断頭台
ブチッ!だよ。ヤバいよ…恐い。(自分で書いてて)
暗さに目が慣れてしまったせいか、外の光がとても眩しい。しばらく歩かされた先にあったのは、太陽の逆光を浴びてその存在感をより際立たせた断頭台だった。
「火炙りじゃなくて首を落とす方だったか」
そんな言葉が口をつく。てっきり長い時間苦しませるために火炙りを選択するだろうと予想していたため、少し意表をつかれたゲインだった。
しかし、そんな風に呑気なことを考えていたゲインにまるで冷水をかけるように、ある男の宣言が響いた。
「これより、元勇者パーティ所属、魔法剣士ゲインの処刑を開始する!」
叫んだのは国王だった。言い終わると、こちらを向いて口を動かした。
『登ってこい、愚かな罪人』
音は拾えなかったが、確実に国王はそう言った。この場ではその命令に従うほかない。
ゆっくり、一歩ずつ、断頭台へ続く階段を登っていく。そして、最後の一段を登りきったゲインは硬直した。
(こんなに大勢の人が俺の死に様を拝みに来たのかよ)
目の前には、王都に住まう国民のほぼ全員と言われれば信じてしまいそうなほどに大勢の人間で溢れかえっていた。見渡す限り人、人、人である。
「おい、止まるな。歩け罪人」
思わず足を止めていたゲインは後ろから押されて、また一歩断頭台へ近づく。そして、あとは台に自分の首を置いて刃を落とすだけ、というところで、集まっていた民からある物が浴びせられた。
「この裏切り者がぁ!」
バシッ!
浴びせられたのは、そんな罵倒と、小さな石だった。ゲインの頭から赤くて生暖かい、鉄のような匂いの液体が流れる。ゲインはまたも硬直した。
だが、それは一度では終わらなかった。
バシッ!バシッ!バシッ!
立て続けに石が投げられる。その度、ゲインは赤く染まっていく。
(なんで?なんで!?どうして!!?今まで誰よりも頑張ってきた俺が、どうして守ってきた民達にこんな事されなきゃいけないんだ………!!!)
ゲインは無言のまま、疑問と苛立ちを募らせていく。そして―――
[ブチッ!]
何が切れたような音がした。
「はははははっ!ははははははっ!!お前らって馬鹿だよなァ!?全ての真相を知りもしないで、うまいこと国王の言葉に踊らされてさァ!?お前らからしたら、俺は裏切ったにも関わらずあっさり捕まった阿呆に見えるかも知れねぇけどさァ!俺にはよっぽどお前らの方が馬鹿で阿呆で滑稽で、クズでゴミで塵芥にさえ劣る愚か者にしか見えねぇよッ!!!!!」
思ってもいないのに。
そんなこと、考えてなんていないのに。
勝手に、そんな言葉が、ゲインの口から発せられていた。
ゲインくんは壊れました。