表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/42

Act.39 約束してくれる?


 ティアマト、すごく大きな、蛇と龍の間みたいな魔物。

 空中に浮いてて、とぐろを巻いて、頭にある2本の角で火花を散らして雷を落とす。

 もちろん攻撃もすごいって、しっぽ一振りで大きな岩も木っ端微塵。

「——ということなんです。依頼書に書かれている内容しかわからない状態です」

「とぐろを巻いた状態で約4メートル、伸ばせば15メートル程度と思われる、か」

「胴体直径2メートル前後。強力な雷魔法を持っている……めんどくせえー」

「他にも何か持っている可能性もあります。くれぐれも用心してください」

 出陣は明日、現在ギルドのラウンジで作戦会議中。

「ティアマトか……伝説でしか聞いたことがない魔物だ」

「まさか実在したとはねえ」

「つっても、ここまで来たらケツまくらねえんだろ、オッサンたち」

「オッサン言うな、小便小僧」

 みんな、あっという間に馴染んでしまった。

「おそらく長丁場になると思います。こっちの計算通りにはいかないでしょう」

『長丁場? 戦闘長引くの?』

『大きくて強くて雷魔法があるからね』

『補助魔法15回じゃ足りねえかな、魔力上がったし頑張りゃ30は出せるけど』

『そんなことしたら君が危ないよ。結界の外で魔力切れになったらどうするのさ』

『潔く散る』

『まだ子ども作ってないじゃないか!』

『う…………』

『それに時間が長くなったってフォワードがもたないよ』

 ほんとにケイは一か八かの勝負師だなあ。

 うちに来てから変わった?

 こんなに腹の据わった子だったかな?

 ロランと相性がいいのかな。来たばかりとは思えない。

「作戦はひとつしかありません」

 とても単純な作戦だ。

「僕は結界、ルイが重力魔法でティアマトを地面に固定します」

「化け物を固定なんてできるのか、ルイに」

 ロラン、涼しい顔。

「できないなんて言わせませんよ、僕のバディなんですから」

 ひとごとだと思って。

「ケイがみなさんに攻撃補助魔法をかけます」

「けっこう強いんだろう?」

「約5割増、持続時間はおよそ10分、15回まで使えます」

「5割マジか。すげえな、お前んとこの魔獣は」

「その2時間半の間に仕留められなかったら、僕たちの負けです」

「直径2メートルの首か……」

「要するに蛇の親分だろ? うろこ硬いんだろうな、俺二刀流で行くわ」

「そっか、俺も予備を持ってこ」

「一か所剥がれれば、そこから俺が槍を入れて急所を突く」

「それがベターだと思います」

 うまくいくといいな。

「イレギュラーはいろいろあるでしょうが、この基本戦術に沿っていきましょう」

「死んでも恨みっこなしだぞ」

「自分で首突っ込んだんだから当然っしょ」

「大丈夫大丈夫、労災入ってんだから死んでも嫁は怒らねえさ」

「はっはっは、確かにな!」

「ケントはそういう心配なくていいな」

「や、俺嫁いるっす」

「いつ結婚したんだい、君!」

「ここ来る前日」

「君って奴は! 奥さんが可哀想じゃないか!」

「いや、ティアマト潰してこねえと離婚だって」

「はぁ!?」

「逃げ帰ったら俺、命ないっすよ。倒すか戦死か二択」

「すげえ嫁だな」

「Bランクっす。喧嘩は嫁の方がめっちゃ強ぇ」

「結婚して1日で嫁のケツに敷かれてやがんの」

「人のこと言えるのかお前」

「自慢じゃねえが結婚前から敷かれてる」

 みんな陽気でよく笑う。

 作戦会議が終わって解散。

 家に帰ったらミリアがいた。

「どうしたんだいミリア? 学校帰り?」

 そしたらミリアは目を伏せて小さな声で言った。

「学校のみんなが、ロランが帰ってくるかどうか、賭けをしてる……」

「賭けなんて先生に知れたらみんな叱られるよ」

 ロラン、たぶん論点はそこじゃない。

 それくらい猫でもわかるよ。

「私、まだ魔術物理学を最初の方しか教えてもらってない……」

 今年入学したのに、中等部の勉強って……誰かさんみたい。

「大丈夫、ちゃんと続きを教えてあげるから」

「——本当にちゃんと教えてくれる?」

「もちろん」

「約束してくれる?」

「うん、約束するよ」

 ひと段落したところでクレアの声。

「ロラン、着替えて手を洗っていらっしゃい、お茶にしましょ」

「はい、今」

「ルイ、ケイ、あなたたちもおやつの時間」

 僕とケイはソファの横でおやつ。

 ロランはミリアとお茶。

 なんだか違うよね。

 今はSランク戦闘魔術師のロラン・ヴァルターシュタインじゃない。

 ロラン少年。優しい男の子。

 何だか可愛い。

『何か旦那、子どもみてえだな』

『ロランは小柄で童顔だからね』

 僕だけじゃなかった。ケイも同じ感想だった。

 ミリアが話す学校の話をロランは笑顔で聞いてる。

 一生懸命話してるミリア……怖いんだね。

 ロランが帰って来なかったらどうしようって。

 今は〝ものすごい魔術師だけど優しいお兄さん〟だろうけど。

 ゆっくりお茶を飲んで、ロランはミリアを家まで送る。

 僕とケイもお供。

「ロランはパーティリーダーだよって、お父さんが言ってた」

「今回は僕が集めたパーティだから、責任持たないと」

「待ってるから、帰って来てね」

「大丈夫だよ。観光地じゃないからお土産はないけど」

「お土産はいらない、魔術物理学の続きを教えて」

「君は勉強熱心だね。立派な魔術師になれるよ」

 ミリアを送り届けて、来た道を歩く。

『彼女が来て、よかったんじゃねえ?』

『うん、リラックスできたみたいだね』

『肩に力入ってたもんなー』

『敵は伝説級の魔物、16才の魔術師がパーティーリーダー、メンバーは5人と2匹。どれも前代未聞だから』

『その、前代未聞に俺様も参加するんだなっ! テンション爆アガるー!』

「何か楽しそうだね、君たち」

「楽しいのはケイ。すっごく気分高揚してる」

 ロランは笑顔をみせた。

 ミリアのおかげで出発前にいい時間を持てた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ