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第12話

「これは私から君に、ミゼルを保護してくれるお礼です」


 機械神イゼルローンが差し出してきたのは一本の腕だった。とても精巧な作りになっているのは簡単に理解できる。


「良いの?」

「ええ。もし良かったら、少しでも彼女がやりたいと言ったことをやらせて頂けると助かります」


 イゼルローンが差し出してきた機械の腕は、無くなってしまった右腕の代わりになるんだろう。


「倫理の範囲内であれば」

「それはそうですね」


 どうやら、イゼルローンはもうこの場から消えてしまうらしい。


「イゼルっ!」


 イゼルローンと同じ銀髪銀目のミゼルは叫んだ。まるで、鉄仮面でも被ってるかのような、叫んだ声音と動かない表情というチグハグな彼女に機械神は微笑んだ。


「……ありがとう」

「いえいえ。貴女が居なければ、きっと、私の世界の技術は千年単位で進歩が止まっていましたよ」

「そんなことは……」

「そんなことだから、私たちの世界に貴女を置いておけなかった。でも、時代を動かした貴女を、英雄を、凡人に殺されるわけにはいかないじゃないですか」


 えぐい程に天才、才能は、時に争いを、恨みを産む。


「その腕、ミゼルに調整して貰ってください。また時間があったら来ます」


 それだけを言い残して、機械神イゼルローンは私たちの前から姿を消した。


「じゃあ、アルティナと僕も一旦は帰ろうかな。積もる話もあるでしょ?」

「まあ、そうだね」


 私が頷くとアマたんとアルティナさんも姿を消した。


「じゃあ、これからよろしくね」

「よろしくお願いします」

「まずは、色々と君のことを聞かせてよ。そこのダイニングテーブルに座って」


 ミゼルを座らせて飲み物を用意しようとしたら、陵に手で制された。


「美玲は先に話してな」

「だね、任せた」


 色々と彼がやってくれるらしいから、任せてしまうことにした。

 彼女に向かい合って私も席に座った。


「じゃあ、今日から私たちの国の住人に君はなった訳だけど、何がしたいとかある?」

「いえ、その、平和に過ごせるだけで」

「でも、さっきの機械神イゼルローンだっけ? 彼女曰く君は凄い技術者なんでしょ?

 その技術的な物って、あっさりと手放せる物なの?」

「それは、もう。二度と私は物を作らないと決めたので。迷惑を掛けてしまいますし」

「なるほどね。迷惑ってどんな迷惑?」


 一度世界を追放される程の力を、技術を露見された彼女が、余生は大人しくしようって気持ちは理解出来る。


「世界のバランスが崩れたりとか」

「へえ。因みに何を作ったの?」

「半永久機関、太陽炉心、です」

「ふうん? どういう物なの?」

「機械って、動かす為にはエネルギーを絶えず供給しないといけないですよね?」

「うん、そだね」

「それをほぼ永続的に動かす事が出来るんです。その太陽炉心があれば」

「なるほど、それは確かに革命的……に聞こえるね」


 下手すると神々に対抗する事すら出来るかもしれない。


「はい。ですが、それを作成した私は様々な国々から狙われる事になりました」

「何処でも欲しいもんね」

「そして、戦争が始まりました。太陽炉心を奪い合う戦争です。その太陽炉心は簡単に作れる物ではありません。私を攫っても簡単に作れないとわかるや否や、一瞬で既存の太陽炉心を巡って世界大戦に発展しました」

「……うわぁ」


 それ、どんだけ強力だったんだろ……


「だから、もう……」


 表情は変わらないのに声音だけは悲しそうで、ミゼルの人柄が何となくわかった気がした。


「ありがとう」


 陵が私たちそれぞれに暖かいお茶を置いてくれた。そして、私の隣の席に座った。


「ふぅん。まあ、任せるよ。ただ、タダ飯を与える余裕も私たちには無いから、そうだね、神王国ヤマトの既存の機械の修理をお願いしようかな。それだったら、開発はしなくて良いから気も楽になるかな?」

「それなら」

「じゃあ決まりだね」


 私が偶にやっていた配線の修理とかは、全部ミゼルに任せてしまおう。


「あ、その」

「ん?」

「何とお呼びすれば……」

「あー、自己紹介してなかったっけ?」


 完全に会話の切り出し方を間違えちゃったね。


「私は美玲、こっちは陵、私はこの国で王をやってるよ」

「では、王様と?」

「呼び捨てでも何でも良いよ。機械神も呼び捨てだったみたいだし」


 私自身は全く気にしてないからね。


「では、王様と」

「あ、そう」

「失礼ですが、そちらの腕はどうされますか?」

「あ、この腕の使い方が全くわからないから、教えて貰っても良い?」

「勿論です。ちょっと失礼しますね」


 ミゼルは慣れた手つきで、イゼルローンから受け取った機械の腕を手に取り、私の欠損した右腕に触れた。


「……結構派手にやったんですね」

「神様とやり合ったら、こうなっちゃったんだ」

「そうなんですね」


 彼女は機械の腕から、何かのパーツを外した。そして、何処かのボタンを押す。機械の腕の小さな光が点滅し始めた。


 ウィーン、カチャン


「これで大丈夫な筈です」


 無くなった右腕の代わりが、しっかりと右腕にくっ付いていた。


「これってメンテナンスは必要なの?」

「これはしなくて良いタイプですね」

「へー……」


 試しにお茶の入ったカップを手に取る。うん、特に違和感無く持ててしまう。凄い。


「ねえ、ミゼルってこの腕は作れるの?」

「流石に素材が無いと」

「そっか。まあ、作りたくないみたいだし」

「頼まれれば作りますけどね」

「あ、そう?」

「この腕が世界を破壊するとは思えませんし」

「まあ確かに」


 これはあくまで医療器具の域から超えないだろう。世界が崩壊するなんて未来も見えない。この世界には無いテクノロジーだから他国が欲しがる可能性は無くはないけど、うん、まあ、それはちょっと気を付けながらやろうかな。


「でも、神々と戦う事があるのに、この腕では少し心許ないですよね」

「それは生身の時点でそうだよ」

「ああ、まあ、確かにそうですね」


 全身機械化とか勘弁して欲しいし。


「じゃあ、ちょっと外に行こうか。住居の案内をするよ」


 ミゼルにはドワーフ族の隣か後ろの建物に住んでもらうつもり。

 技術者が身近に居た方が良いだろうし。


「人が全く住んでませんね」

「そうなんだよね。この国は一階と屋上で大きく分かれてるんだけど、屋上まで辿り着ける人が少ないからね……」


 ドワーフ族が住んでいる住居の、武器を売っている露店の前で私たちは立ち止まる。


「ミレイ王、リョウ様、本日はどう言ったご要件で?」


 一人のドワーフが露店から外に出て来てくれた。


「グーを呼んでもらえる?」

「あ、はい」


 すると、暫くしてグーがやって来た。この建物に住んでいるドワーフ族の長である。


「ミレイ様、今回は何用で?」

「実は君たちの住んでいる建物の隣に、彼女を住ませることになった。ミゼルはわからないことも多いだろうから、少しだけ目を掛けてやって欲しい」

「……ふむ、なるほど。承知しました。ミゼル、よろしく」

「よろしくお願いします」


 グーが差し出した手を握り返し、ミゼルは綺麗なお辞儀をした。


「では、すみません。私はこれで」

「何か忙しそうだね?」

「一階に送られている電力が一部止まっているみたいで、その原因となったパーツの再作成をしている所なのです」


 神王国ヤマトは屋上を除いて太陽に当たることは無い。つまり、停電をしている状況はかなりヤバい。

 一階の一部区域が完全に真っ暗になっている事が予想された。


「それは呼び出しちゃってごめんね。頑張って」


 ミゼルに手伝って貰うのもアリかな、なんてちょっと思ったけど、今日は彼女にこの国の生活を教える事が最優先だ。それに、そこまで働かせようって私も思ってないし。


「じゃあミゼル、家の使い方を教えるね」

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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