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神様はとっても負けず嫌い  作者: そえじろう
神様はとっても負けず嫌い
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番外編 ~三日月堂の常連客~

少し腹黒いヒロインが主人公の物語です。

 私の名前は朝倉(あさくら)小町こまち


 老舗の和菓子店『三日月堂(みかづきどう)』で働く看板娘です。


 本店(ここ)の売りは何と言ってもこれ! 高級あんこを使ったお手製おはぎ。私も大好きです。


 さて、近頃うちの和菓子をよく買いに来てくれる人がいます。


「いらっしゃいませ。あら、また来てくれたんですか!? うれしい!!」


「そうなんです。また来てしまいました」


 筋肉質で背の高い男性は照れたような笑みを浮かべます。


「もしかして好きなんですか?」


「え?」


 こちらの問いに対して今度はどぎまぎしたような顔をします。


 私は改めて尋ねます。


「甘い物……お好きなんですか?」


「あ、あーそっちか。そうなんです……自分、甘い物めっちゃ好きなんです! ははは」


 どこか安堵したように笑う男性。


 ふむ……これで確信しました。彼、私に好意がありますね。


 私はこう見えて感は鋭い方なんです。


 では今日は一つ仕掛けてみましょう。


「やっぱり! 気が合いますね。私も甘い物大好きなんです。特に私が最近ハマっているのはこれです! 特大苺を使った、ジャンボ苺大福です」


「よーし、じゃあそれを10個貰っちゃおうかなー」


「いつもありがとうございます。また来てくださいね」


 ここで必殺の満面スマイル! ニコッ!!


「来ます! 是非また来ます!!」


 男性は支払いを済ませると嬉しそうにお店を後にしました。


 なんと今日このお店で一番高い商品がいとも簡単に売れてしまいました。


 商人としての優越感に浸っていると、バックヤードから何やら気配が――。


「見損ないましたわよ! 小町お姉さま!!」


 振り返ると小さな少女がこちらを見上げています。


 彼女は店主の娘で私の従妹にあたる三日月(みかづき)れいなちゃん(7)です。


 そして何やら鋭い視線。


 私はしゃがんで七才の目線に合わせます。


「あら、れいなちゃん……どうしたの急に?」


「わたくしは見ていましたわよ。今しがた殿方にあくどい商売をしていた所を!」


「そこは商売上手と言って欲しいわ。いい? れいなちゃん、私はこの商品を売りたいと思った。で、さっきのお客さんはこの商品を買いたいと思った。どう? そこに何も悪いことなんてないでしょう? これをウィンウィンの関係っていうのよ」


 私は軽く(たしな)めます。すると――。


「でも、あの殿方側には()()()()()()()()()()という付加価値が乗っかっていますわよね。果たして本当にウィンウィンと言えるのでしょうか?」


 く、子供と思って侮っていましたが中々頭が切れるようですね。


「付加価値なんて難しい言葉知っているのね。いい? れいなちゃん、それを言ってしまったらあなたの方はどうなの?」


「何が言いたいんですの?」


「たまにれいなちゃんがお手伝いしてくれる日があるでしょう? その時のお客さん達はみんなれいなちゃんからお買い物をして嬉しそうに帰っていくよね。だとしたら、それもあくどい商売に当てはまっちゃうんじゃないの?」


「――ッ!? それは、そのう……」


 思わず論破してしまいました。子供相手に少々大人げなかったですね。フォローも入れておきましょうか。


「でもいい? れいなちゃん、付加価値は決して悪いことではないの。あくまでルールの範疇(はんちゅう)の付加価値はむしろ良いことなのよ」


「ルールのはんちゅう……ですか?」


「そう……私はたくさんの人にこのお店の和菓子を買って欲しい。だから私はお客さんが気持ちよくお買い物をしてくれるように笑顔を振り撒くの。それはルールの範疇での付加価値、つまり良いことなのよ。だから、れいなちゃんのお手伝いも良いことなの」


「なるほど……」


 頷くれいなちゃん。私の話を素直に聞いてくれる子供の姿はいつ見ても気持ちが良いものです。


 そして私はダメ押しにもう一言。


「それにね、さっきのがもし何も心がこもってない()()()()()()()()()だったとしたら、高い物を売りつけたことに悪意があったかもしれないけれど……実は私もあの男性(ひと)のこと割と好きなのよ。だから私のスマイルには愛があるの」


「え!? そうなんですの!? へ、へー小町お姉さまは、ああいう殿方が……」


「何? どうしたの? 急に目の色を変えて……」


「恋をする男女……素晴らしいですわ! そうだ! でしたらこのわたくしがあなた方の恋のキューピッドになってあげてもよろしくてよ!」


 あ、墓穴を掘ってしまった。


 まさかこう切り返されるとは……思わず調子に乗りすぎてしまったようです。


 私の袖を握りバックヤードへ引っ張り込もうとするれいなちゃん。


「さあ! 今日は小町お姉さまの恋愛論をじっくり聞かせてもらいますわよ!」


「ちょ、ちょっと……まだお仕事中だから、せめて休憩時間に……」


「だったらお父様に頼んで小町お姉さまの休憩を今すぐ前借してさしあげますわ!」


 こんな無垢な笑顔を見せられたら、流石の私も敵いません。




 →本編『神様と不思議なおじさん 1』へ続く……。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

現在、本編の続編を制作中です。

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