2385.ひとまずの解決となる
宿の『おやじ』達の部屋の外で会話を行っていたソフィ達の元に、どうやらしっかりと話を終えた様子で『おやじ』が呼びに出て来るのだった。
「しっかりと話が出来たようだな?」
部屋の中に入り先程まで座っていた場所に着席した後にソフィが『おやじ』訊くと、彼は一度だけミッシェルの方を見た後に首を縦に振って頷くのであった。
「しっかりとコイツから話を聞いて、そしてこれまでの事を腹を割って話し合った結果、今回の事は全面的に不問にする事にしたよ」
ソフィは『おやじ』がそう告げた後、直ぐに返事をせずに視線をミッシェルに向けて真意を確かめる。
ソフィの視線を受けたミッシェルは、ここに来るまでのような怯えた態度を見せずにしっかりと、そのソフィの視線に強い気持ちを持って見つめ返してくるのだった。
その目を見たソフィは、ミッシェルがこれまでとは異なる何らかの強い覚悟を持ったと感じ取るのであった。
「……そうか。おやじが決めたのであれば、もう何も言うまい」
「ソフィ、ありがとな。それとよ、今後こいつはまた俺の元で引き取る事に決めたんだ」
「何? こやつは『ドナルダー』商会に所属しているのだろう? そんな急に決めて大丈夫なのか?」
「ええ、元々貴方に狙われる事になるだろうと判断した時から、商会の方には話を通してあったんです。まぁ、あくまでほとぼりが冷めてから戻るつもりではあったのですが、今回の件を皮切りにして本格的に『ドナルダー』商会を脱退し、カーネリー商会の方にお世話になろうと思っています。もちろんこれは軽い気持ちで決めたわけじゃなくて、カーネリーの商会に尽力を尽くす事が俺のケジメだから……です」
相当な熱量を持って語り出したミッシェルの様子に、この短期間で一体何があったのだろうかとソフィは疑問に思うのだった。
(まるでここに来る前までとは別人だな……。一体『おやじ』はこやつに何を言ったのだろうか?)
どうにも今のミッシェルが演技ではなく、本気で『おやじ』を支えようとしようとしているといった意志の強さを感じ取ったソフィは、まるで魔瞳を用いて操った時のようだと、その変貌振りに驚かされるのであった。
「それでだな、色々とお前さんにこいつから話がしたいらしいんだ」
「ほう?」
ひとまずソフィはミッシェルの変貌振りに関しては置いておく事にして、話があるというミッシェルをを一瞥する。
「『破壊神』……、いや、ソフィさん。ここに来る前に少しだけ話したと思うが、俺には協力者の魔族が居る。そしてその御方とは今は会えなくなってしまったが、彼と連絡を取る事の出来る人物とは、まだ繋がっているんだ。ソフィさんはその御方の事を知りたがっているのだろう?」
「ふむ……。まぁ、そうだな」
「では、これからその人物と接触が行えるように手筈を整えるから、都合がつくように連絡先を教えてもらえないだろうか?」
「うむ、分かった。では、お主のその手筈を整えるまでの間、お主にも我の配下を付けるとしよう。それで良いか?」
「え……? い、いや、連絡先さえ教えてもらえれば、それでいいんだが……」
どうやら『破壊神』の配下という言葉に恐怖心を抱いている様子であり、これは『おやじ』を狙った暗殺者を全員返り討ちにされた事が彼の中で相当のトラウマになっているのだとソフィはアタリをつけたのだった。
「……これは忠告なのだがな。我たち魔族の中には、自分の思い通りにいかなくなった者を排除しようと動き出す者も居るのだ。そして我が考えているお主の協力者という魔族は、そういった動きを行う者のように思える。お主、悪い事は言わぬから、今後『おやじ』と一緒にやっていきたいと考えておるのなら、ここは我の提案を呑んでおいた方が良いぞ」
このソフィの提案は彼を利用しようという事からくる考えではなく、実際にイツキを襲撃した者が彼の協力者の魔族だった場合に、考えられる非常に高い可能性を指摘したのであった。
そこまで言われてはミッシェルも断り切れず、ソフィの提案を受ける事にするのであった。
「ミッシェルよ、そんな身構えなくともソフィは誰よりも頼りになる男だ。安心して任せちまえばいい」
そう言って『おやじ』は、ミッシェルの肩を軽く叩くのだった。
「あ、ああ……」
渋々といった様子ではあったが、ミッシェルはカーネリーの言葉に頷くのであった。
そうして今回の一件はソフィが動いた事で無事に解決となり、おやじの命を狙っていた『ミッシェル』は、今後『カーネリー商会』に在籍する事となった。
本来はカーネリー商会に付ける筈だった護衛の『エンペラー』だが、ここでも少し変更が加えられて今後は『エンペラー』の中から一体、ミッシェルの護衛兼、連絡係として付ける事が決定したのであった。
その後、ソフィ達は『おやじ』や『徒弟』達と別れの挨拶を交わした後、ミッシェルを連れて『リース』の街に戻るのであった。
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