18/27
謎すぎるお客の行動の意味
深夜のコンビニでアルバイトをしていた頃の、少し謎なお客さんの話です。
私が勤めていた店舗には、往々にして深夜過ぎになると、必ず姿を現す年配の男性がいらっしゃいました。
その男性は店内に入ると真っ直ぐ文具コーナーへ向かい、毎回決まってメモ帳を一冊だけ選んでレジへ持ってきます。
そして、お釣りが出ないようにぴったりのお金を支払い、商品を受け取ります。
しかし男性は、そのメモ帳を開くこともポケットにしまうこともなく、レジ横にあるご意見箱へそのまま入れて、店を出て行ってしまうのです。
その行動がどうしても気になり、ある夜、思い切って声をかけてみました。
「あの、どうして使わないメモ帳を毎回買ってすぐに捨ててしまうのですか」
男性は静かにこちらを見ると、穏やかな笑顔でこう教えてくれました。
「夜中にここへ来て、何か一つ買い物をしたという実感が欲しいだけなんだよ。家に持ち帰ると物が増えて家族に心配されるからね。ここを出るときには手ぶらでいいんだよ」
そう言い残すと、男性は静かに夜の街へと歩き去っていきました。
言葉の真意や男性の詳しい暮らしは今でも分からないままですが、深夜のレジ越しに交わした短い会話だけが記憶に残っています。




