ローマ軍団兵はなぜ剣兵なのか
こちらにまとめて載せます。
表題についてのエッセイです。
ローマ兵はご存じの通り、剣をメイン武器として戦っています。
しかし古今東西の軍隊で、"剣を主武器とした密集歩兵"と言うのはかなり珍しい存在でもあります。
多くの場合、近接歩兵は槍を装備しています。槍は"武器の女王"と言われるくらいにポピュラーな武器です。
有名どころではギリシャのファランクスやスイス傭兵、戦国時代の足軽槍兵なんかでしょうか。
槍がよく用いられるのは何と言ってもリーチが大きい。
まず敵と距離を保てるというのは兵士にとって身体的にも精神的にも有益です。殆どの兵士は敵と殺しあいを続けられるような胆力は持ち合わせません。
またより長い攻撃範囲というのは近接戦闘においては極めて重要です。剣道三倍段とか言われる事がありますが、それと同じ理屈です。
コストと言う面でも槍は強力です。棒の先に尖ったモノがあれば用をなすのですから。全体を金属で作り上げなければならない剣より製造は容易でしょう。
後はその構造から集団戦法に向いていると言う点もあるでしょう。剣なら振り回すスペースが必要ですが、槍なら突きだす場所さえあれば何とかなります。
そうなるとローマ軍が剣を採用した理由が分からなくなってきますが、槍よりも剣が優れている点もあります。
それは携帯性の良さです。槍はリーチを保てる分、長く嵩張ります。長いものでは五メートル以上の代物もあるくらいです。それは利点でもありまた取り回しの良さと言う意味では欠点となります。対して剣は長くて1~1メートル半程度で、ローマ軍のグラディウスはもっと短い。その取り回しの良さはひいては機動力の向上にも繋がります。
古代ギリシャにはローマ軍団兵に比較的近い装備の兵がいます。彼らはスレオフォロイと呼ばれ、大盾・投槍・槍を装備しています。ホプリタイのファランクスよりも高い機動性を特徴として遊撃戦を行いますが、一方で戦列を組んでの正面戦闘にもある程度耐えることが出来、"重装軽歩兵"とも言うべき兵種でした。
この"戦列も作れる軽歩兵"というのがキーになってくると考えます。
さて機動力という話をしましたが、ここでローマ軍団の戦法が絡んできます。
ローマ軍団は、こんなエッセイを読んでいる諸兄らには釈迦に説法だと思うので詳細の説明は省きますが、マニプルス戦術に代表されるように機動性が特徴的です。戦術的な足の速さではなく、百人隊長達の下での組織や運用面での機動性です。
反面、防御力・突破力には例えばファランクスにはやや劣る編成です。マグネシアの戦いではシリア軍のカタフラクトに正面から戦列を突破されています。勝利は持久戦で粘り勝つ事が多く、ガリア人など統率や組織力に欠ける蛮族との戦いでは顕著です。
頻繁に戦列を組み換えて疲労の蓄積を防ぐなど部隊としての取り回しの良さを重視した編成・戦法だったと考えます。
そしてその戦い方では"密集歩兵"よりも機動性に富む"軽歩兵"、かつ戦列を作って戦える程度の"重装軽歩兵"が適任であると言えるでしょう。
別に槍でも用をなすとは思いますが、ローマ軍は剣の携帯性をより重く見たのでしょう。
典型的なローマ軍団編成はアリア河畔の戦いでファランクスがガリア人に破られてい以降だと言われています。ガリア人の突撃戦法に対応するためにも剣を採用したと考えられますが、そこの部分の考察はしていません。
まとめると
・組織的、運用的な機動性を重視した。
・その為に"重装軽歩兵"とも言うべき兵種を選択した。
・携帯性を上げ、機動性を向上させるために剣を採用した。
になります。
といってもただの空論エッセイに過ぎないので、もし詳細に考察されている論文がありましたら教えて下さい。




