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異端兄妹は日常に戻りたい  作者: 幽猫
second chapter アビリティ・ウォー

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20章 顔合わせ

 ミッションやらプロフィールやらをいじっていた梶樹はひとしきりして繭愛が目覚めると、次第に人が減っていく会場に梶樹は違和感を覚えた。どこに向かっているのだろうと辺りを見回すと、ホール会場につけられたドアに人が入っていくのを見つけた。


 「そういやチームの集合場所っていわれてないな……別々に集まるのか?」


 まだ眠そうに目を擦る繭愛の手を引いて、ひとまずは人が入っていくドアの前に行ってみることした。

……のはよかったのだが、これがどうにも開かない。鍵がかけられているのか、建て付けが悪いのか、どうやってもうんともすんともいわなかった。


 「くっそ……どうすりゃいいんだ、これ。ここから入っていったのは見えたんだけどな……」


 なんだか言語が通じない動物を相手にしているようで、らちがあかない。もう一度ドアノブを弄ってみようかと梶樹が立ち上がったとき、繭愛が横からすっ、とスマホをかざした。


 「多分、このカメラ、じゃないかな……ほら、おにぃ。ここみて」


 差し出されたスマホを見てみると、何故か目の前のドアとは似ても似つかない煌びやかな景色が映っていた。壊れてじったのかとも思うところだが、上の方にKの文字が表示されているのを見ると確かに正解なような気がする。


 「……あぁ、なるほどな。こういう機能、なんかテーマパークとかで使ったことあるな……多分、これを映したままドアを開けってことじゃないか?」


 急いで自分のスマホを起動させると、アプリ内のホームにある"異次元カメラ"というのがすぐに目に止まった。それをタップすると、確かに繭愛のスマホと同じ画面が出てきた。


 「……開けるよ?おにぃ」


 繭愛もスマホを手にしたまま、ドアノブに手をかける。これが正攻法なら同じ部屋に出るはずだ。


 「あぁ。開けるぞ」


 せーの。息を合わせ、ドアノブを回して閉ざされたそれを解放する。さっきとはうって変わってあっさりと開いた。どうやらこれが正しい入札法だったらしい。


 同じドアをくぐることができた二人が見たものはーー。またしても、ちゃぶ台が置かれた和室だった。しかも、先程とは違って先客つき。


 「お、やっと来たね。ここに来たってことはあんたたちもKチームってことかな?」


 その先客はーー、赤紫の髪をツーサイドテールでまとめた少女。太ももをぴっちり覆うニーハイソックスにホットパンツという軽装。いかにもギャルっぽい印象の女の子だった。


 「そうだが……そっちも、なのか?」


 「そうそう。アタシ、一番に来ちゃったらしくてさ。誰も来ないから部屋間違えたかと思っちったよ。……はぁ〜、良かった」


 ほへー、と息をつく少女になんだがこっちまで緊張の後が緩んでいくような気がした。まぁ、最初から敵対されない分だけまだいい方だろう。


 梶樹と繭愛はちゃぶ台の周りから右に沿って座った。繭愛を少女の隣に座らせるのは少し気が引けたが、あまり細かいことは気にしない性なのだろうかしゃっしゃとスマホを弄っている。


 二人が席に着いたとき、また誰かが入ってきた。音を立てて開かれるドア、そこから入ってきた人物はまさかの見知った顔だった。


 「って……十束!?お前もこのチームだったのか!?」


 「あ?……あぁ、さっきの。…….って妹の方までいんのか。よく分けられなかったな、お前ら」


 入ってきたのは先程、繭愛を助けてくれた十束覚羅だった。学ランがこれほど似合うやつはそうそういないだろうと梶樹は内心そう思った。それと同時に、チームのメンバーに覚羅が入ってきたのを歓迎した。


 少なくとも、覚羅は漢としての誇りを持っている。まだ完全に信頼したわけでもないが、初対面の男よりはまだ繭愛も打ち解けてくれるだろう。


 「わーぁ、番長さん?めっちゃ目つき悪いし、キャラハマりすごすぎでしょ」


 こちら初対面の少女は思いきり笑い転げている。……やはりこういうノリは精神にくる。まだ明るく喋ってくれるだけマシと梶樹は心の底で無理矢理肯定した。


 「あぁ?舐めてんじゃねえぞコラ。俺はな、お前みたいなチャラチャラしたやつが大っ嫌いなんだよ……!」


 危うく拳を出そうとする覚羅の前に、繭愛が立ち塞がった。


 「お兄さん、抑えて。これからは、チームなんでしょ?それは、わたしも。だから……許してあげて」


 ぴたりと停止する覚羅。一瞬、何かつぶやいたような気がしたがすぐにどかっ、とちゃぶ台の前に腰を下ろした。


 「……お兄さんはやめろっていっただろが。それに、俺は十七だぞ。そんなにトシは違わないだろ」


 それに一番驚いたのは、梶樹だった。


 「十七!?十束、お前同い年だったのか……もっと上かと思ってた」


 「なんだ、タメだったのかお前。……あー、そういや、名前聞いてなかったな」


 「それじゃ、チームは四人ってアプリにあったから改めて自己紹介したほうがよくない?」


 まだ名前を知らない少女がそう提案した。確かに、時間は余っているのだから悪くはない申し出ではある。僅かな間が流れたが、結局は暗黙の了承ということになった。


 「んじゃ、言い出しっぺのアタシから。アタシは新珠魅緒(あらたまみお)っていうんだー。先にいっとくと十九歳」


 なんと。今どき女子高生なのかと思っていたがまさかの最年長というカミングアウト。みてくれからしても実年齢以上に幼く感じる。


 「そっちのは知ってると思うが、俺は十束覚羅。トシはさっきいった通り十七だ」


 ちらと梶樹と繭愛を一瞥してから、覚羅はさらっと自己紹介を流した。性格なのだろう、スパっとした方が好みなのかもしれない。


 「俺は梶樹。水影梶樹。十七歳で高校生、多分そこは十束と同じだろ。それで、こっちが……」


 「天聖……繭愛。わたしは、十四歳です……」


 二人の紹介に覚羅が眉をひそめた。少しだが眉間に皺寄せが生じている。


 「なんだ、お前ら苗字違うのか。仲良さげだから兄妹だって思ったんだがな」


 「……色々あって、な。実質は家族みたいなもんだよ」


 ふーん、と覚羅はまじまじと二人の顔を交互に見合わせた。その視線がぶつかる度に背筋が凍る。それくらいには鋭い眼光だった。


 「んじゃ質問だけどぉ、あみゅたんはお兄さんのことどう思ってるのー?」


 「あみゅたん……?」


 突然の謎ワードに困惑する梶樹。対象は間違いなく繭愛だろうが元が全く分からなくなっている。


 「天聖繭愛ってゆんでしょ?頭文字とっただけー。あみゅたんすっごいかわかわじゃんか、そこんとこはどうなん?」


 イメージ通りぐいぐい押してくる魅緒。鋭い視線の覚羅とは違って興味津々、といったキラキラ具合がはっきり見て取れる。


 案の定、繭愛は返答に困り頭を悩ませた。


 「わたし……わたしは、おにぃを……大事な家族、だと思ってます」


 最後の方がぼやけてはいるがなんとか答えを絞り出した繭愛はぷしゅううう、と白い頬を赤くした。……なんだかその反応に梶樹も内心、気持ちが緩んでしまう。

 いつもならあまり聞かないことだからかそんなたわいのない会話でも新鮮味がある。


 同時に既に前のめりになっていた魅緒が獲物を見つけたサメのような勢いで食いついた。


 「え、待ってなにその反応!あみゅたん超初心っ娘じゃん……尊い、尊いわぁ……いいよ、魅緒姉さんがきっちりイロハを教えたげるからーー


 「おいコラァ!いい加減にしとけや。他人弄って楽しんでんじゃねぇ」


 「えー、硬いな団長さんは。いいじゃんか、ちょっとくらい楽しんでも。これからアタシたちはチームなわけだし」


 これに、覚羅は頭を抱えた。それから帽子を被り直すと、大きなため息を吐いた。


 「……ダメだ。やっぱ俺はお前のことが嫌いらしい。特に調子乗った軟弱野郎にはなぁ……!」


 いきなりの暴発しそうな空気に、梶樹は固唾を飲む。人同士の相性というのはそれなりにあるのだが、もしかするとわざと相性悪い組み合わせにしているのかもしれない。


 一触即発もかくやという空気の中で、全員のスマホから受信を告げる着信音が鳴り渡った。

 


 


 

 


 

 

 

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