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3.ふと帰省してみれば ~奏人side~

今年の夏はバイトも入っていたし帰る予定はなかった。


だけど彼女とも夏休み直前に別れ予定が空き、バイトの日を増やそうとしたら実家から離れて暮らしている事を知ったバイト先の店長が休みをやるから家に顔だして来いと言われて仕方なく夏終盤に帰ることになった。


実家から離れてると言っても電車で一時間半ほどで着くのに。まあそっから一時間に二本くらいしかないバスだが。


ふと家に帰る前に腐れ縁の音葉の家に挨拶だけしようと立ち寄る事にした。インターホンを鳴らせば落ち着きのない足音の後に玄関の扉が勢いよく開いた。


これを予想してドアから距離をとっておいた俺は流石だ。


「よっ!」

「…よっ」


この軽い挨拶といい、Tシャツ短パンに結んだ髪がほつれたままの姿。おそらくソファーの上で転がっていたんだろう。全く取り繕う様子のない音葉を見て地元に帰ってきたんだなと思った。



そして、何故か高級アイスをおとに食わされ、ついでに新しいソフトを見つけたので遠慮なくお借りする。これ、丁度やってみたかったんだよな。ナイスタイミング。


そう。ここまではまだよかったんだ。


問題はその後だ。いつの間にか段々雲行きがおかしくなってきたのは。


「彼氏って、彼女っていると楽しいの? 皆、大半は欲しがるんだよ」


やたらちょっかいをだされ話しかけられる。集中できねぇ。あげくの果てに彼女はいるのかと聞かれ俺の心をえぐってくる。


おと、おまえ俺に恨みでもあるのか?


「わっ!バカっ危なっ」


今度は背中に抱きつかれ、こらえきれず倒れこんだ。おとを優先した俺は偉い。それより相談にのれと言われて聞かされた内容は体格差だの彼氏が優先だとか今、その歳でそれか?


しかも、この体勢。


俺の上におとがのっかっている。いやに静かになったおとをみれば、なにやら泣く寸前の顔をしていた。


なんなんだいったい。


しょうがないので昔みたく頭をなでてみた。なんか小さいな頭。そのくせ短パンから伸びている足は長い。


さっき抱きつかれた時も昔とは違う背にあたる感触。おとは、真面目な表情をして変わりたくないというが無理だろ。


いつまでも変わらない奴なんていやしない。

誰だって多少は変わるもんだ。


それにいつまでもこの状態は、流石のおれでも気まずい。こいつは単に自分の体重と勘違いしているし。学校でもこんな天然なのか? 大丈夫だろうか? ああ、そういえばおとは女子校だ。


……何、安心してんだ俺は。


でも、おとにもし男ができたら。いやしない見えない相手を想像しムカついてきた。腹に力を入れ半身を起き上がらせ、そのままおとを抱きしめた。


ヤバイ。抱き心地がすげーいい。しかもいい匂いまでさせている。なんだこれ?


おとのくせに。


そうだ。俺が彼氏になればいいんだ。あぁ! だけど金が。今のバイト先、夏休み以降もこないかって言われてるしなぁ。


しょうがねぇ。


おとが、音葉が誰かのものになるのを帰省する度に離れた場所から眺めてムカついているよりは、ずっといい。


「じゃあ、今から彼氏彼女な」


こいつは早い展開に弱い。案の定、流されまくっている。


「なぁ、川で遊ぼうぜ」


手加減とかブツブツ言っていたのを思いだし川で水遊びにする。それに久しぶりに俺も見に行きたくなった。あとは帰ったらゲームで良い感じじゃないか。


そうだ、念のため。


「あらためてよろしく音葉」

「…おぅ」


おとらしい返事をサンキュ。


ふと玄関でおとに手をだしてみた。嫌がるかと思ったら手が躊躇いながら伸びてきたので加減し握ってみた。


──こっちまで恥ずかしくなるような顔すんなよ。


とりあずあと3日はこっちにいられる。せっかくだし何処に行くか。まぁまずは川だ。


知り合いに見られんのも恥ずかしいが、それよりも何故か嬉しさが上をいった。






* 〜 * 〜 *



夏休みも終わり学校が始まってから数日後の夜。メールの着信音でおとからだと分かり勉強していた手をとめ携帯をひらく。


『土曜日ミキちゃんと先に約束していたの忘れてた! 申し訳!』


ダチ優先かよ。

たまにしか会えないのに。


苛立った俺は、返信は後にしようと携帯をベッドに放ろうとしたらまた音が鳴った。今度はなんだよ。


『土曜日夕方から会える? 三連休だからこっちで泊まれたら』


変な間が空いて…。


『そうしたら長く遊べるし嬉しい』


泊まるというのは、勿論実家にだろう。


『分かった』


なんか出だしから主導権を握られた感がする。


「ま、いっか。おとは、あんま深く考えてないんだよなーきっと」


しかも、そんなに嫌じゃないんだよな。


机の上の開いたままの問題集を見てため息が出た。とりあえずバイトもあるし宿題を終わらせるか。


こうして俺の夏休み明けは忙しいながらも確実に変化していった。





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