襲撃
私はひたすら歩いていた。
あれからどれだけ経ったのだろう、気付いたら野原に居て、行く当ても無くただ歩いた。
街どころか木1本すら見えない。
こんなことあるのだろうか?
体感で言えば3時間は同じ方向に歩いてるはず。なのに木1本無いなんて。
お腹が空いてきたが、ご飯が無いので餓死してしまう。
一刻も早く街を見つけなければ。
そんな時、ふと大きな小屋を見つけた。
「噂をすればってやつ?」
頼れるのはここだけなので人がいて欲しいが…。
コンコンコン
「誰か居ますか?」
取り敢えずノックをして声をかけた。すると中から人の歩いてくる音が聞こえた。
ガチャ
「どちら様でしょうか?」
中から出てきたのは老婆だった。私の事を見た瞬間、少し驚いた様に見えたが、すぐに穏やかな顔になった。
「街を探している、波という者です。見知らぬ土地で何も分からなくて。出来れば中に入れていただきたいのですが…。」
「こんな若くて可愛いのに大変ね。どうぞ中へ入って。」
「ありがとうございます。」
そうして中に入り、ご飯を恵んでいただいた。
腹ごしらえも済み、現状も理解できたので老婆に質問を投げかけた。
「あの、ここから1番近い街ってどこですか?」
「ここから1番近い街ねぇ。えーっと。」
老婆は何かを取りに行き、すぐに戻ってきた。
「ここかしら?」
そうして取ってきた地図の『カミヤマ』と書かれた場所に指を置いた。
「『カミヤマ』…分かりました。ひとまずここを目指してみようと思います。」
「えぇ、頑張ってね。」
そうしてお礼を済ませてから『カミヤマ』を目指して歩き始めた。
「っ!あれが『カミヤマ』かな?」
しばらくして、国が見えてきた。
国?街を探していたはずなんだけど…。
まあ見た感じはとても栄えていそうな雰囲気であったため、取り敢えず向かうことにした。
「やっと着いたー。」
大きな門の前で、私は一息ついた。
ここに来るまでに相当歩いたため、もうヘトヘトだった。
そんな時、門番から声をかけられた。
「お前は何者だ?」
「えーっと、旅人?です。」
「怪しいな、付いてこい。」
「え?は、はい。」
付いてこいと言われたら付いていくスタイルを前世から貫いているため、言われた通りにした。
「ここに入れ。」
そうして入れと言われたのは明らかに牢屋だった。
「その刀は没収、それと手足に枷を付けさせてもらう。」
「えぇ…?」
「お前のことを白だと断定できたらちゃんと出してやる。それまではここで大人しくしておけ。」
「分かりました。」
意外に良い人…なのか?
まあ白だと断定されるまでは耐えるか〜。旅をするのはまだまだ先になりそうだな〜。
そうしてあれから2週間程経った時、事件は起きた。
ドカーン
そんな音と共に地面が揺れ、バタバタと急いで私を牢に入れた門番が来た。
「お前が白かなんてどうだっていいから、この国の戦力として魔族の襲撃を止めてくれ!」
「魔族の襲撃!?」
「ああ、今この国は魔族の襲撃を受けているんだ、どうか力を貸してくれ。そうしたらお前を自由にしてやる!だから頼む!」
「分かりました、私の刀はどこに?」
「そこにある、少し待ってくれ。」
門番は私を牢から出した後、刀を返してくれた。
「必ずこの国を守ります。」
「申し訳ない、協力ありがとう。」
「いえ、私は強いので。では!」
そうして私は襲撃を受けている現場まで駆け抜けてきた。
数は数百程度だろうか。
今までこれほどの数と戦ったことは無いが、今の私にはできる気がした。
「波絶流 華天」
その私の流技の名前を呟いて刀を振った瞬間、数十体の魔族達は一瞬で真っ二つになった。
まだまだ…。
「波絶流 震斬」
体を地面に伏せるようにし、刀を上に振った。
すると地割れが起きたかのように亀裂が入り、軌道上に居た魔族はまたもや真っ二つになる。
その2つの繋げて出せる技を繰り返し放ち続け、いつしか魔族は全員倒れていた。
「久しぶりに使っても、体は何も忘れてない。」
魔族の後処理をするため刀を納めると、周囲から歓声が聞こえた。
…?
周りを見ると、私を凄いと言う人や、ありがとうと褒める人などが多く集まっていた。
そんな中、門番がやってきて私に言葉を投げかけた。
「君、そんなに強かったのか。牢屋に閉じ込めてしまって申し訳ない。」
「申し訳ないのはこちらです。顔を上げてください。」
「いやいや、私のせいで君を2週間も牢屋に入れてしまった。これは許されることではないんだ。」
「私を牢屋に入れていたから今回の襲撃を退けることが出来たのでは?」
「…確かに。と言いたいところだが、そんな甘い話じゃないんだよ。まあ今はいいか。」
門番は頭を上げ、考え事をしていた。
「君を国の英雄として王に紹介したいんだけど、いいかな?」
突然そんなことを言われた。
英雄か…。
少し嫌なことを思い出したが、すぐに思考を振り払い、その問いに返答した。
「残念ですが、私はもう次の場所に行くので。」
「そうか。少し残念だが、君ならなんとでもなりそうだもんな。王には良い感じに事情を伝えておくから。頑張れよ!」
その言葉を聞き、門番に向けて笑顔で言った。
「頑張ってきます!」
そうして私は『カミヤマ』を去った。




