第四話
「オルーノは、知っているかね?」
支部長が静かにそう訪ねてくる。
「ここからすぐ近くの街ですよね?馬車で一日かからないくらいの」
特に何も無い辺鄙な街で、平和で静かな所だったはずだ。
「そうだ、今回君たちにはオルーノで起きている連続殺人事件の調査に行って貰いたい」
連続殺人事件か……。俺たちが派遣されると言うことは何かしら魔女関連の要素があると言うことだろう。
「具体的にはどういった事件なんですか?」
レリルが支部長に訪ねる。
「うむ、では事件の概要を説明しようか。デリア君、資料をみんなに渡して貰えるかな?」
「わかりました」
デリア副支部長は頷くと、机の上にあった紙を渡してくれた。……ナナ以外に。
「……ナナにはないの?」
ナナがそう訪ねるとデリア副支部長は資料を無言でナナの足下に投げ捨てた。
「ちょっと!」
「……いい、慣れてる」
レリルがデリア副支部長に詰め寄ろうとするが、そう言ってナナは何事も無かったかのように床の資料を拾う。
「……獣人差別、という奴ですか」
レリルが小さく呟く。デリア副支部長は無言で睨み付けるが、流石に支部長が肩を叩いてたしなめる。
「……まあ、色々あるのだよ」
支部長がため息をつきながら静かにそう言う。
デリア副支部長がこういう行いをするのも仕方ないのかも知れないな……。それはきっとナナもわかってるだろう。
「さて、では続けてもいいかな?」
支部長の問いに三人は静かに頷いた。
「よろしい。……オルーノではここ二週間のうちに六件の殺人事件が立て続けに起きている」
二週間で六件か、少し多いな。
「遺体とその近くの現場には大量の短剣が刺さっており、又遺体に心臓が無いことからオルーノの自警団は事件を魔女による物と断定し、神器もちの神父の派遣を要請してきた」
「心臓が、無いんですか?」
レリルが声をうわずらせながらそう訪ねる。見ると、若干体も震えている。
「魔女は人間の心臓を闘争神に捧げる事で力を得るからな。大量の短剣が遺体以外にもささってる、なんて不自然な状況もあるしまず魔女事件で間違いないだろう」
俺がそう言うと、レリルは不安そうにこちらを見つめてくる。
その姿になんだか胸が高鳴ってくる。というか自重しなければ……!というか、何だか下半身の一部に血が集まっていくのを感じる。やばい、収まれ俺の劣情!こういうときは正反対の物を見なければ……。そうだ、目の前にちょうど良いのがいるじゃないか。
俺は目の前の支部長をじっと見つめる。
下半身についた生涯の友を必死にあやし、なんとか落ち着いてくる。
「……なんでそんなに私を見つめてくるのかね?」
「何でも無いです……」
若干怪しまれたが、まあ支部長だし問題ないだろう。おっさんに嫌われても別に傷つかんしな。
「……ホモですか?」
レリルが若干侮蔑を込めた声でそう訪ねてくる。
いかん!支部長はともかくレリルに嫌われるのはまずい!主に俺の精神とこれからの旅に大いに支障がでるではないか……!
「そんなことは無いぞ!むしろ女好きだ!」
俺が若干大きな声で反論するとレリルは無言で一歩遠ざかる。
「……ラルフ、今のはきもい」
ナナまでそんなことを言ってくる。止めてくれナナ、その言葉は俺に効く。
支部長が咳払いをする。
「続けてもいいかね?」
俺は黙って頷いた。
「被害者はいずれも中年男性だが、それ以外の共通点は今のところ見つかっていないそうだ。すでに自警団が夜間のパトロールを行っているが、今のところ犯人特定には至っていない」
ふむ……。なかなかに面倒な事件だな。オルーノの規模だと街の女全員を裸にして刻印がないかを調べる、なんてことも出来ないだろう。
小さな村であれば魔女であれば必ずある刻印を調べればいいので簡単なんだけどな、役得だし……。
「何か他に手掛かりとかは?」
「私の知る限りでは今のところはないな。詳しくは街の自警団にきいてくれ」
役に立たない支部長だ……。
だがまあ、そんなことを顔に出すわけにも行かないしここは黙って頷いておくか。
「わかりました」
「うむ、素直でよろしい!」
支部長満面の笑みでうなずく。
「では諸君、正式に辞令をだそう。この魔女を仮に、短剣の魔女と呼称する。ラルフ、ナナ、レリルの三名は各自全力でもって短剣の魔女を見つけ出し、この魔女を捕縛、若しくは殺害せよ!」
又まじめな顔になった支部長が大声で叫ぶ。
「「「了解しました!」」」
レリルは少し緊張気味に、ナナはだるそうに、そして俺はできる限り真面目に、三者三様に声を上げる。
こうして、俺達三人の初めての魔女狩りが始まったのであった。
ついに本編スタートです!
導入が終わり、やっと魔女との戦いが始まります!




