一話 ギルドの夢は金の音
長編小説です
夢と現実は乖離したものだ。
夢で腹いっぱいに何かを食べても現実の腹はちっぽけも膨れない。
現実で腹いっぱいになるには金を稼がねばらない。
酷く夢の無い話。
それが冒険者の現実だ。
だが、夢はある。
運良く懸賞の懸けられた魔物を狩って一攫千金、迷宮でお宝を見つけて売りさばく。
どちらも一概に不可能と諦めるにはもったいない。
「換金おねがいしまーす」
「はい、お預かりします」
眩しいくらいに溌溂とした女性に促されるがまま、俺は鞄の中にたらふく詰め込んだ魔石をカウンターに広げる。
魔石の数は魔物を倒した証の数だ。
「全部で五つ、合計銀貨六枚ですね」
手早く清算を終えた女性が銀貨を手渡す。
やはり魔物を狩れば手に入る魔石は中々にいい値段だ。
並みの大きさでも五つともなれば一日贅沢してもおつりがくる。
今の俺の主な収入源だ。
「どうも」
その銀貨を片手に俺は流れるように食堂へ。
昼前ということもあり人はちらほら。
適当に空いた席に腰を下ろして近くの職員を呼ぶ。
「いつもの」
「はいよ」
顔見知りの職員にそんな雑な注文と銅貨三枚を渡し、ちゃりちゃりとうるさい銀貨を財布にしまう。
すると、そこに一人の男が立ち寄ってきた。
「お、ルクス、随分とたんまりと稼いだっぽいな」
「ガルムか、今日は運が良かったよ」
にやけた顔で話しかけてきたのはガルム。
ただ年が近そうだからという理由だけで話すようになった冒険者だ。
金髪に軽薄な笑みなくせに案外交友関係は広い。
俺からすれば業腹ものだ。
というより……
「奢る気はないぞ」
「そこを何とか! ルクス様!」
「うるせぇ、うぜぇ! 奢ってもらいたいなら金の話の一つでも寄越せ」
小蝿のようにせがむガルム。
こいつはタダ飯常習犯だ。
そのくせ遠慮なんてない。
好きなものを頼ませた日には大盛りにデザートのフルーツ分財布が軽くなる。
シッシと本気で嫌がりながら手で追い払うが、がんとして退く気のないガルム。
そんな彼がニヤリと笑いながら顔を耳元に近づける。
「実は耳寄りな情報が一つ」
「……聞こうか」
「今迷宮で魔物の魔石の落ちがいいんだってさ」
「それは本当か!」
まさか本当に持っているとは。
しかも魔石という比較的高価なものが手に入るというのはあまりに美味しい話だ。
それこそ、飯一食分など比べるまでもない程に。
「いつもの頼んでるからそれ食ってろ」
「おい、それに肉一枚くらい追加しろよ」
「俺のやつ食ってろ、金はもう払ってある」
「今日は徹夜か?」
「当たり前だろ!」
そう気前よく返事をして俺は出口へと駆け足で向かう。
……とは言ったが、昼くらい食うべきか。
空腹に鳴る腹を摩りながら振り返れば俺の頼んだ肉をパンで挟んだサンドイッチは既にガルムが口を付け始めていた。
「チッ」
俺はそう小さく舌打ちしてギルドを後にした。
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