エピローグ
数週間後。
夕暮れの門を、大勢の旅人が行き交っていた。
リナはその列に混じり、初めて見る街へ入った。
以前暮らしていた街よりも大きい。
立派な商店や宿が並ぶ一方で、路地の奥には崩れかけた建物が密集している。
学園の制服はもう着ていない。
旅の途中で買った簡素な服に、杖も布で包んで背負っている。
隣には、大きくなった悪魔が歩いていた。
通行人は誰もその姿を気に留めない。
「残り、どのくらい?」
「使用可能な寿命は、わずかだ」
「ゼロではないんだよね?」
「残っている」
「ならいいか」
契約で得た魔力は、まだ十分にある。
強くなった身体も、魔力を扱う感覚も失われていない。
けれど、使えば魔力は減る。
寿命の残高も、以前とは比べものにならないほど少ない。
また増やす必要があった。
通りの脇で、二人の商人が話している。
「南区は避けろ。昨夜も店が襲われたらしい」
「またか。警備隊は何をしてるんだ」
「組織が多すぎるんだよ。盗賊上がりまで流れ込んでる」
リナは足を止めた。
南区の方角を見る。
荒れた屋根の向こうで、黒い煙が細く上がっていた。
「ここ、犯罪者が多そうだね」
「そうだな」
「じゃあ、大丈夫か」
学費を払う必要は、もうない。
学園の成績を気にする必要もない。
それでも、力はいくらあっても困らない。
困っている人を助ければいい。
悪い人には、その分を払ってもらえばいい。
今までと同じだ。
リナは南区へ向かって歩き出した。
「また貯めないとね」
本作はここで完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
続編は未定です。




