2382.カーネリーの気持ちを汲む大魔王
ソフィは話の中で部下である『クラウザー』からの報告により、襲撃を画策したミッシェルの行いを諫める為に捕縛を行った事、そして今後のこの男の処遇を含めて『おやじ』に対応を委ねるつもりであるという事までをひとまず伝え終えるのだった。
「……なるほど。ソフィよ、俺の為にここまで動いてくれて感謝するぞ」
「うむ。まだこやつ以外にも『おやじ』を狙う輩が居る可能性も考慮して、今後も当面の間は『クラウザー』を護衛に付けるつもりだ。また何かあれば何でも相談して欲しい」
「本当に何から何まですまねぇ、ありがとう」
そう言って『おやじ』は立ち上がってソフィに頭を下げるのだった。
「……お前は良いよな、何でも成功して上手く行ってよ」
それを見たソフィが『おやじ』の頭を上げさせようとしたが、それより前に不満そうに腕を組んで話を聞いていたミッシェルが小さく呟くのだった。
その呟きにこの場に居る者達の視線が、一挙にミッシェルに集中する。
「ミッシェル……。確かに怪我のせいだとはいっても俺が隊商を勝手に抜けたのは確かだし、お前達に恨まれてもしょうがないとは考えている。だが、ここまで俺の命を狙って来るとは思っていなかったよ」
彼の呟きを聞いた『おやじ』は、これまで言うかどうかで悩んでいた心の言葉を吐露し始めるのだった。
「カーネリー! 誰もがお前みたいに幸運の持ち主じゃねぇんだよ! 借金こさえて苦労して隊商での商売に懸けていた連中は、お前が抜けたせいで総崩れだ! かつての仲間たちはどんな思いでお前について行っていたか分かってんのか!」
当時の思いが蘇ったのか、突然に火が付いたようにミッシェルは叫ぶように怒鳴り始めた。
「少し落ち着け」
横で座って話を聞いていたソフィは、立ち上がって『おやじ』に詰め寄ろうとしていたミッシェルを強引に止めに入る。
大した力ではないように思えたソフィの止める手だが、ミッシェルはどんだけ力を込めても阻まれてからは、それ以上進む事が出来なかった。
「『おやじ』とて怪我があったからこそ、隊商を抜けるに至ったのだ。そもそも『おやじ』は襲撃してきた魔物達からお主らを守る為にその怪我を負ったのだろう? その行いは隊商のリーダーとして褒められこそすれ、責められる原因にはならぬ筈だ。お主らがその事件の後に苦労をしてきた事を『おやじ』のせいだけにするのは、絶対に間違っている」
「くっ……!」
『おやじ』を守るように前に出たソフィは、恨み節を投げかけるミッシェルを真っ向から否定するのだった。
「お主らはその事件の後、たった一度でも『おやじ』の元に訪れて怪我を見舞ったか? 自分達の生活を優先するのは仕方のない事ではあるが、命を救ってくれた功労者に感謝の念すら覚えず、逆恨みで命を狙う輩に対して我は容赦をするつもりはない。お主をここに連れてきて話をさせようと思っておったが、それはお主に糾弾させる為ではない。これ以上騒ぐなら『おやじ』には悪いが、二度と会う事が許されない場所に強制的にお主を連れて行く事になるぞ」
そう告げるソフィの目が『金色』に輝き始めていく。
「ひ、ひぃっ……!」
遠回しにソフィが告げた『二度と会う事が許されない場所』とは、間違いなくこの世ではない場所である。
それはつまり、実質的な『死』を意味するのだろう。
話をさせるの意味を履き違えて、糾弾する場を与えられたと勘違いされては困るとミッシェルに警告を行うソフィであった。
「……ソフィ、悪いがこいつと二人で話をさせてもらえないか?」
今のソフィとミッシェルのやり取りを見ていた『おやじ』が、意を決した様子でソフィにそう告げる。
「構わぬが……こいつに良からぬ真似をさせぬように、拘束はさせてもらうぞ?」
ソフィは少し悩む素振りを見せた後に静かにそう告げた。
「ああ、話が出来る状態なら構わない」
ソフィは頷くとミッシェルを一瞥する。
――魔瞳、『金色の目』。
キィイインという甲高い音が部屋に響き渡ると、次の瞬間には意識はそのままに、ミッシェルは自分の身体が鉛のように重くなり、一切の身動きが取れなくなるのであった。
「悪いがお主の護衛を行う『クラウザー』だけは置いて行かせてもらうぞ? こればかりは譲れぬ」
「ああ、重ね重ね感謝するよ」
『おやじ』の礼の言葉に頷いたソフィがその部屋から出ていくと、小さく溜息を吐いたヒノエが続き、そして徒弟たちも部屋を出ていくのであった。
そして部屋には、カーネリーとミッシェルだけが残されるのであった。
……
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