タイトル未定2026/09/06 11:31
「何か最近変なこととか起きないか?」
わんわん泣き喚いた後、単刀直入に、けれど少し戯けながら質問した。
すると、結城は
「最近?あーそう言えば…私の幼馴染の話なんだけど、なんだかここ数日学校に来ていないのよね。
なんでかしら」
「へえ。それは確かに興味を唆るね。いやでも、他にないのか?」
結城はうーん、と悩んでみせるが
「ないわね」
「そうか。あ、そうだ結城、当分僕の家には来るな。今、滅茶苦茶散らかってるから。絶対にダメだぞ」
「そう言えば、最近行ってないわね。なんでかしら。というか、そんなこと言われたら逆に行きたくなるに決まってるじゃない」
「いや、だめ。マジでダメ。あと絶対に時南先輩に近づいちゃダメだから」
「それはなんでよ」
僕は頭の中でいい言い訳を考えた。
「ほら、あの人三年だろ?受験頑張るらしいぞ」
「いや、先輩、専門って言ってたけど」
「せ、専門だって難しいんだよ!」
「まぁ、そうだけど…」
「兎に角、絶対に先輩に関わっちゃダメだからな」
「何でそんなに先輩のこと知ってるの?ストーカー?」
唇とんがらせて捲し立てるように言ってきた。
「は?いやいや、何言ってるんだよ」
「時南先輩のこと、好きなんでしょ」
「は!?お前な、そういうことを異性が言うな。何答えてもダメだし、緊張するから」
結城の目がぱっちり開いた。
「ふーん。異性、異性ね」
「異性だろ」
「あっそ。もうこの話おしまい」
「なんだよ、そっちから吹っ掛けたくせに」
「じゃあまだ続けたいの??」
僕は首を横に振る。
ここでこの夜は終わった。
裏で何が起きているとも知らずに。
=====2026年6月12日2時00分======
八木山橋にて、
八木山橋の真下の暗闇、そこには泣き叫び続けるゾンビのような、操り人形のような、人間のような何かがうじゃうじゃいた。外傷が何一つないというのがまた、気味が悪い。
いやしかし、何かは泣き叫び続けたせいか、目玉が出目金のように飛び出ている。
よく見れば喉から血が出ている。
中には小学生もいるものだからびっくりだ。
そんな暗闇の中、コツコツと音を立て誰かがやってきた。
「はーい。静かにー」
ぬっと闇からピエロが嬉々とした表情、声を出して現れた。
そのピエロの周りの雰囲気だけまるでパーティだ。
人差し指を唇の前に立てる。
それでも、何かはギャーギャー叫んでいる。
ピエロは警察が持っていたであろう銃を何発も適当にぶっ放した。
無論、何人か死ぬ。
さっきまであんなにうるさかった人間がパタリとした。
その様を見た何かもまた静かになった。
全員死んでしまったのか?そう思えるほどの静寂の中、
「あれ、叫ばれるのは嫌ですけど、賑やかしは大歓迎ですよ?」
とピエロが言った。
すると何かは華やかに笑った。
「お利口さんですね」
そうピエロが言えば、ピエロは笛を吹いた。
男の何かが笑いながら、涙を流しながら、不気味な歩き方で踊り出した。左薬指には指輪が付いていた。
次に女の何かが同じようにテクテクと踊り出した。
次に子供、老人、白痴、誰も彼もが踊り出した。
そうして番った。
誰彼構わず、番った。交尾だ。
すれば次第に女側の腹がありえない速度で膨らんだ。
お餅のようだ。
ばん!と爆発したかと思えば三歳児くらいの子供が3人産まれた。
その子たちは見る見る成長したいく。代わりといってはなんだが、産んだ女は急激に老けていった。
そして、役目を終えたと言わんばかりにピエロの男が近づきまして、笛を吹いた。女は目玉をぼろんとおっこどし、失禁しながら、泡を吹いて死んだ。
発狂もしていたような気がするが、周りも常に発狂しているので変わらない。
産んだ女の魂はピエロに喰われた。
ピエロは次いで産まれてきた3人のうち2人を食べた。
残った1人、三歳児程だったのに気づけば十歳程になっていた。
産まれてくる人間は全て極度の白痴だった。
幸いだったかもしれない。
何も分からないまま、苦しみながら孕んで死ねるのだか。
何か分かってしまうほどの知能を持っていたら、それは地獄以外のなんでしょう。
「ショータイムです」
ピエロが指を鳴らすとクラッカーのようなものが爆ぜ、また大量の何かが現れた。
男たちの顔は苦悶から喪失へ。
現れた何かの正体は男たちの母や父や実の子だった。
「これは私の完全な趣味です。さ!賑やかになって下さい!静かですよ〜!」
1人、狂って叫んだ。
「汚い叫びですぅ」
頭を撃ち抜いた。
その時、男たちは思った。今、叫んで撃ち殺されれば家族は無事なのではないか。もし、無事じゃなくとも自分の手で殺すことはないと。
男たちは叫べなかった。
勿論、何人かは叫んだ。その度殺された。
いやしかしなかなか自分から死に踏み切れるものはおらず、男たちの予想通り、その手で家族を殺した。
噛みついて殺した。そして食べた。
すると、尽きたはずの精力が回復していくのが分かった。そしてまた、セックスの強要。白痴の出産。
家族ご飯。この繰り返し。
ありとあらゆる体液を出し、血みどろになった男たちは気づいてしまった。
自分は助かると安堵していることに。
自分が下卑た笑みを浮かべていることに。
数時間が経った。
殆どが食い荒らされ血や骨が散らかってる。
途中、男たちは分かってか分からずか共食いし始めたので残りの男たちはたったの三人となっていた。
「逃げていいですよ」
朝焼けが近づいている中、ピエロがそう言った。
闇が晴れたのかと思った。
「ただ、1人は死んでもらいます。今ここに爆弾が三つ、その中に一つだけ本当に爆発するものがあります。さあ、選んでください」
「陳腐だな」
「予算がなくて」
ピエロは子供に優しくするように微笑んだ。
男はそれぞれ違う爆弾を持った。
自分のこそが偽だと信じて。
一斉にピエロから逃げた。駆け出した。
忽ち1人が爆発した。未だ逃げ続ける2人の内、1人がそれを見て、万歳。
その瞬間、ドカンと爆発した。
ピエロのいやらしいところで、簡単には死なない程度の爆弾を用意している。
さっきの万歳とは打って変わって死なせてくれの一点張り。
もう1人の男は未だ律儀に爆弾を抱えながら走って逃げている。
ピエロはゲラゲラ笑いながらスイッチを押した。
するとドカン!とはならなかった。
ピエロは笑いながら舌打ち。
拳銃を徐に取り出しど頭を撃ち抜いた。
そこで全ての命が消えた。
ピエロは静かだった。何か暗いことを考えていそうだった。
人生とか死とか人を殺すこととか。
「考えすぎてイかれてしまってもう何も分からないんです」
そう1人、血みどろのこの部屋の中でごちった。
ピエロの魔力は積もっていく。
=====2026年6月13日8時15分=====
僕はいつも通り学校に登校した。
時南先輩がいるかもしれないし、いつどこで結城が狙われるか分からない。
つまりかえって学校が一番動きやすく安全だと思ったのだ。
「おはよう、結城」
「おはよ!」
よかった、いつも通りだ。
こんな日々がずっと永遠に続けばいいと思った。
「昨日はその、急に抱きついたりして悪かったな。
忘れてくれ。
まあ、そんなことはよくて、いいか、昨日も言ったが絶対に時南先輩に会うなよ。わかったか?」
「なんなのよそれ。まぁ、廻の頼み事なんて滅多に聞かないからそれ相応の理由があるんでしょうけど」
この学校は比較的校則が緩く、ピアスや髪染めが許されている。
そのため、所謂ヤリラだとかギャルなんかはもうバチバチだ。
結城も例に漏れず、桃色の飾りがついたピアスを付けている。妙にそれに目がいく。
その飾りをひらりと靡かせて結城は僕に背を向けた。
「じゃあ、もうチャイム鳴るから」
「——————なぁ、そのピアス———」
「これ?いいでしょ。可愛い?」
「———うん。可愛い」
「ありがと!」
なんだか魂が聞いてはいけないと諭しているようだった。
席に付き、ショートホームルームが終わると、
「なぁ、昨日の試合見たか!?」
クラス1のちゃらんぽらん、田中が話しかけてきた。
いや、話しかけてきたというより、この話題に乗っかれるクラスの全員に向けて言った。
それが丁度、僕と近い距離だっただけだ。
「試合ってなんの?」
「何のってそりゃあMMAよ」
「あぁ、あの…。なんだっけ、トゥルスノフだっけ。また負けたんだろ?」
「おぉ、よく知ってんじゃねえか。そうなんだよ。出てきた時は怒涛の10連勝、しかも全部K.Oで、とんでもねえやつが現れたなって感じだったのに…。
もう落ちたな。一体何があったんだろうな」
「なーんか元気ないもんな」
そう言うのは別の陽キャ。そこからは群がるように続々と陽キャたちがやってきた。
別に僕は陽キャというわけではないが陰キャというわけでもなく、どっちの属性とも分け隔てなく話せるタイプだ。
そのため、大して困ることもなく話に溶け込んだ。
ドアがガラガラと開く。それと同時に鐘が鳴った。
「授業だ。座れ」
眼鏡で陰気で真面目な男、通称童貞先生が現れた。
なんで童貞と呼ばれているのかは分からない。
逆に僕はこの固いくらいの真面目さが好きだ。
しかし、ある一部の層は童貞先生が教室に入ってきただけで聞こえるように舌打ち。
まったく、経験者はそんなに偉いんでござんすかねぇ。
昼休み、僕は毎日購買へ行く。
今日は何の弁当は何かと胸躍らせて廊下に出た。
すると、
「こんにちは」
「時南先輩、今日は眼鏡なんですね」
「えぇ、似合ってます?」
「とても可愛いです」
「ありがとう」
「それで、何のようですか」
「一緒に昼ごはんを食べませんか?」
「頭おかしいんですか」
「安心して、学校では何もしないよ」
「そうですか。僕は何かするかもしれないですよ」
すると先輩は身を捩らせ、自分で自分の体を弄った。
「脅しかしら。…痛いのはいやよ」
やけに色っぽくて視線を向けてしまう。
「先輩、首、怪我したんですか」
先輩は顔を真っ赤に染めて俯いた。
「ちょっと虫に刺されて」
「そうなんすか」
「それで!昼ごはんどうするの!?」
「行きますよ」
僕が昼ごはんを共にすると決めたのには理由がある。
「先輩、僕と協定を組みませんか。
みんな平然としてるけど、数日前のあの大量殺戮。
したのはランサーですよね?
でも元凶じゃないのは知ってます。
…あのピエロを倒しませんか」
「…」
「ただの、無関係な一般人が死ぬんですよ!?関係させられてる僕ですら納得できていないのに、あんまりだ」
「…うん。分かった。けれど、あのピエロを倒すまでだからね」
「!ありがとうございます!」
そう言って先輩は去ってしまった。
何か伝えたいことがあったのではないか。
「私はマスターを尊敬するぞ。
一度自分を殺しにきた奴と、顔も知らない無辜の民を救うために手を組むなんて、なかなかできることではない」
何もないところから脳に話してきた。
「ありがとう」
と言ったと同時、先輩がこちらに走ってきた。
「伝え忘れてた。この学校、何やら結界が張られてる。気をつけて!
ピエロがやってきたりしてね」
「やめて下さい。縁起でもない」
僕は真剣に怒った。
先輩は悪怯れもせず、くすっと笑って去っていった。
「セイバー、結界だって」
「うーむ。そうだなぁ、この学校、もう1人マスターがいるぞ」
=====2026年6月13日3時35分=====
有間の通う南高校にて、一騎のサーヴァントが出現。
阿部直治、伊藤園、江頭真夏、織田真帆、尾羽海、及川喜一、加藤田一、加藤南、加藤純二、菊池健二郎、斉藤勇気、里見斗真、時南咲楽、高畑直子、津田雄也、中原陸都、庭田晴喜、根本真央、蜂須蓮二、本田昌也、本田浩平、丸時貞、三浦柚乃、三浦育也、村瀬直樹、村川城、百田愛香、山田真里、山田一郎、吉田翔、渡辺譲治、渡辺公子
以上32名死亡。
後、1人蘇生。1人死亡。
死体は未だ見つかっていない。




