表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/46

推し愛

翌日の作業場所は、ファミレスよりも駅に近づいた場所にあるカラオケボックス。


検索中心の作業にはWi-Fiのあるファミレスが良かったけれど、美術部員も合流して人数が増える作業にはカラオケボックスのパーティールームが最適だった。


集まったのは、文芸部員が7人と美術部員が7人。

昨日ファミレスで自分の展示準備をしていた文芸部の1年生2人は、今日は自宅でそれぞれ続きの作業をしている。彬良あきらくんが、こちらの作業は自分の分が終わってからにするように言ったからだ。

美術部員は1年生が3人と2年生が4人参加してくれた。


今日は、文芸部員は昨日選んだ関連図書の紹介文を作成して、美術部員は関連図書につける絵の案内ポップを作成する。

関連図書を選択した理由はLINEに書き込んでいるし、美術部の絵の案内文についても、展示内容の案内文書は美術部展で例年配布しているらしく、今年の展示分も文章自体は既にあるそう。

だからといってそのまま使えるものも、変更が必要なものもあるからその辺りを調整しながら、手分けして作成する。

関連図書の紹介文は学校のプリンタで印刷する予定だから、文章が決まったらデータを彬良くんがまとめてくれる。美術部員たちは最初に自分の絵の案内ポップを作り始めた。


私が自分の割り振り分の紹介文を作ろうとLINEを確認していると、足立くんが近づいて来る。

足立くんは私の隣に座りながら、数枚のポップを差し出した。

「俺の絵の関連図書は文芸部誌になるだろ。文芸部誌に俺の絵を紹介するポップ付けるのも変だし、だから文芸部誌用にこんなポップを描いてみた」

そこにはデフォルメされた少女とちびドラゴンが、火山、小さな島、そして月とともに描かれた3枚のイラストがあった。

「可愛い!」

少女は三つ編みをしていて、足立くんが見せてくれた美術部展用の絵の少女とは少し雰囲気が変わっているようにも思えたけれど、デフォルメされているせいだろう。

「あ…でもこれを文芸部誌にポップとしてつけるのは…私の小説がメインみたいで、ちょっと良くないかも…でもせっかく描いてくれたし…こんなに可愛いし…」

私が逡巡していると彬良くんがポップを覗き込んだ。

「…これ…」

彰吾しょうごくんも覗き込む。

「…これ心春こはるちゃん?」

彰吾くんがポップと私の顔を見比べながらそう言った。

「「え?」」

私と足立くんの声が被った。

「あ…」

私とポップを見比べていた足立くんの顔が段々と赤くなる。

「…私?」

私はもう一度ポップを見たけれど、私に似ているだろうか?確かに髪型は似ていると思うけど。

足立くんの様子を伺うように隣を見ると、足立くんと目が合う。

足立くんが怯んだように目を逸らした。

「ぅ…いや…無意識だった…。

だって俺の『霞日和かすみひより』のイメージってこの少女だったから、だから実際に村上さんに会って、少女のイメージが村上さんに寄ったんだと思う…」

口を片手で覆ってそう言う足立くんを見て、私は瞬いた。

「え?え?え?だって私こんなに可愛くないよ?」

驚いて足立くんと彰吾くんを見比べる私に、彰吾くんが平坦な口調で

「足立くんには可愛く見えてるんだな」と生暖かい目を向けてきた。

「…っ!」

そんなことを言われたら顔が赤くならないはずがない。口をぱくぱく動かして反論しようとするのだけれど言葉が口から出て来ない。

「あー…」

彬良くんが咳払いをした。

「えー…うん。確かに『霞日和』のことしか見えてないポップだ…。

文芸部誌に付けるのはちょっと違うかも…」

足立くんも咳払いしてから返事をした。

「確かにその通りだと思う。作り直すよ…」

「いや、それはいいから他のを先にお願い」

「分かった。じゃあ3年生の絵の分から順番に作ることにする」

彬良くんが苦笑を残して作業に戻った。

彰吾くんも笑いながら元の作業に戻る。

足立くんが私を見た。

「じゃあさ、せめてこれは貰って」

使う予定のなくなったポップを手にして私に向ける。

「え?私が貰ってしまってもいいの?」

「もちろん。『霞日和』のために描いたんだから」

「…っ」

そんなことを言われてしまえば、とてもじゃないけど足立くんの顔が見られない。

私は手の上にポップを乗せて、そのままじっと貰ったポップを見つめ続けた。

しばらくは気持ちを落ち着かせることに集中する。

そして私は深呼吸した。

それからLINEに文章を打ち込む。


「それじゃあこれは私からのお返し」

足立くんに向けて文章を送る。


足立くんは私の顔を見て、首を傾げながらスマホを手に取る。

何度かタップして目が文章を追い始めると足立くんが目を見張った。


「…!これ…もしかして俺の絵の紹介文!?」

「足立くんの絵の紹介ポップを作らないなら使わないけどね」

「〜っ」

足立くんがスマホを持ったまま崩れ折れた。

「ぅぁ…嬉しい…どうしよう…」

小さく呟く足立くんを横目で見ながら私は満足して貰ったポップを鞄にしまった。

もちろんノートに挟んで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ