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Fate  作者: 朝夜鯨
9/17

タイトル未定2026/09/08 21:25

=====2026年6月13日5時00分=====

起床の時間だった———。

男は徐にベッドから体を上げる。

特に何も言わないのが気持ち悪い。

欠伸の一つでもすれば人間味があるのに。


男はそのまま起き上がり、トーストを焼いて、とろとろのスクランブルエッグを乗っけて、サクッとした音を立てながら静かに食べた。


食べ終えたかと思えば、桃色の飾りがひらひらと靡くピアスを耳につけた。


——————男の名はクレメント・ウェインズ。

この聖杯戦争に介入し、新たな聖杯戦争を始めようとする男。


また、誰の記憶からも消えた、孤独の男。

クレメントはスノーフィールドで起こった聖杯戦争を培養した。

全てを破壊する。それだけがクレメントを突き動かす——————。

=====2026年6月8日=====

——————そこはがらんとした病室だった。

何やら一般的ではない機械で延命されている。


しかし、———どう見たってもう終えてしまう命。

その風前の灯は見るものに吐き気を及ぼすほどに邪悪で死を深く連想させる。


その半死体はもうぴくりとも動かない。

——————それは魔力を供給されていた。


点滴のように、ぽつりぽつり。

人体実験でもさせられているようだ。


———その半死体は女だった。

もう腐りかけていた。


もう死を待つのみのその肉体には何の権利もない。

病室に男が1人入ってきた。


主治医なのかなんなのか、白衣を着た男に金を渡せば、その腐りかけの半死体女を犯した。

乱暴に犯した。

壊れるほど犯した。

——————それでも女は死ななかった。


男の精が尽きたのか、時間が来たのか、男は舌打ちをして部屋を出て行こうとした。

女は何もできなかった。


無音。

神様はこの女に何も与えないのだろうか。

魔力がぽつぽつ。

女は動かないでいた。

いやしかし、———意識がほんのり戻っていた。

それはセックスによる快楽ではなく、突然の来訪にやる現象。

神様は全てを見ておられる。

——————半死体の女の左手に令呪が宿る。


——————召喚されたのはライダー。

なんと、この女がこんなになった原因の中に聖遺物があった。


詠唱もなしに召喚できたのは何故だろうか。

神様の御心故だろうか。


ライダーは直ぐに女に付いた精液を拭き取った。

そうして男たちを一瞥———。


鋭い獅子のような眼光———。


女は何も命令していない。表情はマスクで見えない。

声も発さないし、震えてもいない。


しかし、ライダーはその怒りしかと受け取った!

ライダーは間合いを瞬く間に詰め、男の首を一つ。

叫び出す前に白衣の男の首を一つ。


——————ライダーは女の守護者となった。

このマスターに同情し、このマスターのために戦うと決めた。

そのために、聖杯を、ただ、貪欲に———

=====2026年6月12日20時14分=====

「だーから僕の言った通りにすればよかったのにー」

だらだらに汗を流し、俯いている男に少年は叱るように言った。


男は低い声で、

「悪い」


「もうっ!」

ぷんぷんという効果音が似合う。

「なんでそんなに未来に頼りたくないの?」


「…なんでだろうな。未来が不安で不安で怖いからかな。

…いや、自分で拓いていきたいんだ。できるだけ。

この負けは俺が自分勝手にやった結果だ。

ごめんよ———」


「なんでマスターが謝るんだよ。分からず屋。あんぽんたん!」


「お前は賢いのに、なんでこんな馬鹿に付き添ってくれるんだ?」


「馬鹿だから、心配なんだよ。

おかしいでしょ、ほぼ何も見えないのにMMAって。

それで言うと聖杯戦争もなんだけれど」


会場からトゥルスノフという名前がざわざわ聞こえてくる。


「マスターなのに素性がバレてるってのも馬鹿丸出しだね」


「言ったろ。俺は聖杯戦争否定派だ。それに俺は、格闘家なんだよ。

漢でいさせてほしいな」


トゥルスノフは一貫して優しい声だった。

「ふーん。ま、僕はマスターに従うだけだからいいけど」


トゥルスノフが聖杯戦争を降りずに戦う理由、それは一重にこのバーサーカーが消えてしまうのを気の毒に思ったからだ。


それをバーサーカーは知っている。

「なぁ、なるべく人殺したくないんだけど、これからどうするべきかな」


———バーサーカーは不思議で仕方なかった。

「殺したくないんだけど」という言葉。


これは殺せる側の言うセリフだ。

それをMMAですら負ける男が言っている。

「手加減した?まさか、殺しちゃうからわざと負けた…とかないよね?」


「さぁ、今とこれからのことを考えよう。過去を悔いたってしょうがない。

ノストラダムス、指示を」

=====2026年6月13日21時36分=====

「お前ヤバいな。絶対サーヴァントだよなぁ。血の匂いが濃すぎるぜ」


誰もいない真っ暗な路地裏で深く唸るはライダー。


「——————」


ただの沈黙を見せる赤と黒の女———。


その闇を切り裂いたのは女の背後のブランクから出た、三段の発砲音だった。


ライダーは不意打ちにも関わらず剣で全て叩き落とす。


なかなか我武者羅な太刀筋で綺麗とは言えないもののセンスが光って見えた。

——————相対する両名。


宙に浮き、上から銃弾の雨を降り落とす。

即座に雨を切り裂き、真上に跳ぶ。


それを見たアーチャー、圧切長谷部を鞘から抜き、ライダーの首に刃を向ける。

闇を切り裂くような豪剣。


それを剣で無作法に止めるはライダー。

押して跳ね返す。


地に着く間に14撃。両者乱れ打ち。

女のマントがひらひらと闇に溶ければ、風に靡くように後ろに下がった。


そしてまた遠方からの銃。


横殴りの銃の雨の中、切先を向けて突撃!


いやしかし、ライダー一歩も退かず、むしろ一歩前に出て、切先を刀身で受け、女を上に蹴り飛ばせば、流れる銃を無茶苦茶に切り殺した。


気づけば死角に女と銃。

それでもライダーは凛としている。

「——————来いっっっ!!!」


——————象が夜から降ってきた。

象はアーチャーとライダーの間を遮り、アーチャーが放つ銃弾をその身で受けた——————。

ライダーは一気に剣を構えてアーチャーに突っ込んだ!


「——————」

勢いが切り裂かれた。

ライダーが貫かれた。

何とか身体を捻って急所は流れたものの穴が空いてしまっていた。


「———背後から…出せんのかよ…」

アーチャーは物静かに淡々とライダーを空白の銃で四方八方を囲んだ。

そこから出されるは三段式の銃弾。


——————防ぐことは不可。

蜂の巣になり死ぬのみだ。


「なら、逃げりゃあ…いい…」

——————ライダーが消えた。

一体、どこへいったのか、アーチャーは気づかないでいた。


「使命なき者に俺は負けない!」

——————スパッと、先程までの乱雑な剣筋とは打って変わって丁寧かつ綺麗に首筋を切り裂いた。


噴き出る血。

「——————」

それでも尚、沈黙。


「なんか言ったらどうだよ!

——————お前のマスターは何してんだ!」

「——————」

「もういいさ。

俺はただ倒すだけだ。マスターのために…」


女は帽子を脱いだ。

するすると長い黒髪が風に流される。

「——————三千世界」

「喋れるじゃねえか———」


周囲の空間を全て埋め尽くすような、度を超えた銃が整然と並んでいる。

間も無く放たれた銃弾は全てを打ち壊し貫いた。

待ち草臥れた死神が顔を出す。

それでもまだ不敵に笑って見せるのは見栄だろうか、それとも——————。


「わりぃ、マスター…やるぜ———

——————スルス!!!!!!」


そこは山脈だった。

山の上の白や緑が絶景であった。

その裏に潜む危険すら、また美しかった。


目の前にはライダー。

しかし、先と違うのはライダー以外にざっと数万の兵士、そして37体もの象がいた。


「——————行け!!!」

———大軍勢がアーチャー目掛けて走り出す。

銃など怖くないかのように無性に走り出した。

——象の鳴き声が、人の雄叫びが、ライダーの気迫が山脈一体を埋め尽くした。

恐怖すら飲みこんだ。

——————死よりも強い意志。


天から見下ろしアーチャーは無言でどんどん撃ち殺す。

それでも虫のように湧いて出てくる。

——————それでも、無言。


人は天に届かず、無慈悲に何も出来ず撃ち殺されるだけ。

しかし、人は天と繋がれる———。


象が鼻を振り回して天を渡った。

何頭もの象が後に続く。

その象の皮膚は魔力込みでかなり硬く、アーチャーの銃弾をなかなか通さない。

ようやく一頭殺したかと思えばもう一頭が現れる。

アーチャー、たまらず後退り。


アーチャーがもう一頭の象のど頭に大きな風穴を開けた。

——————死んだ象の背後から剣を握りしめたライダーが、殺気も隠さず顔を出した。

「あばよ」

——————象の死体ごと、アーチャーの首を斬り飛ばした。

山脈は消えていて、先の暗い路地へと参る。

アーチャーの頭がごろんと地面に転がっていた。

その様を眺めて疲れただとか、敵への賛辞だとかそういうのを送っていた。


——————違和感は即座にやってくる。

このアーチャー、なぜ消えない!


———闇の中からぬっとピエロが笑って顔を出す。

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