おふざけもここまで?
セインが魔ヴァンパイアの男に無慈悲な追撃を考えていたちょっと前、ユリーナは黒霧の中でヴァンパイアと対峙していた。
バシュン!ドドンッ!!ズドンッ!!!
黒霧に囲われ、周りが見えない中でもユリーナはナノライトと魔法の撃ち合いをしていた。
ユリーナは『魔道の頂』という称号通り、スキルに記載されてはいないが、その卓越した魔法の能力で相手の魔力を読み取り、黒霧の中でも問題無く攻防を繰り広げていた。
一方、ナノライトは自身が作り出す黒霧の中での奇襲を元々得意としているヴァンパイアで、こちらもユリーナに負けじと応戦していた。
「ククククク!流石にやりますね?」
「そうね、貴方は想像通りだわ。」
ゴウッーー!!
ユリーナがナノライトがいる地点に火玉を飛ばす。
黒霧の中に消えていく火玉。
相手に当たった手応えは無かった。
先程からいくつかの交戦を繰り返したが、どれも手応えが無い。
「ひょっとして、こうして無駄撃ちさせて魔力切れを狙っておるのかしら?」
「まさか?貴方の魔力はそんな事では切れないでしょう?それくらいわかっていますよ?」
ズバッ!!!
ユリーナの背後から影が伸び、槍のようにして迫る。
ヒラリーーーーーーー
ユリーナは危なげなく回避行動をする。
「差し詰め貴方のヴァンパイアとしての固有能力はこの黒霧を自由自在に操れる結界かしら?外部との接触も難しそうね?」
「ククククク!!正解です!私はこの黒霧の中ではほぼ無敵ですよ?いつでも霧に同化できるし、霧を武器に攻撃も出来ますからね!」
「そう。厄介ね〜?」
ユリーナが相手の能力を冷静に分析すると、ナノライトは自慢げに答える。
ここまでで観察できた事をまとめると、
1:黒霧はナノライトの領域
2:黒霧の中では自由に動けるが、ナノライトは黒霧と同化出来るので攻撃は無効化されているらしい。
3:黒霧の全てがナノライトの武器となる。
4:黒霧の中から外部への接触は難しい。
という事である。
ここまでを冷静に観察し終えるとユリーナは溜息を吐き出す。
「はあ〜〜〜・・・それで?貴方はこの程度なのかしら?この程度の能力で私を倒せるとでも?」
「まさか!そこまで自惚れていませんよ?」
ユリーナの問いにナノライトは驚いたように答えた。
「そもそもこの能力で充分ならばもっと早く貴方を殺しに来てましたよ?ユリーナさんならばこの能力を破ることくらい分けないでしょう?」
「そうね、いくつか方法は浮かぶけど?」
「隠しても仕方ないので正直に言いますが、ユリーナさんの広範囲魔法でも撃たれれば黒霧ごと私を吹き飛ばせるでしょう?」
「分かっているならなぜ?」
「そうですね・・・貴方の息子さんのせいでしょうか?」
ピクッ!!
息子と言われてユリーナの眉が吊り上がった。
「貴方・・・セインちゃんに手を出すつもり?」
「おっと!!迂闊な発言でした。まあ聞いてくださいよ。」
ユリーナが魔力を一気に膨れ上がらせると焦ったようにナノライトが声を掛けた。
「本来なら魔物の大群を相手に貴方の魔力をある程度消費させる手筈だったんですよ?魔物の大群を消し掛けたのはあくまで消耗を狙ってのことです。それをまさかあんな子供が、しかも多次元魔法を使うとは思わないでしょう?」
「そうね、うちのセインちゃんは天才ですから!」
「そう!天才ですよ!いや、ユリーナさんの子供だとしても規格外です!!思わず見入ってしまいました!!あんな可愛らしい見た目なのに・・・!!」
「!!?」
ユリーナはナノライトの言葉に動きを止めた。
そして俯きながら肩を震わせていた。
興奮して話すナノライトはユリーナの様子に気付かずに更に続ける。
「おおよそ1歳というところですか?あの様な可愛らしい見た目、ヴァンパイアである私が言うのもおこがましいですが天使の様な見た目をしながら多次元魔法を使えるというアンバランスさ!!それがあの子供の魅力となっている!魔族である私でさえ思わず見惚れてしまいましたよ!?」
「・・・・・・・・・」
プルプルプルプルーーーーーガバッ!!!
「そうでしょーーーーー!?うちのセインちゃんはね生後3ヶ月でもう周りの事を認識してたのよーーー!!天才なの!天使なのよ!!セシルやセシリアも可愛いけれどセインちゃんは群を抜いて可愛いのよーーー!!!?しかもしかも、結構甘えん坊さんでね?この間なんて寝てる時に私の手をキュッと握って来てね?それでねそれでねーーー・・・」
「・・・・・・・」
勢い良く顔を上げるとユリーナは怒涛の如く我が子自慢を始め、今度はナノライトがその勢いに呑まれ呆気に取られていた。
「・・・・・でね?魔法が好きみたいで、初めて魔法を見たときなんてキラキラした目をセシリアに向けてて、こんな事なら私も魔法を見せておくんだったーーーって後悔したのよ!?でねでねーーー・・・」
1度火を吹いた親馬鹿っぷりは止まる事を知らず、敵であるナノライトが正気を取り戻した後もユリーナは止まらなかった。
因みに、黒霧はナノライトが呆気に取られた瞬間に解除してしまっていた。
遠く離れていた所に控えていた執事のダニエルはユリーナがヴァンパイアを倒したと思い近づいて来ていた。
そして、ユリーナの様子を見てナノライト同様に呆気に取られた。
すううーーー・・・・
1番最初に正気に戻ったナノライトはゆっくりと手をユリーナに伸ばした。
その様子に気付いたダニエルは慌ててユリーナに声を掛ける。
「ユリーナ様!!!」
その声に反応したユリーナ。
「・・・・あら?」
ガシャンッ!!!
しかし、既に遅かった。
ナノライトはユリーナの腕に鎖の付いた腕輪を装着させる。
「「「・・・・・・・・」」」
その場にいる3人に微妙な空気が流れる。
ユリーナはパチパチと瞬きを繰り返しながら腕輪を眺め、
「あら?」
そして、思わず動きが止まったユリーナ。
対して、今までの空気を振り払う様に1度咳払いをしてナノライトは言う。
「ククククク!油断しましたね?」
そして、
「!?ユリーナ様!!」
唯一の常識人ダニエルは慌てた。
ジャラーーーー
腕についた腕輪を外そうとするユリーナ。
しかし、何かの効力か外れそうに無かった。
「参ったわね。これ魔導具かしら?」
「ククククク!!我等がヴァンパイアが秘宝『魔封じの腕輪』!!貴方の魔力は封じましたよ!?」
「なんと!?」
こうして何とも締まらない空気の中、ナノライトは得意げに、ユリーナはそれでもおっとりと、ダニエルだけ慌てていた中で、ユリーナはその手に手錠を嵌められていたーーーーー
そして、セインはと言うとーーーーー
「あーにゃーーーーーー!!?(ターニャーーーーーー!!?)」
「ぐうっーーーー!!セ、セイン様・・・」
「我を愚弄しよって!!」
多くの冒険者、使用人、領民が倒れる中、セインを庇う様にボロボロになりながらターニャが膝をついていた。
そして、もう1人のヴァンパイアが最後の一撃を放とうとしていたのだったーーーー
サブタイトル通り、おふざけはここまでにしようと思ったんです。
けど、ユリーナさんは最強の一角として出している以上、生半可な状況で敵の接近を許さないと思ってしまいまして・・・
次回、間に合えば明日更新!!
1歳児編終盤になります。
お付き合いありがとうございます!!




