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最強の魔王が異世界に転移したので冒険者ギルドに所属してみました。  作者: 羽海汐遠
カーネリーの苦難編

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2383.恩を忘るべからず

部屋に残されたカーネリーとミッシェルは、少しの間互いに睨み合いを続けていたが、やがてカーネリーから口を開き始めるのだった。


「お前はさっき俺に何でも成功して上手く行っているって言ったがな、実は魔物達から受けた怪我が治った後も行商を続ける気はなくなっちまって、長くグランの町で世捨て人みたいな生活を行っていたんだよ」


「へっ、よく言うぜ! だったら商会を立ち上げる金はどうやって貯めたってんだ? それに聞くところによるとお前は勲章ランクAを目指して、あのヴェルマー大陸で本格的に商売を始めようとしているそうじゃないか! 人生順風満帆でもなけりゃ、そんな夢を追いかけられるわけがねぇだろうが!」


「その金はこれまで隊商で貯めてきた……いや、俺が商人になってからこれまでの全てを注ぎこんで立ち上げた商会だ。俺の人生の目的が定まったからな、その目的の為にヴェルマー大陸に渡って商売をする必要があるのさ。だから勲章ランクを上げてるだけで、別に勲章ランク自体に固執しているわけでもない」


 堂々と言い放つカーネリーの目は少しも曇ってはおらず、それは真実だとミッシェルにも否が応にも伝わってしまうのであった。


「そ、その目的って何なんだよ……?」


「決まってんだろ、ソフィの欲しがるもんをいつでも用意してやれる環境だ」


「なっ!?」


 自分の為ではなく、他人の為に全財産を投げ打ってまで商会を立ち上げて、他人の為だけに慣れ親しんだ環境を全て放棄して『破壊神』が望むものを届けられる環境を用意しようとしていると知り、信じられないものをみるような目をカーネリーに向けるのだった。


「そ、そんな事をしてお前に何の得があるっていうんだ……?」


()()()()()()()が見れるからだ」


「お、お前、()()()()()()()()()()()!? そ、それとも、今の俺みてぇにアイツに何かされちまってんじゃねぇのか?」


「そんなんじゃねぇよ、アイツは確かに自分の『敵』となるような連中に対しては冷酷になれる奴だが、本当は心優しくて気の良い奴なんだ。一度挫折した俺は二度と立ち上がろう何て気持ちにはなれなかった。グランの町でこのままその日暮らしさえ出来ればいいとさえ思っていた。だけどよ、そんな時にあいつは俺の前に現れて、最初会った時のアイツは文無しで、可哀想だと思って一回レグランの実をくれてやったらよ、それから何度も俺に会いに来てくれて、その間にもどんどんあいつは凄い奴になっていって、今じゃミールガルド大陸で知らねぇ奴の方が少ないってくらいにまでなりやがった。そうだというのに、出会ったあの頃と変わらねぇままで、今でも俺の為に色々とやってくれるんだ。苦労をしていないかって気にかけてくれて、今回だってそうだ。俺から護衛を頼んだわけじゃねぇのに、俺の為を思ってアイツから護衛を付けてくれてよ……。信じられるかよ? アイツはあれでも元ラルグ魔国の……一国の王にまでなった奴なんだぞ? アイツは自分の身分がどんなに変わろうと、根っこの部分が変わらないんだよ。そんなアイツの為に、もらった恩を返そうって考えるのは『商人』として決して間違っていないだろうが!」


 ――恩を忘れたら『商人』として終わりだと思え。


 これはかつて、隊商のリーダーだった頃の『カーネリー』が、ミッシェルにいつも言っていた言葉であった。


「……」


 その言葉を思い出した後、ミッシェルは次々と当時の事が、当時の思い出が脳裏に蘇ってくるのであった。


 商人として不出来だったミッシェルをいつも励まして気にかけてくれた『カーネリー』。


 そして次の瞬間、自分の記憶に蓋をしていた『とある出来事』が、鮮明に蘇ってしまう。


 ――そう、あの日カーネリーを襲った魔物たちの原因が、自分であったという事を。


 貴重な食材となる鳥の卵を見つけたミッシェルは、魔物達の縄張りに入っている事に気づかずに掻っ攫おうとして魔物達の逆鱗に触れてしまい、案の定その縄張りの主の魔物に襲われたのである。


 原因がミッシェルだったというのに、カーネリーはその事を責めたりもせず、最後には彼が身代わりになって死を決意し、自分達を逃してくれたのである。


 そうだというのにその原因を作った彼は、そんな記憶を封じ込めるかのように忘れた挙句、自分で作った借金の返済に疲れ果てて、怪我で隊商を抜けざるを得なくなったカーネリーを恨み、そしてあろうことか逆恨みで命まで奪おうとしていたのだ。


 彼は過去の出来事の全てを思い出して、絶望に打ちひしがれるのだった。


「俺はこれからどんなに苦難が待ち受けていようと、アイツからもらった恩に報いる為に頑張り続けるつもりだ。その為にはどんな妨害をされようと、決して立ち止まるつもりはねぇ!」


 まるで『陽』と『陰』が具現化して同時にこの場に存在しているかの如く、カーネリーとミッシェルは相反する表情をするのであった。


「わ、わるっ……、悪かった……」


「あ……?」


「俺が悪かった、ゆ、許してくれ……!」


 唐突に自分を許してくれと泣きながら告げ始めたミッシェルに、これからの事について話をしていた『おやじ』は、言葉が出てこなくなる程に驚くのであった。

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