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Act.27 手探りの魔法結界


 ロラン・ヴァルターシュタイン13歳。

 飛び級した。7年生。

 もしもう1度飛び級したら卒業だ。

「体術の問題さえクリアできれば、勉強は問題ないんだ」

 眠る前、僕を抱えて言う。あっさりと。

「体術はどうやって克服するの?」

「テクニックでカバーしてる。力じゃ勝てない」

「本格的な魔術の実技もあるんだよね?」

「もちろん。やっぱり血縁なのかなあ、一番適性があるのは火魔法だ」

「マリスすごかったよね」

「お母様もすごいしね。補助魔法と風魔法は同じくらいかな」

「魔法結界は?」

「うーん……」

「そんなに難しいの?」

「そもそも適性持ってる人が少ない。適性があっても使えない人がほとんど」

「ロランは持ってるんでしょ?」

「あるのははっきりしてる。けど……」

「けど?」

「誰も教えてくれない。これが、使えない人が多い理由」

「教えてくれる人がいないの?」

「先生が使えないし、魔法結界持ってる人は大忙しなんだ」

「そんなに?」

「学生の指導どころじゃないよ、討伐依頼に追いつかない」

「少ないから?」

「そうだよ。魔法を持った高レベル魔物の討伐が順番待ちだって」

 僕は結界持ってるけど、この世界に来た時はもうあったから。

 全然ロランに教えてあげられない。

「魔法結界持ちは世界でも数えるほどしかいないんだ。絶対使いたい」

「大丈夫だよ、ロランは努力家で才能もあるんだから」

 横に寝返ったロランに急に抱き締められた。

「ああ、君の万能結界が羨ましいっ。本当に心から!」

 魔法結界病、重いな。

 ロランにとって人生初のの壁だ。

 朝、目を覚ましたロランに言った。

「朝の勉強は休んでも大丈夫?」

「え? うん、まあ問題ないけど……急にどうしたの」

「練習しよう、結界」

「どうやって?」

「簡単、僕が君に魔法を使う、それだけ」

「ダメ! 絶対ダメ! 魔獣が人間に向かって魔法なんか使ったら殺——」

「敷地の中なら誰にも気づかれないよ」

「——ダメ! はいこの話は終わり!」

 廃案になった。

「……でも、ありがとう、気にかけてくれて」

「何もしてあげられなくてごめんね」

「大丈夫、努力と根気だけで行けるところまで行く」

 ほんと、ロランは強いなあ。バディになれるなんて誇りだよ。

 朝、ロランについて学校に行って、そこから訓練所に行った。

 ララが走ってきた。

『旦那が魔法結界適性持ってるってマジか!?』

『え?』

『俺のバディが噂になってるって言ってたぞ』

『まあ……うん……資質があるから訓練中みたい』

『やべー! もうエリート街道のゴール見えてんじゃん!』

「こらララ、吠えちゃダメだぞ」

 指導が入った。

『学校に魔法結界使える先生がいなくて、訓練が自習になってるって』

『魔法使う大物討伐には絶対不可欠だぞ、数少なくて引く手あまただ』

『そう言ってた』

『普通の魔法も使えるんだろ?』

『うん、火魔法と風魔法と補助魔法』

『超エリートじゃんもう! 人生左団扇だぜ!』

「こら、吠えるなってララ」

 反省したふりして、地面に伏せてる。

『すげえなあ、ヴァルターシュタイン。もはや神じゃん』

『普通の子どもと普通の猫だよ』

『魔術師は攻撃と補助と結界使えて、魔獣は1匹でマックスグリズリーKO』

 これ、ずっとみんなに言われるんだろうな、グリズリー……。

『もうパーティなんかいらねえよ』

『ふたりきりだと危ないよ。大勢いても危ないけど』

『じゃ5人くらいでいいだろ、最小単位』

『そうだね……前にレイドやった時、連携がかなり難しかったし』

『さらっと言ったぞレイドとか。例のレッドバックだろ』

『そう。魔獣の連携はほんとに大変だよ、1頭殺されちゃった』

『人間は?』

『内部でレベル差がありすぎると辛い。治療に追われまくるよ』

『大変か?』

『上の人が下の人をかばってケガをして、その人を治してる間に下の人がケガをして、急いで上の人を治して——』

『完全に理解した。修羅場だな』

『安定したレベルの最少編成が一番効率的だよ』

『俺もそれ希望。大勢の魔獣とおつき合いも限界あるし』

 実際のところ、大人数のパーティでもグループ分けするし。

 要するにそういうこと。

 ひとりのリーダーが統率できるのは10人前後だって、マリスが言ってた。

『ところでララは? 現場に出ないの?』

『俺のバディは今、郊外の原っぱで薬草採ってる』

 ステラの薬草採りとは、たぶんレベル違うよね……。

『Fランクなんだよ。討伐云々のレベルちゃうわ』

『弱い魔物の討伐をすればすぐEランクに上がるのに』

『それが、すげえ臆病でさ、魔物獲りとかマジで無理』

 え? 戦闘科出だよね?

『何で医療や技術科に行かなかったの……』

『親父がそこそこ名のある戦闘屋』

 ああ、戦闘科行かないとまずいやつだ。

『こんなんじゃどこのパーティも入れてくんねえし』

 臆病な人は……うん……入れてもらえない。

 上の人が下の人をかばってケガ以下同文。

『まー平たく言うとバディガチャ外したわ』

 ガチャがわからないけど……失敗したって意味かな。

『まさか現場に出られねえとは思わなかった。完全に計算外』

 そんなふうに言うけど、ララだって本当はバディと一緒にいたいよね。

 お互い認め合ってバディになるんだから。

 でも、どこかで何かを……いくつか間違えたのは事実かも。

 悲しいな……。

 みんなと雑談したり、訓練したり。

 そして今日も校門横で待ってて。

 家に帰って作戦会議。

「先生に弱い風魔法使ってもらって、実践始めたんだけど」

「うまくいきそう?」

「やっぱり、普通に魔法を出す感覚とはまったく違うな」

「どんなふうに?」

「魔法を使う時はイメージだけど、たぶん結界はイメージじゃないんだ」

「違うんだ」

「そもそも何をイメージしたらいいか、わからないし」

「だから難しいんだね」

「かといって何もイメージするなっていうのは難しいし」

「今までの魔法の練習でイメージに慣れちゃったよね」

「そこなんだ。弱ったなあ、脳が煮詰まりそうだよ」

 僕だってイメージで魔法使ってる。

 確かに万能結界は勝手にあるものだから、イメージしたことないけど。

 イメージしない、つまり何も考えない。

 それって不可能なんじゃ。

 ロランは飲み物と、僕におやつを持って来て席に着いた。

「まずのところ、何もイメージしないっていうのは、どんな世界だろう?」

「うーん……無の世界だよね。そう、何もない世界」

「それは困難すぎる、ルイ」

「僕は2回経験してるよ」

「2回も?」

「最初は悪い奴らに捕まって、お腹を裂かれて首を切られた時。真っ黒な無」

「何て残酷なことを」

「2度目はフレイヤ様がこの家に送ってくださった時、真っ白な無」

「真っ白な無……」

「なんにもなかったんだ。意識も感覚も」

「無……」

 ロランはお茶を飲んで考えて、またお茶をひと口飲んだ。

「真っ白な無になれたら、何のイメージも浮かばない」

「でもそれだと防御力ゼロになっちゃうよ、結界使う時だけ」

「魔法結界を使う術者には専属の護衛がつくみたいだよ」

「……防御ができないってこと?」

「少なくとも自力での物理攻撃回避は難しいんだろうね」

「真っ白な無……意識してなかったから、やり方がわからない」

 真っ白な無……純白の——。

 ご降臨の時、確かにフレイヤ様は仰った、あなたとヴァルターシュタインを祝福しますって。

 ヴァルターシュタイン全体じゃなく、ロランを別にした。

 もしかしたら魔法結界の適性は、フレイヤ様の祝福……?

 ならやっぱり、鍵は〝白〟だ。

 ロランは笑顔で僕の頭をなでた。

「君のおかげでいろいろ見えてきた。あとはやってみるだけだ」

 いつも前向きだ、ロランは。

 君はきっと立派な魔術師になるよ。

 だからまだ、祝福かもしれないのは伏せておくね。

 責任感で今以上に頑張り過ぎちゃうと思うから。


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