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悪霊退治に300万!!?勇者なら一太刀で終わります。   作者: sisousi.kenta


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勇者の帰還②

伯父は私の目を焼いた後振り返る。師匠の声の方向をみた。


「メラメラクラクラ、グフフフプププ」


奴が唄うと火の手が上がる。

私を直接焼き殺す事は造作もない。


奴に我々を殺す意図などない。

何かをした結果死ぬ事を確かめたい。

それが奴の望み。


キラキラ チカチカも

カラカラサラサラも

メラメラクラクラも


人が大好きで、人の事を知りたい。

”こうすればどうするか”それを知りたい。


それが怒りや嫉妬で自分を抑えられなくなった者が相手ならなおよい。


「颯馬!」 「ソーマ様!」

私と小夜様は叫んだ。

師匠は一瞬小夜様を振り返る。

私は目を焼かれたがこの時はまだ目は見えていた。


小夜様の元には急速に燃え上がる炎、私の元には伯父の振るう鉄棒。

私は助けを求めたのか、小夜様の危機を伝えようとしたのかわからない。


小夜様のお腹に子がいる事はなんとなく察していた。


何が起きたのか正確には分からない。

寒い夏の怪談。


小夜様はまともに歩けない。

だからあり得るはずがない。


師匠は除霊師として、悪霊退治を優先しようとした。小夜様でなく私を助けようと。


小夜様にも悪霊がついたのだろうか?それは違う。

それでも小夜様が届くはずのない師匠の足を掴んでいる。


火に自ら飛び込み全身が焼け落ちる小夜様は、燃える手で師匠に行かせまいと足を掴みつづけた。


なんのことはない。

小夜様は8つも下の私をずっと憎んでいた。

恨み言など言われたことはなくとも、心に燻っていた。


足が悪くないだけの私。従姉妹どうし、顔も似ている。足が悪くないだけの私。足が悪くないだけの・・・。


だから師匠が私を助けに来た事がどうしても許せなかった。


私は伯父に燃える棒で頭を殴られる。


師匠はどちらも助ける事は出来ない。


燃え尽きる小夜様は最後に私を睨みつける。

人が数秒で燃え尽きる猛烈な炎と光、この時師匠は足を病み、私の目は本当に見えなくなった。


勇者は火と光の戦士。


私はその後師匠と師匠の師匠の元へ。

師匠の師匠はわずか1ヶ月後には体が弱り、1年も保たなかった。


弱りだしてからは5年は生きない。

目の悪い者と足の悪い者は目の悪い者がより短いと聞く。


師匠とはそれから2人で過ごしたが、私は小夜様のかわりにはなれなかった。


私は師匠の悲しみをついぞ癒すことはできなかったのだ。多少年の差があるとはいえ、師匠もまだ20歳を少し超えたばかり。


惚れた女より少し年下の従姉妹が3年もともに過ごしたというのに。

いや同じ顔だからか、それとも私の顔は大きく変わっていたのか。

もう確かめ用はない。




私は師匠との修行を思い出している。

私は師匠の死の原因となった勇者リチャードを蘇えらせる。


私の命を分け与えて。

死霊術師もやはり生きる方法はこんな道ばかり。


最初の術により勇者は目を開き、血が再度通い始める、1分と経たず血液が全身を巡る。

この時点では命を持たぬ、体の機能だけの死体。


命の精霊が魂をあてがうまで何度も繰り返す。

祈りを込め何度も何度も・・・。


その間は体を重ね私の命を流し込みつなぎ止める。そうして命の再定着をはかる。


死霊術師にとっては基礎的な技術。

行うたびに私の命は薄まって行く。


そうして勇者は蘇える。


まだ意識は朦朧としているだろうが、もう私の力は必要ない。後は自らの命は自らで育む。


一呼吸ついた時、私の胸には背後から剣を突き立てられている。


予想していなかった訳では無い。

必ずこうなると思っていた。


王の瞳は悲しみを称えている。

見えない私にさへわかる。


王とは何かを守る為に必要な力を振るう。


子が私の師匠を、親が私を殺した。

片方は正義の為。片方は平和のため。


勇者が完全に覚醒する前に邪魔になった私を始末したのだろう。


何かが戦っている。


「カラカラサラサラ」

「キラキラ チカチカ」


小夜様は私の危機を伝えようとしキラキラ チカチカがそれの邪魔をした。


小夜様はキラキラ チカチカにより精霊として消し去られた。魂は欠片も残らない。


次は私が悪霊になる番だ。

それならばせめてこの国に災いを。


術師になったとはいえ出来損ないの私の力などしれている。


せめて勇者不在により戦乱の時代に戻る以上の死者を。

私達2人の命をささげます。


勇者の身体が光をおびている。

私の体は闇に飲み込まれていく。


悪霊となった私は闇の底から天をみあげる。

悪霊には過去も未来もない。

師匠が闇の底に落ちていく。


私の見えなくなったはずの目が師匠をとらえた。

師匠の仲間達は、喜びまた仲間になろうと落ちて行く師匠に手を伸ばす。


私は師匠と引き離された時のようにフッと目をそらした。





完結です。

お読みいただきありがとうございます。


河に捨てられた師匠の足を小夜がつかんでたのはこの時の伏線でした。


というのは嘘で最初は小夜でなくユウリを助けに行くだけだったのを筆かのって書き換えました。


Xにだけ書いちゃったので最終話のちょっとした解説です。

ユウリは師匠に手を出されなかった意味です。

10代半ばの美少女と20代前半のイケメン。3年以上一緒に過ごしますが、師匠はユウリに手を出さなかった事が示唆されています。


もし手を出していたら心中する事になります。


除霊師の内弟子や師匠は子を持ってはいけません。

小夜の場合は手習いにきているだけの師匠と一緒にやめる道がありました。


除霊師は難儀な商売で辞めるだけで恨まれる為、師匠は辞められません。ユウリも辞めた後の宛がありません。


師匠の師匠が流石に一ヶ月で弱り始めたのは小夜の死とカラカラサラサラのストレスの影響もあります。





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― 新着の感想 ―
おつかれさまでした。 すごかったです…… 師匠編で謎だったことがユウリ編で次々に明かされて、ミステリーのようでもありました。 人の悪意というのとも違う、なんというか日常の良かれと思ってやる行動の裏に…
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