第22話 迫りくる厄災の足音
あけましておめでとうございます。
遅くなりましたが第22話はじめます。
「どうなっている?くそ!」
しばらくして揺れが収まり、あたりは騒然としている。
「各班、すぐさま最寄りの安全地帯に移動しろ!護衛はすぐさま現状を確認するんだ!」
ガイルが迷宮全体に響き渡るような大声で指示を出す。
その声を聴いて護衛についている冒険者たちは、それぞれ担当する班を率いて最寄りの安全地帯へと退避する。
私達もガイルの先導により、皆からは少し離れた位置にある迷宮の中心に近い方の安全地帯へと避難する。
「よし、皆はそこで少し休んでいなさい。私は、現状を確認してくる。だから私が戻るまで勝手な行動はとらないように」
そう言ってガイルは、1人安全地帯から出て行った。
残された私達は、ここまで走ってきて上がった息を整える。
「いったい何が起こっているのですの?」
「わからない。ただ、……なんというか、嫌な予感はする」
ミランダと話し合っていると、ガイルが戻ってきた。
「今回は、ここで行事を中止して、迷宮から脱出する。各自出る準備を始めてくれ」
という事で、迷宮から脱出する事となった。
装備を確認しながら私は、原因は何か万理眼で探ってみる。
すると、ここの迷宮の中心部にあり得ないほどの魔力が、渦巻いているの様子が見える。
どうやら迷宮核に、何かしらかあったようだ。
私は、そのことをガイルに伝える。
「ガイルさん、ちょっといいですか?」
「なんだ、ネリア?準備は出来たのか?」
「えぇ、撤退準備は完了しています。少し気になることが分かりましたので、お伝えしておこうかと」
「何だ、手短にお願いするぞ」
「わかりました。それでは、迷宮核付近にかなりの魔力が溜まっています」
「本当か!」
「はい」
ガイルは、少しばかり悩んでから答えを出す。
「よし、分かった。これが終わったら、すぐさま本部に連絡を出して緊急依頼を出す。とりあえずは急いで脱出するぞ」
私達は、急いで出口を目指す。
他の人達が見当たらないので、どうやら私達が最後のようだ。
確認の為、後ろをチラリと振り返るが、やはり私達の後ろには誰もいない。
そして、私は出口を目指しながら、ついでに万理眼で核の付近を詳しく視ようとした時だ。
いきなり、ズキっと頭に鋭い痛みが走る。
つい、その痛みで走るのを中断してしまった。
「どうした。大丈夫か?」
異変に気づいたガイルが振り向き、私のもとに駆け寄ってくる。
「いえ、ちょっと頭痛があっただけですから」
「そうか。無理せず何かあったら言うんだぞ」
「はい」
小さく深呼吸をして、自分を落ち着かせる。
「大丈夫です。さぁ、行きましょうか」
「そうか、それじゃ…」
そうして再び、出口へと向かおうとしたとき、いきなり前方の通路が突然、周りからせり出したきた土によって、道がふさがれてしまった。
「なんだ!?どうなっている!」
まるで私たちが、外に出ることを阻んでいるようだ。
ガイルは、ふさがれ壁となった土を手で叩いたりして、様子を探っているが、その顔を見る限り状況はよろしくないようだ。
「駄目だな。完全に迷宮の壁となっているな。これじゃ、壊してどうこうは出来そうにないな。ちっぇ!完全にやられた!」
それから、ため息をついて私の方を見やる。
「ネリア。今、迷宮核の状況は分かるのか?」
「大丈夫です」
「そうか、出来るなら詳しい状況が知りたい、やってくれるか?」
「わかりました、ちょっとやってみます」
そう言ってから私は万理眼で、私が出来る限りの情報を視る。
「そうですね。周りにはかなりの魔物がいます」
「種類や数は分かるか?」
「えーっと、種類はゴブリンやらスライムなどの低級から、支配級のオーガロードまでいます。数としては、おおよそ1万ほど」
「1万だと!?という事は、完全に何者かの手によって、この迷宮は完全に私たちの知らないものになってしまったか。はぁ、これはまいった事になったな。首謀者を見つけて何とかしたいが、この状況では、かなりきついな」
ガイルはこれでも、支部長になる前はSランクの冒険者であった。
しかし、そのガイルは主だった装備は、持ってきていない。
さらに、私達という護衛対象というお荷物を抱えている状況。
そんな状況で、現状を打開できるだけの策は無かった。
私は引き続き、迷宮核付近を視ていた。
今回の事態は、完全に人為的に引き起こされている。
それも相手は、かなりヤバそうな相手である。
視ているとわかるが、どうやらこの近くにあった霊脈から強引に、この迷宮核のところまで魔力を持ってきているのが分かる。
普通、霊脈に干渉するにはかなりの時間と労力が必要になってくる。
1日やそこらで、できるようなものではない。
通常は、数年単位でやるようなことである。
しかし今回の首謀者は、それをたったの数時間で、やり遂げたようだ。
人間では、到底不可能な事である。
という事で私は、その首謀者を見つけることにする。
これまでに分かったことから、多分相手は魔物か人間種以外の何かである。
そうしてサーっと全体を見渡して、他とは違うモノを見つける。
そして、見つけた相手を詳しく知ろうとした時、また再び先ほどの頭痛に見舞われる。
「くぅッ」
「おい、大丈夫か?本当に無理だけはするなよ」
「はい。ただ、相手は多分ですけど、インベーダーの可能性が1番高いかと。それもかなり厄介な相手です。この都市の近くにある霊脈から強引にこの迷宮まで魔力を通してきてます」
「本当なのか、それは?」
「えぇ。それも数時間程度で、それを行っています。正直言って最悪です」
「それは、冗談抜きでの話だよな?」
「はい」
私の言葉に、その場の雰囲気は最悪になる。
「よし、とりあえず私は外との連絡を取るために…」
「おっと、それはご勘弁願いたいですねぇ」
そして、沈黙した場の状況を変えるためにガイルが喋り始めたとき、突然聞いたこともない声によって遮られる。
その声に全員が振り向く。
そして声のした方を見ると、そこには全身をすっぽりと白い布を被った、それも白い仮面まで被った男らしき人物がいた。
すぐさま、ガイルが私達を守るように全身白ずくめの人物の前へと躍り出る。
「何者だ、貴様!」
「う~ん、それは、答えないといけないですかねぇ?本当なら、答えるべきなのでしょうが、残念ながら名が無いのですよ、これが。いやはや、申し訳ないですがね」
「ふざけているのか!」
「いや!とんでもない!名が無いのは仕方がありません。何故ならば、主様に名付けてもらえないのでね」
そして謎の人物は私の方を見るように、こちらに顔を向ける。
すると先ほどから襲われている頭痛に見舞われる。
あまりの痛みに声もできずに、蹲ることしかできなかった。
そして私は、何か得体のしれないモノに体の支配を奪われ始める。
さらに意識の混濁まで始まってきてしまった。
どうにか意識を保とうとするが、痛みのせいでうまくできない。
そんな中、こちらを見やりながら、少しの間黙っていた謎の人物は、突然驚いたしぐさをしながら、何かを話し始めた。
それを最後に、私の意識は闇に落ちる。
それは突然だった。
私が、今の状況に不安に駆られたネリア達のグループの雰囲気を変えるべく話し始めた時であった。
突然全身白ずくめの人物が現れたのだ。
私は、すぐさまネリア達のグループを守れるように、白ずくめの人物との間に躍り出る。
「何者だ、貴様!」
「う~ん、それは、答えないといけないですかねぇ?本当なら、答えるべきなのでしょうが、残念ながら名が無いのですよ、これが。いやはや、申し訳ないですがね」
「ふざけているのか!」
「いや!とんでもない!名が無いのは仕方がありません。何故ならば、主様に名付けてもらえないのでね」
とりあえず現れた人物を特定するために質問を投げかけるが、返ってきた答えは、あまり要領を得られない答えであった。
そして白づくめのそいつは、私の後ろの方に顔をやる。
すると、後方で誰かが倒れるような音がする。
その音がした方を見やると、ネリアが苦しそうな顔で蹲っているところだった。
すぐさま、周りの生徒たちがネリアに声をかけるが、相変わらず辛そうな顔のままで、問いかけられた言葉に対して反応もできないようである。
前にはどうやら、今回の状態を引き起こしたとみられる人物がいる上に、先ほどから不調を示していたネリアが、倒れる事態にもなってしまった。
どう見積もっても最悪な状況である。
ただ幸いなのは、奴がまだこちら側に手を出そうとは、していないという事であろう。
そんな奴は、先ほどから倒れたネリアの事を見つめているみたいだったが、突然驚いたようなしぐさをして喋り始めた。
「おお!これはこれは、また珍しい者がおりますね。まさか、こんなところに主の堕とし子がいるなんてね」
「何を言っている?」
「何をって、それはそこで蹲っている彼女の事ですよ」
「それが何だというんだ!」
「それは…、う~ん、お答えできませね。どうしても知りたければ力ずくで、ね」
「ちぇ」
奴は、どうあっても答える気は無いようだ。
ここはどうするべきか考えるが、どうしても良い案が浮かばない。
最低限、奴の目的だけでも聞き出さなければならない。
「それよりも、貴様はいったいここで何をやっている?」
「何かって、調査ですよ、調査。少しばかり、ここの魔物生成能力を使って、魔物達をあなた方に、けしかけようという訳です」
「やはり、スタンピードをさせる気か!」
「えぇ、そうなんですよ。という事で、あなた方に逃げられると困るのですよね。正確な調査が、ちゃんと出来なくなりますんで、すぐさまこの世から消えてもらいたいのですがね」
「くぅ!」
「まぁ、悔しそうにされても結果は変わりませんよ。もちろん、私に勝つことができないという結果がね!」
ここで奴は喋り終わると同時に、勢い良く私達に向かって襲い掛かってきた。
私は、とっさに防御の術式を発動させながら、受けの構えを取る。
しかし、それでも相手の突撃を受けきれずに壁の方まで吹き飛ばされる。
「がはぁ!?」
ぶつかった衝撃で、体の中の空気が口から吐き出させる。
幸い血が出てきていないので、内臓の方は大丈夫のようだ。
しかし、衝撃のせいでうまく体が動かない。
「うん、やっぱり弱いですね。あなたは最後にしときましょうか。これからあなたが守るべき命が、散るさまを最高の席からお楽しみください」
そう言って動けない私をよそに、ネリア達の方へと歩みを進め始めようとした時、突然何者かが奴に跳びかかったのだ。
誤字脱字報告ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




