〈プロローグ〉 この世界の中の『この世界』
今を生きる者が居る。
友達と遊ぶ小学生、気だるげに通学する若人、日々のストレスを抱えるビジネスマン、犬を連れて散歩する老夫婦。
幸せだと感じる者も居ればそうでないと感じる者も居るだろう。だが、皆それぞれの人生を持ち、その人生の主人公はいつだってその人自身である。
それはどこの世界でも同じだ。
例えそれが、理不尽にまみれ、失望が許されない世界であったとしても。
――しかし、その世界は無慈悲にもある日、突然やって来る。
その世界には終わりがない。ただ死ぬまで生きるだけである。起きる、食べる、遊ぶ、寝る。表面上は普段の生活と何ら変わりはない。そこに住まう人間とそうでない人間が会った所で、客観的に見ても一切の違和感は抱かないだろう。
ではその世界での死因は何であろうか。
病気、事故、事件、自殺、老衰――
否、いずれにも当てはまらない。人並みの人生を送ることができなければ、人並みに死ぬこともできないのがこの世界だ。
その世界の死因で最も多いのは、『彼等』である。
世界の為に生き、世界の為に死ぬ。誰かが死んでいる間に誰かがやって来る。そういうサイクルで『この世界』は成り立っている。
そこで過ごすことを望んだ所で、それは叶わない。しかし、そこで過ごすことを拒絶することもできない。
一人、また一人と、問答無用でそこへやって来る。その時点で彼女達の未来が失われてしまうのは、なんと理不尽で無慈悲なのだろう。
さて、今日もまた一人、『この世界』へやって来た。




