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動き出す時間、ぶつかる想い、そしてモフモフ

主要登場人物


精霊都市 プレリュード


●ウル・フリューゲル

プレリュードの王女。光の魔力を持つ。少し弱気な性格の女の子。

●セレス・ウォーターベル

ウォーターベル家当主兼守護精霊統括。水と治癒の魔法を使うお姉さん気質の女性。

使用武器・・・水琉硝華という名の槍。

●ルージュ・スカーレット

スカーレット家当主、守護精霊の一人。火と身体強化の魔法を使う。

使用武器 ・・・焔と神楽、2本のレイピア。

●ヴェール・シルフィード

シルフィード家当主、守護精霊の一人。風の魔法を使う、誰に対しても喧嘩腰であるがウルに対しては甘々。

使用武器・・・深空霧塵、2本の短剣。

●シャル・クロノス、メア・クロノス

時の守護精霊、シャルが主に攻撃魔法を使い、メアが防御魔法を担当している。二人で守護精霊をしている。

●レイラ

宝物塔最上部に監禁されていた闇属性の魔力を持つもう一人の王女、ウルの姉にあたる。

●ミナト

時の神殿の守護を任されている魔法人形。レイラとは深い関係。謎が多い。

●ミハル

レイラの息子、マルファンクションの継承者。闇の魔力を持つ青年。


敵陣営

●ノエル

血と魂への干渉を行う魔法を使う上位の悪魔の一人。

●バルゴス

炎を扱う上位の悪魔の一人。






その明朝、夢を見た。


「かあさん!!!!!はぁ、はぁ、はぁ。な、なんだ今のは。え?これは。」


すると、廊下の方からバタバタと聞こえ


ガチャッ


「ミハル様!大丈夫ですか!?」


「はぁ、はぁ。ミナトか。大丈夫だ。それより説明しろ、なんでここにマルファンクションがあるんだ。」


「それはレイラ様が昨日、契約の移行を終わらした後、そこに移動したものだと思われます。それよりなにか悪い夢でも見たのですか?」


「そうか。いや、断片的な物が頭の中に流れてきた。かあさんはもう起きてるよな。」


とベッドから降り、レイラの寝室の方へ歩いていく。


「お待ちください!レイラ様は体調が悪いみたいです。まだお休みになられてるはずです。」


「目が泳いでる、嘘をつくな。」


「あぁ、ダメです!!」


ガチャッと扉を開くと


「はぁ。はぁ。み、ミハル?ど、どうした、の?」


「っ!!かあさん!何があった!?ミナト!!」


「ううん、だ、大丈夫、よ。母さんね、随分歳を取っていた、みたいなんだけど、その子をだいぶ、助けられていたみたい。ミハルにその子を移行するのに蓄積していた魔力をごそっり持っていかれちゃって、疲れているだけだから、大丈夫よ。そ、それより、なにか、あったの?」


「さっき夢というか断片的な映像が見えたんだ。」


「どういった?」


「まず初めに見えたのは母さんによく似た女の人だった。誰かと戦っているみたいだったけど。」


「私に?」


「(それってもしかして。)どんな人でしたか?ミハル様」


「え、っと母さんに似てることと大きな剣を持った奴と一緒に居たことくらいしか覚えてねぇ。」


「そうですか。分かりました。」


「それ、から、なにをみたの?」


「次に見えてきたのは白くて大きな街と散り散りになった三つの宝玉だな。 」


「白くて大きいはプレリュードかな。三つの宝玉ってミナト。


「核魔石ですね。それも相当強い精霊の。そういえばプレリュードの地下には都市を運営している精霊石があると聞いたことがあります。それが散り散りにということは襲撃の際、奪われた可能性があるかもですね。その三つの精霊石がないとプレリュードは再建できない可能性があります。」


「核魔石を奪ったのは、恐らく、各方角に根城を展開している、奴ら。」


「あと、見えたのは六人。」


「っ!!(まさか、そのまさかだよね?)ミハル!お願いがあるの!」


「な、なに?」


「これから、ミナトに連れていってもらうところに行って決めて欲しいの、私の願い、お母様とお父様が愛したあの街をみんなが平和に暮らしていた都市(プレリュード)をまたみんなが平和に楽しく暮らせるようにして欲しいの。私には出来なかった、けどあなた、ミハルになら出来る、その力があなたにはあるの。お願い母さんの願いを犠牲になった者達の想いを叶えて。」


涙を流し、咳き込みながら頭を下げるレイラに


「分かった。今の俺にはその願いも想いもまだ分かってないかもしれない、だけど、見てくるよ。今の世界を、俺が母さんの想いも願いも背負って、悪い奴らを倒してくるよ、待っててくれ。少ししたら行くよ。母さん、行ってくる。」


「うん、うん。ありがとう。ミナト、ミハルの事、あの子たちのこと任せたわよ。ミハルがみんなが帰ってくるまで私は朽ちることはない。」


「レイラ様、お任せ下さい。ただ衝突もあると思います。そこはミハル様の判断におまかせしていいって感じですか?」


「ええ、あの子の選択に、あなたの意思に全てを託すわ。」


「分かりました。レイラ様、時は巡ります。では行ってまいります。」


そう言い残し、旅の支度をした後、家を出て二人は北の方角へ歩き始めた。

二人が家を出た後、部屋に残ったレイラの元に黒い影が二つ現れ


《ようやく、動き出すのか。では我々も先々へ向けて行動を開始する。それでよいな?》


《解放後、少しの間は外部への魔力流出は抑えてあげるね。》


「はい、お願いします。(頼んだわよみんな。) 」










ーーーーーー

家を出て、一時間が経ち


「んで、どこに向かってんだ?」


「北の山、ですよ。私とレイラ様しか近づけないところがあるのですよ。」


「そうなのか、あ、そうだ、俺には敬語やめてくれな?母さんも居ないし、俺も窮屈なの嫌だからさ。」


「はい、善処します。けど、私はそういう立場ですので」


「おい!!」







そこから二時間ほど歩いたあたりでピタッとミナトが立ち止まる。


「ん?どした?ここにはなんもねーぞ?」


「いや、あります。見えていないだけでここに。」


するとカタカタと背中の鎌が震え出す。


「うおっ!なんだ??」


「その鎌の力を使って貰えませんか?」


「お、おう。お!?頭になんか流れ込んで、【誤りを正せ!誤作動(マルファンクション)】!」


目の前の霧が深い霧が晴れていき、目の前に大きな神殿が姿を現す。


「なんだこれ!すげぇ!!」


「これが、プレリュードの北に位置する時の神殿です。」


「つかさ、つかさ!俺この鎌持ってからなんだか力が溢れてくるし、なんかすげぇんだよ!」


「その力、あるべきとこで使ってくださいね。さ、中に入りましょう。今ので中の魔法も解けているはずですので。」


「おう!いこうぜ!!ってこんなかなにがあんだよ!!」


「行ってからのお楽しみですよ。」





ーーーーーー

時の神殿内部、最深部。




「え、あれ?うごけ、る?」


「時間が止まった感覚はあった。だけど、今は動ける。」


「みんな、大丈夫??」


「大丈夫です。ウル姫様。」


「私も大丈夫ですわ。」


「あたしも!お兄ちゃんは??」


「うるさい、メア」


「でもなんで急に。」


「何かあるんだろうな、動けるようにしておけ。」



すると微かに声が聞こえてくる。



「埃っぽいな、今んとこなんもないけどこの奥か?」


「はい。そうです。」


「お!なんか最深部っぽいとこ到着〜!っておいおい!第一村人はっけ〜ん!!」


「良かった。皆さん無事で。」


緊張感なしのテンションで指を指すミハルとは裏腹に下を向き喜びを隠せないほど嬉しく震えるミナトを見る六つの視線があった。


「おい、アイツは。あの時の魔法人形!」


「ミナト、何をしにここに来た!」


「うぉっ!どうした?なんでそんなに怒ってる?ミナト〜なんかしたのか?」


「その子は誰なのですか?ミナトくん。」


「待って!姫様!あの子の背中にあるのって!!」


「ま、魔女の鎌。」


その言葉にピクッと反応するミハル。


「魔女?それはなんだ?」


「魔女は魔女だ!プレリュードを滅茶苦茶にして俺らをこんな所に封印した!レイラ・マルファンクションだよ!!」


「ヴェール!!姫様の前でそんなk」


そんなメアの言葉を遮るように


「おいテメェ!誰のこと言ってんだ、レイラって母さんのことか!!」


「かあさん、ってことはあなたはレイラの。」


「んだ?俺らをここに封印しておいて自分はのうのうと子供と幸せ生活か!?ふざけんじゃねぇ!!」


「ヴェール様!そんな言い方は!!」


「ミナト!!お前は黙ってろ!」


「シャル様。」


「俺は今ここに来たのは母さんの想いを聞いてここにいるんだ、ミナトにここにいるあの子たちのことを頼んだって言ってんのを聞いてここに来てんだ!」


「ミハル様、聞いて。」


「母さんは、お前たちのことも気にしていた!なのにこんな言い方、されて!ふざけんじゃねぇ!!!」


「ま、待って。レイラはあなたにどんな想いを託したの?」


「プレリュードをみんなが平和に暮らせるように再建して欲しいって私の居た街も都市も幸せだったって!その願いを叶えてやりやたいって!母さんの願いだから!!母さんがここに導いた、ならここに居る者たちと一緒に旅して行くんだと思ってた!けど、そんな想いなら俺が終わらせてやる。俺の、母さんの邪魔をするものは誰だって許さない!!かかってこい、格の違いを見せてやる!!」


「ちょっと、待って。」


「待たなくていい!いいぜ、やろうじゃねーか。俺らに勝てたらお前の言うことでもなんでも聞いてやるぜ!なぁお前ら!!」


「俺はパス。」


「わ、私も話し合いの方がいいと思うんだけど。」


「え、お兄ちゃんやんないならあたしもしなーい。」


「おい!お前ら!!いい感じだったじゃねーか!ノリ悪すぎだろ!セレス!ルージュ!お前たちだけでも来い!!」


「力で決着決めるってのはいいんじゃない?私は乗った。」


「私は、まだ、整理がついてなくて。」


「すまねぇな、三対一になってもいいんだよな?」


「三人がかりでもなんでもいい、かかってこい。」


「はぁ、やっばりこうなりますか。メア様お願いがあります。」


「ん?なぁに?」


「メア様は私にも敵対的ではないんですね。」


「うーん、まぁそうかな。六人で一人をいじめても楽しくないしね、それでお願いって?」


「この場と神殿全域に結界を張っていただけないですか?あまり魔力を放出させすぎると奴らに気付かれる恐れもありますから。 」


「なんのことか分からないけど、ここが壊れちゃったらいけないからいーよ!ほい!!」


「おい、ミナト。あとで話はちゃんとしてもらう。」


「はい、分かりました。ウル様にもちゃんもお話します。」


「ええ、お願いねミナト。それよりあの子は大丈夫なの?」


「あー大丈夫ですよ。きっと勝ちます。」


「すごい自信ね。でも相手は守護精霊の筆頭当主たちよ?」






ーーーーー



「あー、ボーナスタイムいる?一分間で俺をこの位置から動かせたらお前たちの勝ち、動かせなくてもデメリットはねーからさ。」


「舐められてるな。」


「じゃあ、一番手、ルージュ・スカーレット行きます!!」


キンッと音と共に剣を抜いたルージュが飛び出す。


「あまり、舐めないでもらいたいわね!!」


「うん、遅いね。」


鎌で軽くいなすと、ルージュが踵を返し連撃の猛攻に出るもその速さに追いつくかのようにミハルも剣技を軽く弾き返す。


「速いわね。じゃあ次は、身体強化(ファースト・ヒート)!!」


「っ!」


その言葉にピクッと反応するミハルとニッと笑みを浮かべ背中から短剣を抜き走り込むヴェールの姿があった。


「はぁぁぁ!!」


「くっ!」


「相手は一人じゃねーぞ!!」


「忘れてたっ!!が、問題じゃない!」


「なっ、それ、刃の部分と柄の部分で分けられんのかよ!」


速さ自慢の二人から攻撃をその場から動かずに凄まじい動きでかわしていく。


その光景を見ていたミナトが口を開く。


「残り三十秒ほどですね。セレス様は未だ動かずですか。」


「速い二人面倒だな。なら、氷柱槍撃(アイシクルランス)雷電矢(サンダーアロー)!」


「なっ!なに!?その量の魔法は!!」


ミハルの周りに展開されるは二十を超える氷の刃に雷の矢だった。


「へぇ、凄い。二属性の魔法をあんなに。」


()()()なら普通だ。」




その様子を見ていたセレスはまだ気持ちを決めきれずに下を向いていた。


「(私は、どうしたらいいの。お父様。目の前であんなことがあったのにどうやって戦えばいいの。)私は、何をすれば、」


「セレス!!お願い!!みんな、を。二人を助けてあげて!!」


メア、ミナト、シャルが声のする方にパッと驚く様子で振り返る先にはウルが声を上げて叫んでいた。



「きゃあっ!」「くそっ。」



「時間切れだ!」


ルージュの前に移動したミハルから振り下ろされる凶刃が目の前に迫る。


「まずっ。」


「ルージュ!!」


「なにっ!?」


ルージュを捉える直前、刃に氷の礫が当たり鎌の軌道が大幅に逸らされる。


「させませんわ!!」


「っ、セレス!!」


「お待たせして申し訳ございませんわ。」


「ようやくか、随分と遅い出勤だな、青髪!」


癒しよ(ヒール)!大丈夫ですか?二人とも。」


「遅ぇんだよ、セレス。」


「まさか、弾かれるとは思わなかったけど一分は過ぎた、ここから勝てるとは思ってないだろうな!」


「セレス、お願いがあるの。私とヴェールの詠唱が終わるまで時間を稼いで!!ヴェール!!」


「おう!」


とセレスを前に二人は下がり、詠唱を唱え始める。


「させるかよ!!」


「水面を築け、水琉硝華。」


槍を地面に打ちけると足元に水が広がる。


「水?」


「あなたの相手は私ですわよ、水琉硝華、第一幕、水面切り。氷柱槍撃(アイシクルランス)


「(見えない斬撃!)っ!!」


「?!見えている?」


「いい攻撃だ、見えない斬撃とはな。」


「見破られたのは初めてですわ、一体どうやって。」


「さぁ、なんでだろうな。」


「すごい!セレス!!私達も!」


「「母なる大地よ!聖善なる星々よ!今ここに集いて我が力となり眼前なる敵を討ち滅ぼす力となれ!」」


「荒れ狂う奔流よ、立ち込める嵐雲よ、切り裂く風よ、己の無力さを知らしめよ!」


「巻き上げる豪炎よ、彼の者に苦しみを!終宴の猛火にその身を焦がし、灰を持って灰燼となせ!」


「くそっ!この猛攻、鬱陶しい!」


セレスからの水面を奔る斬撃に氷の礫で詠唱する二人の元にたどり着けないでいるミハルがイラつき始める。


「セレス!下がって!!」


「ええ!」


慈悲なき煉獄の宴(インフェルナス)!」

斬風嵐砲(ストームブラスト)!」


「……。ここなら、暴風昇巻(スクリムストーム)!!氷柱槍撃(アイシクルランス)。」


迫る炎と風の複合魔法に歩みを止め魔法を放つミハル。

それを見ていたシャルが


「あれは、上位の火の魔法に風魔法、それをあの一瞬で複合魔法としたのか。」


「それに対抗するのに詠唱を省いた同じく上位の風魔法でなんて勝てるはずなくない?お兄ちゃん。」


「普通ならそうだが、あいつは。」


「っ!!竜巻の中に水!?どういうこと??」


「まさか、セレスの水を巻き上げて風で強化された炎を相殺するつもりか!だが!!その水量じゃ治まらねぇ!」


「だから、暴風昇巻の中に氷柱槍撃を加えたのですね、ミハル様。」


「え?どういうこと??」


「氷魔法を巻き込むことによって水の量をかさ増ししているのか。それでも無詠唱の魔法と完全詠唱の魔法では威力が違いすぎる!」


雷撃矢(サンダーアロー)!」


「っ!!下がって二人とも!氷の双璧(アイスウォール)!」


セレスが作った氷の壁に雷の矢が深く突き刺さったと同時にミハルが前に出たのが微かに見えた。


暗幻(ブラックアウト)黒惑(カーテン)!」


三人の視界が黒に染まり


「まず一人!」


と声が聞こえたと同時に壁に打ち付けられるルージュ。


「無詠唱の魔法はこの機会を作り出すためので本命はこっちか!」


「ルージュっ!きゃあっ!!」


「最後。」


「させっかよ!!」


ミハルの猛攻にルージュとセレスがやられるもヴェールは咄嗟に抜いた剣でその場を凌ぐ。


「やり損ねた。」


「(んだよ、その強さは。二人がやられた。このままじゃ。アレを使うしかないか、だがもう魔力も時間も稼げねぇどうする。)考えててもしかたねぇ!やってやるよ!」


ヴェールが神殿内を凄まじい速さで駆け回る。


「くっ、速い。」


「母なる大地と聖なる星々に(こいねが)う。」


今までとは違う詠唱の始まりに


「あの速さ、この盤面で最上位魔法の詠唱文だと!?なにを、まさか!あれを使うのか!!」


「荘厳なる風よ、森の導きよ、総ての悪に想像を絶する痛みを。閉じ込め、抗う者に天の裁きを。我、ヴェール・シルフィードの名のもとに、森の導き手たる妖精よ、力を貸し与え給え!妖精颯(エアリアル)懺散撃(スラッシュ)大監獄(プリズン)!!」


ミハルに纏うように風が翠の光を帯び、四角く檻を形成していきガチャンと音が響くと巨大な監獄。檻が完成する。


「これは、」


「あれは風の先代の。開発した広域捕縛殲滅魔法。悪と見なした者を閉じ込め、無数の斬撃を浴びせる攻撃魔法だ。」


「はぁ、はぁ、はぁ、魔力がもうないがこれでこの魔法の完成だ!!」


「(っ!風の斬撃、外からは通るのか。だが避けてしまえば。)」


ザッと避けた瞬間ヴェールの口元が緩む。

外から侵入した風の刃は下、横と二箇所に当たると当たった場所から二枚ずつ、風の刃がミハルに向かって飛んでくる。


「そういうことか!!」


ミハルが鎌を振り弾き返すと刃は更に数を増やしてミハルを襲う。


「お兄ちゃん、あれはどういう魔法なの?」


「閉じ込めた対象は出ようとする時攻撃するだろ?その人数、攻撃の数に応じて風の刃が襲う仕組みだが外部からの攻撃でもその仕組みが反応するとは思わなかった。トリックに気付かれる前に先手を打ったというとこだな。」


「ふーん、それならもうあの子には勝ち目はないの?」


「恐らく。打開策があればどうにかなるかもしれないが。」


「おらっ!身体強化(ファースト・ヒート)!」


「ははっ、やるじゃねぇか。もう三十二枚は出てるのに凌いでやがる。だが!!次で終わりだ!!」


「あぁ、次で終わらせる!俺の力を見せてやろう!水粘球膜(スライムプリット)


ミハルの周りに小さな水の粒が形成されていく。


「水の魔法!?でもあのスピードじゃ間に合わない、いや形成スピードがミハル様にしては遅すぎるっ」


全ての風の刃がミハルを襲う!

だが、そこにミハルは立っており、周りに浮いた球体に風の刃が刺さってその場に留められていた。


「これで終わりだ!!誤りを正せ!!誤作動(マルファンクション)!!」


そう叫んだ直後ミハルの周りに展開されている魔法が全て綺麗さっぱりその場から消え、満身創痍のヴェールに向かっていく。


「ヴェーール!!」


ウルはキュッと目を瞑りその視界が真っ暗になった。

数秒して目を開けると、ヴェールの前に結界を張ったメアと指先から魔法を繰り出そうとしているシャルの姿、ミハルの前にはミナトが立ち塞がり鎌を持つ手を掴んでいた。


「やりすぎです。ミハル様。」


「ふぅ、間に合った。」


キィンと剣が落ちる音がして

「俺の負けだ。」


その声を聞きミハルが口を開く。


「よく聞け!俺の勝ちだ!それでだ、この戦いの落とし所はどこにする!」


「そのことに関して、私から進言させて下さい!!」


「ウル姫様?」


「プレリュード、第一王女ウル・フリューゲルはここに居る精霊以下五名と共にミハル・マルファンクションの旅に同行することを願います!私たちから提供出来るのは戦力とこの土地に関する知識です。どうかレイラの願いを想いを私たちにも背負わせて欲しい。です。」


「如何なさいますか?ミハル様。」


「まず初めに、ヴェールだったか?こいつを守る為に俺の鎌とこいつの間に入って防御魔法を展開した者がいた、次に更にその間にいつの間にか詠唱を終わらせ、相打ち狙いできた者がいた。そして俺の腕にかかった鎖、これは火の魔法を使う者が意識を取り戻し決死の覚悟でかけた魔法だ、更に後ろの彼女は今まで出したことがないであろう数の魔法を行使し、放つ機会を伺っていた、仲間一人に対してここまでの者たちが動き守ろうとした。それはすごくいい事だ、仲間を想う心は。そんなお前たちと共に俺は母さんの想いを果たしたいと思った。だからその話受け入れる。ミナトお前はどうだ?」


「私はミハル様の御心のままに。」


「そういうことだ。」


「あ。ありがとうございます!これからよろしくお願いしますね!」


「あーうん。よろしく。傷の手当しないとだな。」


「それは大丈夫だ、セレス!」


虹の癒し手(オーロラヒール)!」


「一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」


「え、あ、えっと。だれだっけ?」


「時の守護精霊、シャル・クロノスだ。ミハルは複数の魔法の行使をしていたがあれはどういうことだ、三つの魔法を同時に行使するなんて聞いたことがない。」


「あー、あれは俺の固有魔法らしくて五星魔法(ファフタール)だ。五つの魔法を同時に発動できるのとどこの話をしているのか分からないが基本戦闘中は五つ魔法を使っているよ?」


「っ!?五つだと!?あの場面だ、ヴェールとルージュの詠唱魔法の。」


「あーあの時は水の人が残っていたから氷柱槍撃(アイシクルランス)雷撃矢(サンダーアロー)暴風昇巻(スクリムストーム)と常時発動の魔法探知と魔法攻撃力上昇のバフをかけていたくらいで氷柱槍撃がなくなったタイミングで身体強化をして走って、雷撃矢を放った後は特攻目的で突っ込んでたから回復魔法の継続(ハートビート)回復(ヒーリング)で回復入れて、近付いたタイミングで身体強化を切って、暗幻(ブラックアウト)黒惑(カーテン)を使って攻撃したって感じだったかな。」


「な、なんだよそれ。無茶苦茶じゃないか。それにそんな魔力どこから。」


「シャル様、マルファンクションは元々魔力の塊でして無尽蔵とも捉えられる魔力を行使できるのですよミハル様は。」


「それがもしそうだとしてもだ、魔法の維持には魔力がいるもんだろ?セレス。」


「ええ、そうですね。このように魔法を行使し、その場に留めておくだけでも魔力を使いますのに。」


「あーそれ、俺要らないみたいなんだよね。固有魔法のおかげで。」


「チートですわね。それは、」


「大将の力は分かった!だが俺らにも稽古をつけてくれ!俺らはもっと強くなりてぇんだ!」


「大将?まぁいいや、ヴェール俺はお前が気に入った!なんで強くなりたいか教えてくれないか?」


「プレリュードを取り戻す為には力がいる、そんでもって大将の力になりてぇんだ!頼む!!」


「まぁ、いいけど。技と魔法の種類ならお前たちの方が豊富だし、強いと思うけど。俺の見てやれるのは魔力を上げることと武器を使用しての戦闘訓練ってとこだと思うぞ?」


「よろしく頼む!!」


「私たちからもお願いしますわ!」


「メアもお願いするー!」


「ミナト〜」


「いいんじゃないですか?他人に教えるということは自分の為にもなりますし。他の事はお任せ下さい。」


「助かるよぉ。じゃ!早速!」


そう言うと鎌を構え


「散りばめろ!マルファンクション!」


鎌が無数の細い針へ姿を変える。それを一本一本みなに配る。


「これは?」


「それは持っててくれ。ちょっと我慢しろな?」


「痛っ。」「きゃっ!」「くっ!」「っ!」「んっ!」「うっ。」


「ちょっ、ミハル様なにを!」


「まぁまぁ、ほら、持ってる針に魔力を込めてみてくれ。制御が甘いと折れるから気を付けてな。」


針を持つ皆が静かに目を閉じ魔力を込めていくと針の色が徐々に変わっていく。


「おー!ルージュ、お前は赤と黒になったな!セレスは青と黒、ヴェールは緑と黒。メアは黄色と黒、シャルは、凄いな!!青に緑、それに黄色と黒か!複数の属性持ちは良いな!ん?」


ウルの持つ針を見て首を傾げるミハル。


「あれー?白一色だ。なんでだ?」


「ミハル様、ウル様は光の魔法属性の持ち主です。恐らくですが相反する闇属性は受け付けなかったのではないかと思われますが私の見たところやりたかったことは叶っているみたいですよ。」


「お!まじか!良かったな!お前ら!これで固有魔法というか新しく魔法を取得したみたいだぞ!戦ってて思ったお前たちは召喚魔法が使えんじゃないかってな!」


「召喚魔法??」


「俺とメアは使えると思ってたが今取得したのか?」


「今、パスが繋がったって感じじゃないか?使えるかどうかは分かんないけどなー。」


「ウル姫様なんか光ってるよ?」


「え?うそっ、きゃあっ!!!」


バフンと爆発が置き、モクモクと煙が上がり、徐々に晴れると


「わんちゃん?」


《やっと会えた!!ウル、君がウルだね!!》


白いもふもふの四足歩行の獣がその場に佇み、ウルに擦り寄っていたのであった。

































拙い文章ですがここまで読んでいただきありがとうございます。


次回の展開もお楽しみ頂けるように頑張りますので


これからも応援のほどよろしくお願いします。

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