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転生に対抗して

※苦情は受け付けません

地響きがする――と思って戴きたい。

どっどっどっどっと絶え間なく地を、木々を、空気を震わせ、それは確実に前進していた。

それ、と言うのはつまり、いわゆるモンスターの一団……

――いや、それとも。

孤高にして、最強にして、優美、可憐、才能、絶対的カリスマ、家柄、ウエストポーチ……そういった諸々を兼ね備えたヴィンシュゴート国中央都市メルーの第七騎士団隊長のウィ・ロ・ヘレナは考える。

そしてそのモンスターの一団に臆すること無く突っ込む一人の男性を見やる。

目は戦意に煮えたぎりギラギラと燃えている。まさか、勝てる人数でもあるまいに。

若くはない。むしろそこそこの歳だ。だが身体つきはしっかりとしている。しかし何よりもその男を特徴づけているのが――


その男は全裸だった。




何に対抗しようとしたのかは覚えていない。

昨今の流行りで言うとゲスの極みとか不倫育休議員とか重力波である。

まあ、そんなことはもうどうでも良かった。

全裸中年男性は、とにかく、いつもどおりのオチとして

――トラックに轢かれた。

だいたいの相手、国家権力とか面倒くさそうな政治集団ならば全裸でハッテンを仕掛けて勝利することもままあるのだが、しかしトラックである。

――トラックには勝てない。

当たり前の話であるが、これはちょっとじゃんけんの相性見たく基本的に覆らない、世の摂理みたいなものなのだ。

「ふぎゃ」

そんな悲鳴にならない悲鳴が遺言だった。

次に目を覚ますとなんだかやたら広い空間にいた。どこまでも白い空間が続いている。

「なんじゃここは!?だ、誰もいない!?ハッテンができない!?ありえない!YO!」

思わず意味不明なリリックを刻むレベルでの出来事だった。しかもあまり出来はよくない。

呆然とする全裸の中年男性の前に、白い光が現れる。それは次第に形を作り、一人の女性が目の前に出現する。布のような服を身にまとった、美しい女性だった。

「なぜ、女なんだ」

「はい?」

女ではハッテンできないのである!

全裸中年男性は自分の置かれた状況よりもハッテンのことしか考えていない、そういう刹那的な行き方をしてきた。

女性は一旦戸惑った素振りを見せたが、次の瞬間深々と頭を垂れた。

「大変申し訳ございません。こちらの手違いで貴方の運命が狂ってしまったのです」

「何?」

「本来貴方はあそこでトラックに轢かれて死ぬ運命ではなかったのです」

「うっそだろお前」

だいたいいっつもトラックに轢かれていたので全く疑問を挟む余地はなかったのだが、そういえばトラックが姿を出すだけのオチもあったしいっつも死んでるわけでもないのだろうか。

女性は自分を女神と名乗った。男神はいないのかと聞いたがクレーム対処とトラブル処理は女性受けのほうが(基本的に)いいらしいので女神が来たらしい。

女神の話を要約すると、何かしら運命の手違いで全裸中年男性は死んでしまった。その救済措置として別の世界に送り出すことが出来る、というものであった。

「元の世界でハッテンしたいのう……」

「は、ハッテン?」

「うむ。ハッテンじゃ」

「そ、それはなにか知りませんが元の世界では貴方は死んでいますので、つじつまが合わなくなってしまいます。それは不可能なのです」

「そ、それは困るのう!ハッテンできない人生に意味など……」

「あ、あの!ですから別の世界へ移すことは出来るのです!お望みなら何か能力も……」

「別の世界?どんな奴がいる世界だ?」

中年男性の目が異常に鋭くなる。そしてある予感が駆け巡る。

「えーっとその、騎士とか王国とか魔法とかモンスターとか……」

「も、モンスターじゃとーっ!?」

全裸中年男性は食いついた。そう。モンスター。モンスターとくればやはり……

「え?あ、はい!モンスターです。スライムとかゴブリンとか、あとオークとかドラゴンとか……」

「ご、ゴブリンにオークっ!?やはりこうガチムチ……いやそれなりに鍛え上げられた肉体なのか?」

「まあ強いモンスター系統の種族は鍛えているのも……なんでそんなことを?」

普通の転生者は自分の強さとかカワイイ女のこととかそういうことを気にするものだが。

女神は生理的な悪寒を感じつつ、その正体に気付くことはなかった。あまりに純粋、いい子ちゃん過ぎたのだ。

「そこじゃ!そこに行きたいんじゃ!そこしかない!はよわしを送れ!」

「え?え?え?能力とかそういう」

怒涛の要求を始める全裸中年男性。その下にある欲望に気圧される女神。

「話ができれば十分!いや最終的には肉体で語り合うからそれすらも……」

「と、とにかく送りますね……」

なんか不穏な言葉が聞こえたような気もしたが、気のせいである。

女神は、本当にいいのかなあ、とつぶやきながらも何事か呪文を唱えはじめた。青白い光が全裸の中年男性を包み込む。

「異世界転生に対抗して……イカせ界チン生!わしのチンポは、まだ死なーんっ!」

かくして現世最強最悪生物が、異世界へと放たれたのであった。

前後編にしたいんですけどね。

一発ネタの予定だったのに。

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