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第十五話 真実の愛

暗くなった夜の薔薇園で1人もふもふとしたアカネズミが蹲っていた。


「……随分探したよ。先輩が保健室に運ばれてきたからダメだったんだろうと思った。」


「……ネル」


病院服に大きな上着を羽織ったネルが、パティの隣に座った。


「……薬草ありがとう。」


「偶然地下室のドアの近くにあったんだ。運が良かったね」


大変だっただろうにさらっと流すネルにパティはさすがだなぁだなんて思う。

ぽつりぽつりとパティがことの顛末を話し始めた。


「ダイアン……昔からネズミが苦手でね……図鑑のネズミを見ることもできないくらいなの……


……でもさ……中身が私ってわかってたら……ネズミの姿でも大丈夫なんじゃないかって……思ったんだけど……やっぱりダメでね」


そう言って話すパティの目には、涙が浮かんでいた。


「笑っちゃうよね……最初から無理だったのよ。」


パティさんはいっつも泣いてばかりだね。なんてネルが言いながらパティの頭を撫でた。


「パティさんさ、僕で試してみるっていうのはどう?」


思いもよらない申し出にパティは驚いてネルを見つめた。

ネルはネルでなんだか笑っている。


「ねぇ。今回の僕、魔物を倒すまではいかなかったけど、結構かっこよかったと思わない?」


「……確かにあの時はかっこよかった……かも」


「あとは、そうだなぁ。」


ネルはボサボサとした髪型を急に整え始めた。

隠れていた目や顔のパーツがよく見えるようになり、パティがどきっとするくらい整った顔があらわれた。


「こういう髪型にすると結構かっこいいって言ってくれる人が増えるんだけどどうかな?」


「……暗くてよく見えないけどそうなのかもしれないわね」


パティはなんだか恥ずかしくなって、目の前の薔薇ばかり見つめることしかできなかった。

恋愛経験の少ないパティに今のネルは眩しすぎる。

相手はネルなのにどきどきした。


「ねぇ……パティ。僕のことは嫌い?」


「……嫌いではないけど」


ネルがそっと大きな上着をパティの肩にかけた。

嫌いじゃなくて良かったーなんてネルが笑顔を向ける。


「パティお願い。この一瞬だけでいいからあの人のことは忘れて。俺のことを好きになるんだよ。いいね。」


そう言うとネルは、パティの頬に手を添えた。


「愛してるよ。パティ」


そう言うとネルはそっとパティに口付けた。

唇の柔らかい感覚が伝わる。


どきどきしすぎてパティの心臓は今にも破れそうだった。

 

パティの身体が光り、髭や耳がなくなっていく。

大きな上着の中には、栗色の巻き髪でリスのような小柄な女性の姿があった。


も……元の身体に戻ってる。

パティは元に戻って嬉しいやらネルの気持ちがわからないやら真実の愛とはどいうことかということで顔が真っ赤になってしまった。


「ネズミ姿のパティも可愛かったけど、やっぱり人間の君の方が数倍可愛いや。元に戻れて良かったね」


そう言うとネルはパティのおでこにキスをした。


「……なっ」


「あとこれ、洋服持ってきたから着替えな。上着を羽織っているとはいえ、誰かに襲われちゃったら困るからね」


ネルが優しい瞳でパティを見た。


「……来週のダンスパーティに間に合って良かったね。応援してるよ」


パティはその言葉にうまく返事ができなかった。

その日の夜、パティはネルと一緒に帰ったが、どうやって自分の部屋まで辿り着いたのかよくわからなかった。


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