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勇者召喚が失敗らしいので異世界に転生します  作者: shibatura
第2章 学生生活と冒険者生活
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第23話 暴走する私の知らない私

 跳びかかった何者かによって、奴は1歩後ろによろける。

 何とか動けるまで回復した私は、その跳びかかったものを見やる。


「ネリア、なぜ…?」


 何とそこには、今まで倒れていたネリアであった。

 状況的に数分で意識を取り戻すはずはなかったのに。

 ただ、彼女の実力が7歳という年齢にしては、かなり高いとはいえ、こいつにかなうものではない。

 このままでは彼女が殺されてしまう。

 まだ、ぎこちない動きしかできない状況だが、なんとしてもネリアを離れさせなければならない。

 落ちていた得物を拾い、ネリアに腰付近に張り付かれ、何とか引きはがそうとしているところに向かって歩き始めた。


「く、しぶといですね。いい加減に離れなさい!まさか、主の力を注いでいるのに、こちら側に堕ちないだと!まさかこの私が見誤るとは!」


 ネリアは一言もしゃべらず、ただ奴にしがみついたままである。

 ただ、このままネリアに張り付かれたままだと、こちらも奴に対して手が出しにくい。

 なんとしても引き剥がさなければならない。

 慎重に近づこうとしたとき、何やら違和感を感じた。

 先ほどの奴からの攻撃を受けた時の後遺症ではなく、また別の何かである。

 感覚からいえば何かを抜き取られているような感じだ。

 そんな違和感を感じつつ、じりじりと合間を詰めていく。


「こ、この!いい加減にしなさい。どのみちあなた方は、もう終わりなのですよ!」


 ついに引き剥がし出来ないことに業を煮やして、直接的な行動に出始めた。

 奴の手に人間ではありえないほどの魔力が集まる。


「やばい!」


 隙を探っている状況ではなくなった。

 急いで駆け出そうとしたとき、いきなり脱力感が襲い掛かってきた。


「何ですかこれは!?」


 突然の脱力感のせいで私は、足を取られ転んでしまう。

 何とか手をつこうとするが、それも失敗してしまう。

 全く力が入らないのだ。

 まさかこんな時にと思いながら、先ほど驚きの声を上げた奴とネリアの方を見る。

 するとそこには、いつの間にか奴は私と同じように地面に倒れこんでいた。

 ネリアはと、その姿を探すと奴の前に立ち尽くしていた。


「ネリア!大丈夫なのか?」


 依然と俯き立ち尽くすネリアに声をかけるが、返答はない。


「くぅ、何なんですかあなたは!いったいどういう事なのですか!?なぜ主の因子を吹き込まれながら、まだ正の側にいるのですか!あり得ません、あり得ませんよ!」


 全くどういう状況なのかは理解できないが、何やら最悪な状況だけはどうにかできたようだ。

 といってもネリアは、未だに俯いたままで動こうとはしない。

 そんな状況が十数秒は経っただろうか、今まで動こうとしなかったネリアが、腰に携えているナイフを鞘から抜き出し、倒れて何やら喚いている奴にゆっくりと1歩ずつ近づいていく。


「な、なにをするつもりですか!まさか私を!くそ!なんで動けないですか、力がすべて無くなるなんて!」


 どうにも奴が動けなくなったのは、力が抜けたからだったのか。

 となると、私の方も同じ状況になっているのは、もしかしたらこの現象は、ネリアのスキルのせいなのかもしれない。

 そんなことを考えつつも、未だに動けずにいる私は、ただこうして見守る事しかできない。

 ついにネリアは、奴の目の前に立つ。


「やめろ、やめるんだ!こんな事をしたところで、スタンピードは止まらないんですよ!いいのですか?このままだと……」


 そこまで言ったところで、ついにネリアは手に持ったナイフを両手持ちし、高く振り上げる。


「死ね」


 そう小さく呟き、手に持ったナイフを奴めがけて振り下ろした。


「がぁ、くぅ、こんなことで…、奪われ…る、なん…て……」


 そして白づくめの奴は、ネリアに刺されたとたん、奴の厚みが無くなってゆく

 刺され続けて30秒ほどでカランと音を立て仮面が落ちる。

 どうやら最悪の事は終わったようだ。

 ただ、いまだに体に力が入らず、それどころか先ほどにもまして力が抜けてくる。


「ね、ネリア!正気に戻れ!くぅぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 何とか最後の力で、ネリアに呼び掛けるも反応はない。

 ついにここで、私の意識は途絶えたのだ。



 未だに私は現状を理解できていない。

 ひどい頭痛に見舞われたこと思いきや、気づいたときには、なぜか一切の体の自由がなかった。

 それどころか、私の体は誰かによって操られてしまっている。

 今は、どういう状況でこうなったのかは分からないが、白づくめの男の腰に張り付いているところである。

 とにかく、いち早く体の自由を取り戻さなければならない。

 そのためには、どうして体を乗っ取られたのかを、調べなければならない。

 という事で、万理眼を使って自分を調べようとしたとき違和感に襲われる。

 どうにも、いつもよりもスキルを使いにくく感じるのだ。

 誰かに邪魔をされているという感じではなく、1人しか使えない物を強引に2人で押し合いへし合いして、強引に使っているような感じだ。

 そんな感じなので、いつもより性能が落ちてしまっているようだが、今は使えることだけでも、ありがたい。

 早速視てみるが、誰かに操られている様子はない。

 どういうことだと思いながら、今度は体の状態を視てみる。

 それでも一切の異常はみられない。


『どういうことだ?一切の異常も見られないなんて』


 操られていないとなれば、何が原因なのかさっぱりわからない。

 となると次の可能性だと、スキルにあるはずだ。

 万理眼スキルがおかしかったことをみるに、可能性が高いとすればそこだろう。

 という事で、スキルを確認してみると、スキルが万理眼スキルと神性スキル以外なかった。


『はぁ?まじか』


 普通、所有するスキルが消えることはない。

 可能性があるとしたら、自分のスキルに対して有効なスキルである、上位者スキルが何かしている場合だ。

 急いで万理眼で上位者スキルを視てみる。

 すると、上位者スキルに万理眼スキルの所有権を奪われそうになる。

 急いで万理眼スキルで視ることをやめ、奪われるのを阻止する。


『当たりか』


 これはまずいことになったな。

 完全に上位者スキルが私自身の制御を離れ、暴走状態に陥っているようだ。

 上位者スキルは、自身を上位とする事が出来るため、普通のやり方では対抗できない。


『まずい。それに周りもまずい。ガイル、倒れちゃったし』


 先ほど万理眼スキルを使うのと同時に、ついでとばかりに周りの状況を探ったのだが、ガイルが今私の体が張り付いているコイツにやられ、身動きが出来なくなってから、再び動き始めたのだったのだが、暫くして力が抜けるように倒れたのだ。

 どうやら私の暴走した上位者スキルに、体力や生命力を奪われてしまったようだ。

 このままでは、ガイルが戦闘とは別に私のせいで死んでしまう。

 それだけではなく、一緒に行動しているクラスの皆まで被害に遭ってしまう。

 そんなこと許されるはずも無い。

 どうにかできないか一度、自分自身に関することを、上位者スキルを除いて視てみることにする。

 すると、ほとんど見れなくなっていた中で、唯一残っていたものがあった。


『妖艶なる女王…。これだけか。でも、なんで……、あっ!』


 まさか、この称号が役に立つ時が来るとは。

 それに上位者スキルは男性扱いなのか。

 詳しいことは、何もかも終わった後に確認するとしよう。

 それよりも、この現状を早く終わらせなくては。

 どうやら上位者スキルは、この白づくめの男の事をものすごく恨んでいるようである。


「死ね」


 そう言って、白づくめの男にナイフを刺した。

 すると私に強烈に何かが流れ込んでくる。

 万理眼で視れば黒い何かとしかわからなかった。

 男の方はというと、私に黒い何かを抜き取られたせいで、どんどん体積をなくしていく。

 そして、ついには白い外套と仮面を残し、何もかもが消え去った。

 もしかしたら、この男を倒せば上位者スキルも止まるかなと期待したが、駄目だった。

 ついに何とかここまで意識を保っていたガイルが、私に呼び掛けるも、そこで意識をなくしてしまった。

 このままでは、本当にいけないところまで行ってしまう。

 一途の望みをかけて妖艶なる女王の称号を強く意識して、万理眼スキルを使って上位者スキルに干渉する。


『いい加減に私のものとなれ!貴様のすべて、すべて私にゆだねろ!その血、その命、その恨み、その憎しみ、その心までも、すべて私に!』


 そしてついに、私にすべてが戻ってくる感じがする。

 すぐさま万理眼で視てみると、今まで視れなかったスキルや称号を、ちゃんと確認することが出来た。

 そして、体の方もチャックして、すべてが問題ないことを確認すると、一気に力が抜けてきた。

 そのまま崩れ落ちるかの如く、その場に座り込んだ。

 体が私の意志の通りに動くことに、少しばかり感動していたが、ここで今すべきことを思い出す。


「ガイル!」


 急いでガイルの下に走り、体をゆする。


「うっ、ね、ネリアか?」

「はい。ご迷惑おかけしました」

「はぁ、気にするな。今は非常事態だ。事故のようなものだ」

「分かりました」


 ガイルは起き上がろうとするが、力が出ないのか、中々起き上がれなかった。

 私は横からガイルを支え、立ち上がるのを手伝う。

 立ち上がってから、ガイルは懐から何かを取り出し口の中に放り込む。


「それは?」

「これか?これは強壮剤だ。もしもの場合のやつだから、かなり効果はきついがな」

「そうですか。それでどうしますか?多分ですけどスタンピードの波が来るまでは、まだかかるとは思いますけど」

「あぁ、そうか。それなら対処するよりは早く、今は出よう。奴のせいで塞がれたところは、どうやら元に戻っているようだし」

「わかりました」


 私は、静かにガイルを支えていた腕を離した。

 少しばかり様子を見て、自力で歩けるところを確認して、皆のところに戻る。


「ネリア!」


 戻ると一番にミランダにタックルを受ける。


「おっと!うん?あれ?」

「どうしたんですの、ネリア?」

「思ってた程の衝撃がなくて驚いていただけ」

「そうですの。もしかしたらかなりレベルが上がっているんじゃなくて?」

「レベルが?」

「えぇ、確認しては?」

「わかった」


 ミランダに言われてレベルを確認する。

 するとレベルがすでに20まで上がっていた。


「レベル20だったよ」

「本当ですの?それはすごいですわ!」

「なんか、ありがとう」


 他のクラスメイトも驚いたような顔をしていた。

 ただ、その中にはネリアなら当然だなという感じも混じっていた。

 それはちょっとなんだかなという気持ちにはなったが、それよりも今は急ぐべきである。


「それよりも、今は一刻も早く出よう。ここにいたらスタンピードに巻き込まれてしまうから」

「わかりましたわ」


 という事で、すぐさま私たちは迷宮の外へと急ぐのだった。

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