたようだ。

 念のために恐る恐る一番私の近くにいたメイドに聞いてみる。


「あのぅ、この部屋って普通の迎賓用の部屋ではありませんよね?」

「それはもちろんでございます。ネリア様は正式にミドルテッシモ王家ジュルダース家の騎士になられましたので、貴賓室にお通しさせていただくのは当たり前でございます」

「そうか、ありがとう」


 今更、部屋を変えてくれといっても困るだけであろうから、素直に部屋に入る。

 やはりなんか落ち着かない。

 こんな贅を凝らした部屋というモノは、見ていると余計なことを考えてしまう。

 とりあえず、くだらない事を考えている場合ではない。

 今すべきことを始めなくては。

 そんなとき、外から扉をノック音がする。


「ネリア様、ミセルです。今は大丈夫でしょうか?」

「あぁ」

「失礼します」


 後から来るように言っておいたのだが、今到着したらしい。


「ところでここまで来る間には何もなかったか?」

「はい。何もありませんでした。ただ、こちらを観察するような気配はあったので、こちらが決定的に動き出さなければ、相手も動く事は無いでしょう」

「そうか、分かった。これから私はちょっと出かけてくる。あとのことはよろしく。さほど時間はかからないと思うから」

「わかりました」


 こうして私は1人、目的のために王城内を散策することにした。

 出てすぐに扉の前で警護していたメイドに一声かけておく。


「済まないが、少し出かけてくる」

「わかりました。それでは…」


 ついてこようとしているメイドを止める。


「私は1人で散策がしたいのだ。なので控えてくるか?」

「ですが、そレでは…」


 やはりこれ以上何を言っても無駄なようなので、上位者スキルで掌握してついてこさせないようにする。


「いいかい。私は1人で散策をするので、ついてこなくてもいい。これは命令だ。分ったか?」

「はい、わかりました」


 同行されるのを阻止した後、さっそく行動を開始した。

 最初に行くところは、王城の食糧保管庫である。

 なぜ食糧保管庫かというと、ここで昨日のうちに書状を出した相手に会うことになっているからである。

 食糧保管庫は、この時間なら夕食会のためにカギが開かれており、倉庫系に施されている警報魔術が切られているので出入りが自由だからだ。

 それに暗室とする為に、明かりの類が少なく薄暗いために、隠蔽スキルの効果が高くなることもある。

 という訳で、私は食糧保管庫の近くもできていた。

 いったん立ち止まり、万理眼で周りの様子を確認する。

 確認するついでに警戒スキルを使っておく。

 これで余程のことがない限り、周囲警戒には問題ないだろう。

 という事で隠蔽スキルに偽装スキルを使い、食糧保管庫へと侵入を果たした。


「よし、あとは待つだけか。さて万理眼で確認した通りなら絶対に……、おっと、もういらっしゃったか」


 薄暗い部屋に1人の男が現れた。

 王城で見かける執事服に身を包んだ、ぱっと見印象に残りにくい顔をしている。

 例えば街中で見かけたとしても、気づかれないほどの普通顔である。

 ここまで印象に残りにくいとは、さすが私が欲しいと思っていた人材だ。


「これは、これは、誰かと思いましたら、ネリア殿ではありませんか?して、この私にどのようなご用件ですかな?」

「わかっているのではないのか?わざわざ、あの人の名前を書いておいたのだから」

「はて、どの人の名前でしょうか?私にはわかりかねますね」


 あくまでも最初は、とぼけるつもりか。

 それでもあんな悪戯みたいな文章、普通ならば無視するだろうに。

 それても一応念のためとかでも言うつもりだろうか。


「この世界の創造主の名前だよ。あなたならわかっているだろう?」


 ここで、抑え込んでいた上位者スキルを解放する。

 すると今までの抑圧の鬱憤を晴らすように、スキルが一気に攻略にかかり始める。


「この力は何処かで…、くぅ、それにこれは、あの方の力も…、という事は本当に…」


 私の力の元を知っているようだが、あの方は多分だが、この世界の創造主だろう。

 ここで私は一度すべてのスキルを強制的に切断する。


「はぁ、はぁ、どういう事ですかな?」

「いや……、ここで聞いておきたい事が出来た。私の力の元を知っているのか?」

「あなたの力ですか。残念ながらすべてという訳ではありませんが」

「いい。それだけで」

「それにしてもいきなりですね、力ずくでなくてもいいのですか?」

「ああ、もう大丈夫だ」


 不思議そうにしているが、聞きたいことがあるのに、強引というのも気が引ける。

 それに万理眼で必要なものは、すでに私の手の内にある。

 これを使えば嫌でも私の下につくしかなくなるのだし。


「やけに素直に引きますね。あなたはそういう方ではないでしょうに」

「そうだな。よく調べているな。確かに私は必要なものがあるならば、確実に手に入れようとする人間だ。わかるだろう」


 そう言って、私は1枚の紙を取り出す。

 あの人もかなりのお節介焼きである。こんな代物普通は用意できないのだが。


「それは…、もしかして」

「想像の通り、あなたが交わした神代契約書の原本」

「なっ!なぜそれを」」

「あの人のお節介という感じかな。私に思ところがあるらしいから」

「そういう事か、分かった。応じよう」


 以外にあっさりと契約すると言ってきたことに驚く。

 だいぶ抵抗があるかと思ったのだが。

 顔に出ていたのだろう。今までの印象に名凝らない雰囲気から一転、苦笑の表情を表す。

 どうやら、こちらの方が彼の生来のモノなのだろう。


「どうしてという顔だが、理由としては簡単だ。これを断ると非常に厄介なことになるのでね。そのうちあなたの力についても話す時が来るでしょう。でもまだ、その力に関しては言えないので、そこに関しては了承してもらうしかないですが」

「いや、大丈夫だ。今のところ、そこまで知りたいとは思っていない。ただかなり厄介であるという事は分かっている。それでは、この契約書に了承のサインが欲しい」


 そう言って、彼に契約書を渡す。

 すでに契約主のところは私の名前に変えてあるので、あとは彼が契約のサインをするだけである。

 彼は書類を受け取ると、サインをする。


「これでいいだろう」


 書類を受け取り、再度確認する。


「契約成立だね。一応名前は知っていると思うけど、自己紹介だけはしておこう。私はシャルティス村出身、ミドルテッシモ王家ジュルダース家騎士、ネリア・シャルティス・ドリュッセンだ。これからよろしく頼むよ」

「わかりました。しれでは私も同じく自己紹介を、元魔王軍特別別時空攻略部隊情報高官、ゼルファスト。これからあなた様に付き従う事をお許しください」

「あぁ、よしな」


 これで、この国の情報部の部隊長であるゼルファストを手に入れた。

 これで今日すべきことは終えた。

 まずゼルファストが先に仕事へと戻っていった。

 そのあと再び、偽装や隠蔽などを使い、元の部屋へと戻る。


「どうでしたか?」

「上手くいったよ。ありがとミセル」

「お役に立てたのならばうれしいです」

「これからもよろしくね。それより、夕食会の方の準備はどうかな?」

「もう整えてあります。試着なさいますか?」

「しておこう。直前にというのは、まずいからね」


 こうして夕食会までに、そこで着ていくドレスを試着して、いろいろ手直しをしながら過ごした。

 そして、ついに夕食会の始まる時間となった。


「ネリア様。そろそろお時間でございます」

「わかった。それじゃ行こうか、ミセル」

「はい、ネリア様」


 会場の扉の前に到着した。


「それでは陛下の紹介が終わりましたら、会場入りしてください」

「わかりました」


 しばらくすると陛下が功績者の名前を挙げていく。

 こうしてついに私の番が回ってきた。


「それでは皆々様、長らくお待たせしました。次は今回の事件の立役者にして、王家ジュルダース家騎士となったネリア・シャルティス・ドリュッセンである!」


 その言葉とともに会場の中へと入る。

 そこは着飾った人々によって輝いて見えた。

 そんな会場を陛下のそばまで歩く。

 あらゆる感情が渦巻いている。

 こんな場所だからこそ分かることがある。

 この中に私に対して何かしろの暗い感情を持つものが。

 私はすぐにマーカーだけを設置しておく。

 これで問題なし。何かあればすぐにわかる。

 さすがに今日この場でという事はあり得ないだろうから、あるとしたら別の機会だろう。

 とりあえず今は、この夕食会を楽しむとしよう。

 いつもなら食べることの出来ない贅を凝らした食事を楽しむ。

 その間、いろいろな貴族が私の側にやってくる。

 その中には息子を紹介してくるものもいる。

 やはり王家の騎士というのは、たとえ貴族の爵位としては、ちゃんとしたものではないが、それでも王家との繋がり持ちたいものには宝石のように見えるのだろう。

 そのような話を適当に聞き流し、出来るだけ愛想がよく見えるような笑顔を張り付けておく。

 ただ、だんだん鬱陶しくなってきた。

 そろそろ、このやり取りにもめんどくさくなってきた。

 ちょうどそんな時にミセルがやってくる。


「用事は済んだか?」

「はい。これで色々とお役に立てます」

「そうか、それはよかった」

「はい」


 ミセルには途中で会場を抜け出して、王城の厨房の方へといってもらっていた。

 厨房の利用許可を取ってもらっていたのだ。

 厨房が利用できることは、これが意外と馬鹿にならない。

 特に食というモノは生きていくのには最重要なことである以上、食を作り出す場所を抑えておくことは、いろいろとやりやすくなる。

 という事で頼んでおいたのだが、それ以外にもミセルは給仕に関することを聞いてきたようだ。

 これはこれで私の生活にも関わってくることなので、1つ喜ばしいことが増えたという事だ。

 という感じで時間は過ぎていき、ついに夕食会が終わったのだった。

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