焔炎と水琉の乱舞
主要登場人物
精霊都市 プレリュード
●ウル・フリューゲル
プレリュードの王女。光の魔力を持つ。少し弱気な性格の女の子。
●セレス・ウォーターベル
ウォーターベル家当主兼守護精霊統括。水と治癒の魔法を使うお姉さん気質の女性。
使用武器・・・水琉硝華という名の槍。
●ルージュ・スカーレット
スカーレット家当主、守護精霊の一人。火と身体強化の魔法を使う。
使用武器 ・・・焔と神楽、2本のレイピア。
●ヴェール・シルフィード
シルフィード家当主、守護精霊の一人。風の魔法を使う、誰に対しても喧嘩腰であるがウルに対しては甘々。
使用武器・・・深空霧塵、2本の短剣。
●シャル・クロノス、メア・クロノス
時の守護精霊、シャルが主に攻撃魔法を使い、メアが防御魔法を担当している。二人で守護精霊をしている。
●ミハル
レイラの息子。闇以外の魔法をも扱う特別な存在。
●ミナト
時の神殿の守護を任されている魔法人形。レイラとは深い関係。謎が多い。
召喚精霊
●あれん
白く中型犬の様な大きさのウルの召喚精霊。光の魔法を扱う。
●エスカ
チョウチンアンコウの半魚人風精霊。重力魔法を得意とする。
セレスの作り出す水の中でのみ魔法の行使が可能。
敵陣営
●バルゴス
火と土の魔法を扱う、かつて厄災と呼ばれた者の眷属の一人。
●リリス
悪魔召喚の魔法を行使する、上から目線の女悪魔。
●ノエル
血と魂への干渉を行う魔法を使う上位の悪魔の一人。
●ウーズ
フードを目深に被った謎の男。
●エメラ
一人称は俺のキツめの口調を扱う女。
●リップル
蜘蛛を使役しているノエルの傍付き。
●ロータス・L・バトラー
オネェ口調の大柄の男。リリーの双子の兄。
●リリー・L・バトラー
自作の人形の服を脱がせては着せ替える謎の男の子、ロータスの双子の弟。
アースを倒し、坑道を進む一行は最奥らしき一段と広い空間にたどり着いた。その場に足を踏み入れると声が聞こえてくる。
「あら、本当にアースはやられてしまったのね。情けない。力量も読めずに倒されてしまうなんてね。」
「だれだ?あんたは。」
「んふふ。私はリリス。バルゴス様の側近をさせてもらっているわ。あなたたちをここで潰してしまいところなのだけれどそれは恐らく許して貰えないのよねあの方に。」
リリスの目を向ける方に目をやるとズシンズシンと音を鳴らし黒い影が近づいてくる。
「クカカカ、久しいか?羽虫共。見た顔もあるようだがまた懲りずにやられに来たのか。クカカカ。」
「っ!バルゴス。」
ルージュの手に力が入り今にも飛び出していきそうなまでに魔力が乱れていた。
「ミハル。お願いアイツは。アイツだけは私に。」
「いいよ。行っといで、そんでボコしてこい!」
「っ!!ありがとうございます!!」
「良かったのですか?ミハル様。」
「いいよ、なんだか因縁があるみたいだしそれはそれとしてこっちもこっちで頑張りましょうや。」
「んふふ、あなたたちごときこの私で十分ですわ。さ!行きなさいお前たち!!」
リリスが手を差し向けると暗い坑道の奥から数千の悪魔が顔を出し襲いかかってくる。
「おぉ!!多いな!!いくか!!」
《ウル、僕らもやろう!!》
「ええ、あれん!!」
「私達もいっくよー!ね!お兄ちゃん!!」
「ほどほどにな。というかまたあれをやるんじゃないのか?」
「腕がなるな!!」
「ところでみんな、こんなに多いんだ。一番多く敵を倒したやつが勝ち!負けたヤツに何でも命令できるってな!」
「おお!いいな!本当に何でもなんだな!!」
「ああ、勝てたらの話だけどなー。」
「ほら、また始まった。ちょっと多いとこうなる。飽きないのか。」
「いいじゃん!お兄ちゃん!私たちも参加しよーよー!」
「しない。めんどい。」
《ウル!僕らは不利じゃない?勝ちたいよ!!》
「あれん。諦めて、この武器じゃ勝てっこないよ。」
《ガーン。じゃ、じゃあ!あの飛んでるの倒そ!》
「それならいいね。やるわよ!!」
「ミハル様、こんな時にすみません。私は戦闘から外れてもよろしいでしょうか?」
「ん?セレスはあっちにいくのか?」
「はい、許可を」
「一々、許可はいらないよ。セレスお前はすべきことをしろ。」
「ありがとう、ミハル。では、行ってまいりますわね!!」
「全く、もう少し信用してくれてもいいのになー、なぁミナト。あと、お前はいつも通り解析と鑑定スキルで相手の情報を引き出し、俺らに伝えろ!!」
「承知しました。ミハル様。」
「じゃあいっくぜー!!」
ミハルが鎌を手に取り悪魔の集団の中に入っていく。
「はぁ、いつ見ても楽しそうだよな。」
「うん、見てて気持ちいいよね。」
《ウル!!》
「はい!!」
ウルとあれんは着実に数を減らす。
「あらあら、中々やるわね。ならば」
と手を広げ魔法陣を展開すると新たに下級悪魔が続々と姿を現す。
「ちっ、キリがないな。それなら!散りばめろ!!」
鎌を頭上に投げ手を合わせると大量の針に変わり、それらを掴んでは投げ数を減らしていく。
「へへっ!出遅れてんぞーヴェール!!勝つ気ねえのか?」
「なっ!ずりぃ!!エアリアルブレード!!」
風の刃を剣に乗せ四方へ飛ばす。
「ねぇ、ミナト君。いつも思うんだけどミハルはどうやってあんなに針を当てられるの?」
「説明してなかったですか?えっとですね、ウル様たちには見えていないかもしれませんがミハル様の周りには無数の細い魔力の糸が漂っていて当てたい相手に糸を引っつけるんです。その糸に針を通すかのように掴み投げることによって確実に相手に当たるようになっているって感じですね。真似してもできることじゃないので悲観的にならないでくださいね。私でも無理でしたね。」
「そうなんだ。なんだかすごいね。」
《ウル!あの飛んでるの狙おう!!》
「ええ、わかったわ!」
ウルが狙ったのはリリス、勢いよく放たれた矢がリリスに迫る。
「こんなもの!!」
払いのけようとしたリリスの腕を抉る。
「ぎゃあああ!!これは光の魔法!?小娘が!!ダークネスオブカースネス!!」
「っ!メア様!デバフ特化型の闇魔法です!防御を!!」
「姫さま!こっちに来て!!行っくよ!これが本来の使い方!!天命の御鏡!!」
黒い閃光を四方へ弾き返す。
「ちっ!」
「無尽蔵に湧いてくるのうぜぇ!どうにかならねえのか!」
「はぁ、仕方ない。ミナト!!手伝え!!」
「はい!前文はお任せ下さい!!母なる大地よ、聖善なる星々よ今ここに集いて我が力となり雷走る宝玉となれ!!繋ぎ、紡ぎ走る雷の力となせ!雷繋宝石シャル様!!」
悪魔たちの頭上から黄色に輝く小さな粒が散りばめられる
「上出来だ!!墜ちる稲妻、砕く彩羅、その身を焦がしその身を以知らしめるがいい!!正義の稲妻」
悪魔たちの中心に雷が落ちた瞬間、黄色の粒に電気が走り瞬く間に広がりその場にいた敵は一瞬にして消え去る。
「お膳立てはここまででいいだろう!いけ!!」
《ウル!!》
「はい!!」
「当たらなければ意味はない!!っ!くあっ!」
肩から腕にかけて、ミハルの針がリリスの動きを止め矢がリリスの羽を削る。
「はっ!これでまだやれ、」
「注意がなってないぜ!深空霧塵!飆!!」
「きゃぁああ!!」
「ふぅ、あっちはちゃんとやってるかな。」
「(なんですか、この違和感はまだ何か何かある気が。)」
「はぁ!!」
「そのまま押さえていなさい!ルージュ!!水面を築け!!」
「くっ、ちょこまかと!!」
「水琉硝華、第一幕!水面切り!!」
水面を奔る斬撃がバルゴスの足に当たる。
「ちっ、水面を奔る斬撃だと!?」
「余所見をしている暇があるのか!!」
「鬱陶しい!!炎矢」
「そんなのは当たらないよ!!」
「次!エスカ!!合わせなさい!!水面切り!」
《了解ッス!!》
「そう何度も同じ手は当たらんわ!!」
セレスの斬撃に合わせてバルゴスが上空に飛翔する。
「今よ!」
《任せろッス!重力力場》
バルゴスの足下一帯に紫色の魔法陣が広がると地面に叩きつけられる。
「重力の魔法だと!?ぐぐぐぐ、ぐあっ!」
「そのまま抑えていなさい!!エスカ!!次行きますわ!!水面切り!!」
「そう何度もやらせるか!!アースクエイク!!」
《おわっ!!すまねぇッス!セレス!!》
魔法陣を破壊したバルゴスが斬撃をも躱し上へ飛ぶがセレスがおもむろに指で上を指す。
「下の攻撃に注視していると上が疎かになってしまいましてよ。」
「神楽、第一説!不知火!!」
「なにっ!?」
「くっ、精霊ごときが。この我にこの我に!!」
その様子を見ていたミハル
「あっちも終わりそうだな。じゃあ行くか。」
「また。っ!!魔力反応!ミハル様!!」
「っ!!」
黒い何かがミハルを吹き飛ばし壁に叩きつけられる。
「かはっ。」
「ミハル!!」
黒い影の横から勢いよく赤い影がメアたちに迫る。
「姫さま!!プロテクションウォール!!」
「だめだ!メア!!」
「え。」
シャルがメアを勢いよく抱き横に大きく跳ぶ。
《ウル!!危ない!!》
「きゃあっ!!」
「こいつらどこから!うぉっ!!」
「っ!!セレス!!」
「ルージュ!こっちは任せてお行きなさい!!」
剣を納め、ミハルやウルたちの方へ駆け出すルージュを横目に
「クカカカ!漸くか、リリスの命をトリガーとしたリリスの魂に刻まれた攻撃を基に召喚される悪魔たち。これで我にもツキが回ってきたというもの!!」
「なっ。」
「怨呪黒炎砲!!」
「っ!!エスカ!!水から出なさい!!」
《けどそれじゃあオイラが!》
「これで足りるでしょ!母なる大地よ、聖善なる星々よ!(この距離だと大海原までの詠唱が足りない。それなら!!)今ここに集いて我が力となり眼前なる敵をうち沈める海の標となれ!!大海!!」
「クカカカカカ!!そんな水ごときで止められる代物ではないわ!!!」
「くっ!!」
《セレス!!》
「凍てつき鎮まれ!!氷雪月華!!」
押し寄せていた水が一瞬にして凍てつき氷の大きな壁となり黒炎を抑え込む。
「なかなかやるな、だがまだまだこれからだ!!」
「ん、ん?あれん?、」
ウルが目を開けると自身が乗っかるようにあれんが下敷きになっていた。
《うる、無事でよかっ、た。》
そして周りを見渡すと、壁に埋もれて意識をなくしているミハル、攻撃から妹を守り二人で倒れているシャルとメア、悪魔を決死に抑えているヴェールの姿。こっちに必死向かおうとしているルージュ、大悪魔の魔法を一身に引き受け今にも打ち破られそうになっているセレスの姿が一気に飛び込んできた。
「いや、嫌だ。また目の前で誰かを失うのは。嫌だよぉ。お父様、お母様。助けて。誰か!助けて!!」
涙で前が見えなくなり辺りが真っ白になり、見えてきたのは紛れもないウルの母、テトラの姿だった。
『ウル。よく聞いて、あなたを置いて行ってしまった私やアーサーくんが言えた義理ではないけれど、誰かを失うツラさは分かるわ。でもね、今あなたがあなた自身が彼らを救える唯一の存在なの。』
「でもお母様。私にはそんな力は。」
『ウル、よくお聞き。高砂時雨だけが君の強さじゃない。君には君の強さがある。自分を信じて。これだけ君は強い子だって言っているボクらのこと信じてくれないのかい?』
『ちょっと!アーサーくん、今そんな言い方しなくても!でもね、よく聞いてウル。いつもあなたが詩を謳ってくれた時私もアーサーくんもとても安心できたし心地よかった。だから謳ってウル。あなたの詩が皆を救う導となる。いつも元気にだけど儚げに謳うあなたはとても愛しくてかっこよかったわよ。そろそろ時間みたい。また会える時を楽しみにしているわね。ウル。ほらお行きなさい。』
「お母様、お父様、ありがとう。行ってきます。」
『いってらっしゃい、私の。私たちの可愛い天使ちゃん。』
「♪〜〜〜♪♪♪〜〜♪♪〜〜♪」
《っ、ウル。これ、は。なんて温かい謳。これが彼女の固有魔法。付与詩謳》
「っ!!力が!!オラァ!!」
黒い何かを吹き飛ばすヴェール。
「ん、大丈夫か。メア。」
「う、うん。ありがとうお兄ちゃん。ねぇ。この詩って」
「あぁ、俺らの姫様のだ。」
「力が漲ってくるね。」
「ウル姫様!」
そしてバルゴスがなにかに気付く。
「なにっ!?これ、は。力が。」
その声を聞いた瞬間に黒い何かがウルの方へ走り出す。
が、目の前に大きな杭が突き刺さる。
「いってーな!!どこ行くんだよ。」
「っ!ミハル様!!」
「ルージュ!!てめぇ!何してやがる!!自分の敵を見失うな!!すべきことをしやがれ!!」
「(やばっ!)」
ミハルの怒号を聞きセレスの方へ走るルージュ。
その時、パリンと音が鳴り響き、セレスの前の氷の壁が弾ける。
「やばっ!エスカ!!」
「っ!セレス!!(お願い!都合がいいのは分かってる!でも力を貸して!お父さん!!)」
ルージュが右手で剣を抜く。
「クカカカカ!もう遅い!!死ね!精霊!!」
「焔、第六説!!喰炎」
ルージュの左腰に帯刀されているもう一つの剣、その名は父の名と同じで今ここまで一度も抜いていない。神楽と二刀一対のルージュの武器。
「なに!?どういうことだ!」
黒い炎が焔の鋒に吸われ勢いがどんどんなくなっていく。
「ルージュ。あなた。」
最後まで吸収し終わったあと、ルージュの魔力量が一気に跳ね上がる。
「行ってくるね、セレス。」
「痛えな。無茶苦茶に殴りやがって。継続回復、おいミナト。分かってることを言え。」
「はい、バルゴスの言葉を聞く限り先程倒したリリスから産み落とされた四体の悪魔だと思われます。そしてあの色。気になりますね。」
「リリスの魂に刻まれた攻撃を基にねぇ。」
「あの赤いの。私の結界を破ってきたよ。」
「青いのはやたらめったら硬かったぞ。」
「ウルはなんか見てないか?」
《ごめん、ウルは魔力を使い果たして寝ちゃったみたい。》
「わかった。だが今ウルのバフがあるうちに行動に出るか。多分だけどあの色には意味がある。作戦を伝えるからこっちに集まれ。」
「ふむ、なるほど。」
「じゃあ早速、反撃と行きますか!!」
その声に反応するかのように、赤、青、紫、黒色の悪魔が動き始める。
「わ、私も。」
「ウルは休んでろ。お前の気持ち想い、ちゃんと届いたぜ!」
「ミナトくん、合わせて!!お兄ちゃんは詠唱に入って!」
「はい!」「おう!」
「「プロテクションウォール!!」」
結界が展開されると先程同様に赤色の悪魔が走り出す。
「ヴェール!!青色のを足止めしておけ!」
「分かってんよ!!」
「母なる大地よ、聖善なる星々よ、今ここに集いて我が力となり眼前なる敵を討ち滅ぼす閃光なる雷となれ!」
赤い悪魔がメアの結界を砕く音が聞こえる。
「それ、私の結界じゃないよ!」
「ぐえっ!?ぐおおおお!!」
もう一度振りかぶり強い打撃を放つ。
「ここだ!時の黎明鏡!!」
キャインと砕けない結界に触れた瞬間、拳から全身にかけて悪魔の身体が爆ぜる。
「よしっ!まず一体!!」
赤の悪魔が物理攻撃にてやられたのを確認して青の悪魔がヴェールから離れメアたちの元へ駆けてくるもシャルが掌に溜めていた白く光る稲光が放たれる。
「待ってたよ。雷撃の波動」
身体の中枢部分を撃ち抜かれ、頭と四肢を残して崩壊する。
「ぐぎがぁ!!」
「お前ら一々行動が遅せぇんだよ!!深空霧塵、飆!!」
「あがっ!?」
紫の悪魔の首が落ちズシンとその場に倒れる。
そうしてやっと黒の悪魔が動き出そうと足を前に出した途端
ズガンと足元に再び杭が打ち付けられる。
「さっきはよくもやってくれたな。おめぇの相手は俺だ!!」
ヴェール以外の誰も目で追えない速度で打ち合いをするミハルと悪魔。
「お前の速度にももう慣れた!これで!!」
「ふん、貴様ごときに!そんな針ごどきにやられるわけがないだろお!!」
「なんだ、喋れたのか。だが。」
「な、に!?」
「お生憎様、俺の武器はこいつなんでね。強かったよお前は。」
ミハルの手には大振りの鎌が持たれており、悪魔の腕、胴体は大きく切り裂かれており、徐々に身体が崩壊していく悪魔を背に精霊たちの元へ歩み始める。
「ミハル様。」
「さっすが!俺らの大将だぜ!」
「やるね、ミハル。」「あんな速度まで出せるんだな。」
《闇を操る魔女の子、見直したよ。ウルは大丈夫だよ。》
「さ、今度こそこっちもあっちも終わりかな?」
「なんだと、我の炎を吸収し自身の魔力に変換しただと!?」
「セレス!最後一緒に決めるよ!!」
「ええ!エスカ!準備なさい!!」
《りょ、了解ッス!!》
「それがどうした!!完膚なきまでに沈めてやろう!!」
「いくよ、焔ノ皇神楽。」
「アースクエイク!!」
「神楽!第三説!影縫焔!!」
バルゴスの身体に灯った焔の影から黒い線が伸び自由を奪う。
「ぐっ、小賢しい!!」
「お父様、見ていてください。焔一閃!影陽炎! 」
一瞬にしてニ撃。
「(はっきり見えた訳じゃないけど、左手の剣で一撃、ニ撃目は後ろの影から斬撃が入ったように見えた。あれが焔の力。)」
「セレス!!」
「ええ!水琉硝華!終幕。水龍槍颯撃!!」
槍を構え空高く跳び、すぅと思い切り息を吸い込み
「エスカ!!!!今よ!!!!」
《待ってたッスよ!!集中重力領域!!》
槍の鋒に重力が集められ凄まじい勢いとなり
「グガアアアア!」
脳天から激しく地面に突き刺さるセレスの槍は
バルゴスを貫き、自身の身体をも傷付け地に降り立っていた。
「癒しよ」
「く、クカカカカカカカカカ!これで、おわ、ったと、思うなよ、せい、霊ども。やく、さいの闇はこれからこ、の先も続く、精々足掻き苦しむがいい!!」
そう言葉を残し、ルージュとセレスを巻き込むように爆発した。
赤く白い閃光の中、ルージュにとある声が聞こえてきた。
『ルージュ、よくやったな。』
『私たちの仇を取ってくれてありがとう。ルージュ。』
「父様、母様?」
『ああ、そうだよ。焔ノ皇神楽を通してお前と話している。その剣は俺たちの核魔石で創り上げた剣だからな。あれはとある日、西の鉱山で強力な魔物が現れたと報告を受け、当時の守護精霊である、俺、カグネ、水のスイレイ、風のリーニャで討伐に向かった時、ドワーフの統制が取れず、現場は慌てふためき、この四名の内、三名が命を落とすことになってしまった。俺はその場でカグネと共に自分の核魔石を使用しお前に託すための剣を創った。それを瀕死だったリーニャに託し、セレスの父親であるガストルに地上まで運んでもらったことがあったんだ。生命を落としたが剣に宿った俺らの魂は生き続け城にてとんでもないことを耳にした。』
『それはね、ドワーフの統制が取れなくなったのは仕組まれていた事だったらしいの。』
『そして、守護精霊が大幅に欠けたあと、アーサー様とテトラ様が亡くなられた。これに関しても偶然ではないらしいんだ。よく聞いて欲しい、ルージュ。身内を疑うわけではないんだが、アーサーたちに近かった大臣が一番怪しいと俺たちは睨んでいる。まだ何かある。この先も、だからウル様を含めた今旅をしている仲間を信じて立ち向かいなさい。それが出来ると俺たちは信じているよ。そしてそれを持ってプレリュードを再び再建しなさい。』
「これは?」
『それは初代の守護精霊様である、カグツチ様の核魔石だ。あと二つ、同じような核魔石がある。俺たちが感じるのは東だ。エルフの住む未踏破の地。不思議な魔力の満ちる魔の森だ。』
『気を付けて行きなさい。ルージュ。ホムラ、そろそろ時間みたい。』
『あぁ、カグネ。先に行っといてくれ。』
『わかったわ。』
「父様、母様!また会えるよね?会えなきゃやだ!」
『大丈夫、私たちはいつでもあなたの傍にいるわ、心配しないで。』
『当時何も出来なかった俺からルージュにプレゼントだ。この魔法をお前に託すよ。母さんが大好きだった魔法だ。上手く使いなさい。じゃあまたな、ルージュ!愛しているよ。』
「ありがとう。父様。私!行ってくるね!!」
『『いってらっしゃい。ルージュ』』
「…、じゅ、るーじゅ、ルージュ、大丈夫!?」
「ねぇ、全然起きないよ?」
「ったく、しょうがねぇな。はぁー。おらよっt」
「待って!起きてる!!!」
ミハルの拳が目の前で止まる。
「起きてんじゃん。」
「起こし方、もうちょっとどうにかならなかったの!?」
「まぁ、そんなことより。よくやったな、ルージュにセレス。」
「ルージュ様、それは?」
「あ、これ?これはねプレリュード再建に必要だって父様が、教えてくれたの。初代守護精霊、カグツチ様の核魔石。」
「カグツチ。うっ!!」
「大丈夫?ミナト!?」
「いえ、何でもございません。(なんですか。今の頭の痛みは。)」
「とりあえず、こっから出るぞー!!動けるやつは動けない奴抱えて地上に行くぞ!!」
地上に上がったミハルたちはドワーフの街を後にし、ルージュが聞いたという東の森へ歩みを進めるのであった。
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とある一室
「記憶の楔か解き放たれようとしている。あの子たちの旅も始まった。テトラ。あなたの物語が動き始めたんだな。じゃあ僕も行動を開始するとしますかね。」
白衣を着た髪はポサボサ、大きな眼鏡をクイッと上げ、目の前に映し出されていたミハルたちの様子を眺めていた人物が不敵な笑みを零す。
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大樹の中の一角
「ノエル様、皆集まりました。こちらへどうぞ。」
「ありがとう、リップルちゃん。それにしてもあんなヒヨっ子な奴らに倒されちゃうなんてツメが甘いね、バルゴス。まぁ、眷属の中でも最弱だったから仕方ないっちゃないけどね。キャハハハ!さぁ、幹部会を始めるよ〜。」
「来た。てか今日なんの話するの。」
と小さく低い声で顔が隠れるくらい目深にフードを被った男が皆に問う。
「んなの、俺が知るわけねーだろ!どうせノエル様の気分だろ!」
キツめの口調で言葉を返す、少し背の高い女。
「皆さん、そんな言い方しないでください。大事な話って言ってましたよ。あ、みんなはこっちにきちゃダメだよ。」
カサカサと蜘蛛たちが気弱そうに話す女の子の周りをウロウロしている。
「ちょっとぉ〜♡アテクシまだお肌のお手入れが終わってないのよねぇ♡話はさっさと終わらせて欲しいわねぇ♡」
「うるさい。黙ってよ。」
オネェ口調の大柄な男に、自作であろう人形の服を脱がしては着せ替えている背の低い男が立っている。
「キャハハハ!みんな元気だねー。さぁ始めようか。西のバルゴスが精霊ちゃんたちにやられたみたい。あそこがやられたなら次はここだと思うんだよねぇー。だからさアンタたちの力を見せてもらおうって思ってるんだけどどう思う?ねぇ、ウーズ。エメラ。リップル。それにリリー。」
「あらぁん♡アタクシの名前がなかったよォーに聞こえたんだけっどどういう事かしら?♡」
「あー、居たんだ。クソオカマ。あんたの名前なんて忘れちゃったー(棒読み)」
「あっらっ!こんなに美しいアタクシを忘れちゃうだなんて罪な女ねアンタも!このアタクシはロータス・L・バトラー!みんな覚えてねん♡」
「ねぇ、うるさいんだけど。みんなって誰に言ってんの?馬鹿なの?死んでくれない?」
「んもぅ〜♡相変わらず酷いわね。リリーちゃんは♡」
「まぁどうでもいいよ、クソオカマも頑張ってくれたらいいよ。」
「ねぇ、ノエル様。相手は強いの?」
「強いとは思うけど、私たちの相手じゃないかもね。けど負けることは許されない。お前たちはここ、闇茨庭園を守る罪を背負いし殺戮者達なのだから。まぁ長々と話したけどその時がきたら大いに暴れるといいよ、キャハハハ!アタシも弱っちい人間やエルフ、妖精を相手にするの飽きちゃったし。今度は精霊狩りと行こう☆」
ミハルたちが次に向かうは闇の森に蠢く奴らとの対決。
今は一つ目の核魔石を取り返し暫しの休息をとるのであった。
拙い文章ですがここまで読んでいただきありがとうございます。
次回の展開もお楽しみ頂けるように頑張りますので
これからも応援のほどよろしくお願いします。




