14.
ブレーキをかける間もなく、タカシのバイクは進路を遮った車の前方右横に激突した。
ボンという爆発のような衝撃音が夜道に響き渡る。
タカシもニーナも衝突の弾みで車のボンネットを越えて宙を飛び、放物線を描いてアスファルトに叩きつけられ、丸太のように転がった。
一方の車はそのまま停止。中から若い運転手が転がるように飛び出して逃走した。実は、盗難車だったのだ。
不思議と車の往来が途絶えた。事故の現場を、冷たい風が撫でていく。
ようやく、野次馬が三人、眠そうな目をこすりながら集まってきた。二人がタカシの方へ、一人がニーナの方へ向かう。
「こりゃ、ひでぇ……」「かなりヤバいぜ……」
タカシを見下ろした男二人が絶句する。
「こっちは、血は出てねぇ……って、アンドロイドかよ」
ニーナの横にしゃがんだ男が、腕を指でツンツンと突く。
「何、野郎が女のアンドロイドと二人乗りで事故ったって?」「へへへ、夜中に何やってんだか」「まったくだぜ」
男たちが顔を見合わせ、緊急事態だというのに、非常識にもせせら笑う。
と、その時、ニーナが上半身をゆっくりと起こした。
「近寄らないで!」
彼女の一喝に、しゃがんでいた男が「ヒイッ!」と叫んで腰を抜かした。
「離れて!」
その迫力に気圧された男たちは舌打ちをし、後ずさりする。
「怖えぇ、怖えぇ」「アンドロイドのくせにクソ生意気な」「心配してやってんのによぉ」
口々につぶやく三人を順繰りと睨み付けたニーナは、彼らがある程度の距離を取ったところで、タカシの方へ顔を向けた。




