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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
フルーフの世界編

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2538/2543

2520.目の前の不可解な存在に、全く理解が及ばない大魔王

「い、今は悠長に話をしておる場合ではなかろうが! そ、それともお主、まさか会話で油断を誘っておるつもりなのか!?」


 そう言ってフルーフは、慌てて初老の男からエグゼの時と同様に距離を取り始めるのだった。


 ――だが。


「そんなに慌てなくても大丈夫だ。当分あいつは動けない。というより、お前の『呪法』の効力を加味して考えれば、もしかするとアイツはあのまま森でお陀仏になるかもしれないな?」


「!?」


 フルーフは初老の男から大きく距離を取って離れた筈が、今度はその彼の背後から男の声が聞こえてくるのだった。


「お、お主は一体何者なんじゃ!? そ、それに、奴はお主の仲間ではないのか!?」


 フルーフは二度も自分が初老の男の居場所を認識出来なかった事に慌てふためき、更には共にやってきた仲間である筈のもう一体の存在を全く心配している様子のない男の態度に、何が何だか分からないとパニックに陥りそうになりながら、そう告げるのだった。


「まぁ、アイツとは同じ大魔王をボスと考える組織の一員である事は間違いないが、別に仲間意識などは少しも持ってはいない。というか森でお前を助けてやるために、アイツに手を出したのも俺だしな」


「な、何じゃと……!?」


「お前は確かにあの時、上手くアイツに『呪法』を仕掛けられはしたが、それでもあのままだとお前は確実にアイツの『魔力圧』で粉々に吹き飛ばされて絶命していたぞ? 俺が手を出さなければ確実にな。お前も大魔王領域なら、あの瞬間に奴が苦しみ始める事でもなければ、自分がやられていたと理解する事くらいは出来るだろう?」


 確かにフルーフは『呪法』で耐魔力を下げた後、相手が攻撃に転じようとした瞬間にフルーフも攻撃を仕掛けようとしていた。


 だが、フルーフはあの時良くて『相打ち』になるだろうと理解が出来ていた。呪法によって耐魔力そのものは奪う事に成功していたが、フルーフの放った『呪蝕(カース・エクリプス)』には相手の速度や殺傷力までは下げる効力はない。


 すでに攻撃態勢に転じようとしていたエグゼの『魔力圧』の速度ならば、よくて『相打ち』になるだろうとフルーフも覚悟を決めていたのであった。


 だからこそ、エグゼが苦しみ始めた瞬間に、これ幸いとその場から離れて戻ってきたのである。下手にトドメを刺そうとしていたならば、あの『魔神級』最上位に居る魔族が、どのような攻撃を仕掛けてくるか分からない為である。


 大魔王最上位領域のフルーフでは、エグゼや目の前に居る『魔神級』最上位の存在を正しく理解する事が出来ていない。


 ディアトロスといった『九大魔王』達が相手であれば、あの時点でもう勝負はついたとフルーフも考える事が出来たであろうが、あの魔族はあの状況からでもフルーフを仕留めるだけの攻撃を仕掛けてきても何らおかしくはないと、フルーフ自身が想像が出来てしまっていた。


「安心しろ。俺がお前と居る間は俺がお前を守ってやる。だからお前は大船に乗ったつもりで、俺の質問にだけ堂々と答えてくれていればいい」


(い、一体こやつは何を考えておるんじゃ……? わ、分からぬ。色々な者達を見てきたワシでも、こいつの考えが全く読めぬ。どうやら呪法師なのは間違いはなさそうじゃが、それならば『耐魔力』を下げる『呪蝕』など何も珍しくもないじゃろうに。それにそんな事より、仲間をあっさりと手に掛けておいて何も悪びれる様子も見せず、同じ組織のボスに仕えているだけと言い放つこやつが何を考えておるのか、ワシにはさっぱり分からぬ……!)


 フルーフは自分の理解が及ばない目の前の笑みを浮かべている『存在』に、畏怖を抱き始めるのであった。


 …………


「かっ……、っ……!」


 エグゼはフルーフから謎の呪法の攻撃を受けた後、攻撃に転じようとした瞬間に不可解な激痛に襲われてしまい、耐えきれずに上空から地面に落ちた後も、全く動く事が出来ずに森の中で苦しみ続けていた。


(な、何が起きた……!? こ、これもあのフルーフという『呪法師』の仕業なのか? く、くそっ……! ま、まるで腹から下がごっそりと千切れてなくなってしまったかのような感覚と、想像を絶する程の激痛がずっと続きやがる。と、とてもではないが、これは耐えきれるモノじゃない。駄目だ、このままだと確実に死ぬ。あ、あの野郎は、ろ、ロプトの奴は、ど、何処に行きやがった!!)


 しかし想像を絶する程の激痛に何とか堪えながら、必死に『念話』でロプトウスに波長を合わせようとするのだが、どうやらロプトウスは完全にエグゼに波長を合わせようとしていないようであり、全く『念話』が繋がらなかった。


(な、何をして、い……や、がるっん……、だ……!)


 誰も居ない森の中で一人、想像を絶する激痛を味わいながら、やがて少しずつ意識を失い始めていくエグゼであった。


 ……

 ……

 ……

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