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進化したゴブリン、異国に潜入す。第7話

「ミリシャ、どうするつもりだ?」


 隣の木に隠れるクレアに訊ねられる。いや、そんな事を言われてもな。


 肩を竦めて返すと、割とちゃんと睨まれた。そんな怒んなよ。矢を放ってるのは俺じゃないんだし。


 暫く息を潜めて隠れていると、やがて、矢の射手は姿を現した。

 黒髪黒目に褐色肌で、随分と暗い外見だと思う。あの尖った耳は、もしかしてエルフ族か?

 いや、それにしたって矢の射手にしては不用心過ぎないか?

 まだ姿形は子供の様だし、近接武器を持っている様にも見えない。

 遠くから俺たちの姿が見えなかったとも思えないし、既に俺たちが立ち去っていると考えるには、ちょっと楽観的過ぎる。


 クレアに視線を向ける。


 すると、クレアは頷いたと同時に、俺の反対側で大きな音を立てた。


 その長耳の子供はビクリとして、そっちに視線を向けた。それは矢の射手を無力化出来るまたと無いチャンスだった。


 俺は一気に走り出した。一気に射手の前に躍り出る。


 射手が矢を構える前に、弓に手を添えて、射線を俺に向かないように強引に押した。


 同時に足を払って地面に引き倒し、剣を抜いて首に突き付けた。


「お前は何者だ?」


 そうやって問いながら、他にも射手が居るかもしれないし、俺なりに矢の射線が減る方に自分の身を寄せていく。


「お前こそ何者だよ!」

「聞いてるのは俺だ。このまま刃を押し込むぞ」


 剣の腹を首に当てて、更にリアリティを作って脅す。この状況で言い返してくるなんて、とんでもない勇気だと言うべきか、それとも、状況把握能力の低い相手だと思えば良いのか。


「ガキの姿をしてるからって、俺が甘くなると思うなよ?」


 顔面のすぐ隣の地面に、空白に剣を全力で突き刺した。


「ひっ」


 彼の悲鳴を聞くと同時に"鑑定"を発動させる。種族はダークエルフ族、年齢は十八、性別は……え?


 女らしい。あまりにも短髪で女には見えなかった。あと、流石成長が遅く長命なエルフ種と言うべきか、子供の姿で年齢をそれなりに重ねていた。


 性別が自分の想像と違かった事による驚きは、一旦端に置いておいて、目の前のダークエルフの能力を鑑定する。


 闇魔法 Lv10

 弓術 Lv6


 これだけだ。これだけだけど、一芸に秀でているのはわかった。

 Lv10って言うのは、つまり、その能力、技術において達人クラスだ。


「闇魔法、使うなよ? その場で切り裂くからな」

「なんでそれを……」

「さあな。それより、お前、なんでここに居るんだ?」


 ダークエルフ族がどんな種族かは知らねえが、少なくとも、アルセーヌ帝国の付近で人間族以外の人がフラフラしているのは稀な筈だ。だって、危険過ぎる。


「なんでって言われても……」

「ダークエルフ族ってのは、こんなに危険なアルセーヌ帝国の付近で生活するのが通常なのか?」


 自身の種族名をぴったり当てられたからか、驚きと若干の怯えの籠った視線を彼女は向けてきた。


「……ダークエルフ族ってのは、エルフ族の突然変異なんだよ」

「へえ?」

「エルフ族って、ちょっと違う奴にめちゃくちゃ排他的でさ。俺は同じ村の奴に殺され掛けたんだ。今も追い掛けてくるんだよ。だから、追い掛けて来れないアルセーヌ帝国の付近で生活してる」

「ダークエルフ族がエルフ族の突然変異ってのは、初めて聞いたな」


 そう言えば師匠の弟子の一人が、目の前の彼女と同じ様な境遇だったな。

 その弟子はハイエルフ族で、ちょっと特異だったから、母村から迫害されたという話は聞いた。

 エルフ族に追っ手を差し向けられて、逃げる為に人間族以外を許さないアルセーヌ帝国の周辺で過ごす……話としては、そこまで矛盾点も感じない。


「クレア、どう思う?」

「どうとは?」

「なあ、お前の名前はなんだ?」

「俺はヘルリーナ」

「俺はミリシャだ。良かったら、俺の仲間にならないか?」


 闇魔法は達人クラス、弓の腕は上級者クラス一歩手前。仲間にしない手はない。


「いや、いや、だが、あの国の出身だろう?」

「……こういうことだ」


 俺は指輪を外して、正体を顕にした。肌色ではなく緑色の肌を纏った俺を見てヘルリーナは絶句する。


「区分で言えば俺は魔族だ」

「……なるほど」


 多少はこれで信用してくれると嬉しいんだけどな。


「仲間にならないって言ったら?」

「そのままお帰り願おうか。ってよりも、弓を捨てろって感じかな。森の中から狙われたら俺じゃあわかんねーよ」


 地面に背を着けた彼女に手を伸ばして、ゆっくりと立ち上がらせた。


「ダークエルフ族を仲間にするってことは、全てのエルフ族から敵対視されるってことだぞ?」

「それは別に良いよ。変装くらいはしてもらうかもしれねえが」


 ミレイ王にもう一つ指輪を作ってもらおう。


「あー、でも、仲間になるって言っても、あの国に入るのは難しいか?」

「それは簡単だ。闇魔法は自分の存在を消したり、相手を洗脳したりと、そういうのが得意な属性の魔法だからな」

「ミリシャ、私は洗脳されたくは無いが?」


 クレアがヘルリーナに難色を示した。俺も洗脳はされたくないし気持ちはわかる。


「じゃあ、俺たちを洗脳しないって契約をして貰えるなら、仲間として迎え入れよう」

「そ、それくらいなら、勿論する」

「そうか? なら、ほら」


 下地になる契約書類を渡した。俺たちはお互いに危害を加えない。そうやって明記された白い用紙だ。


 この手の契約書類は何枚かミレイ王から貰っている。何かあったら使ってくれって言われてるんだよ。うちの王様は用意周到で本当に助かる。


「名前を?」

「書けるか?」

「書く物があれば」


 ペンを渡す。それを使ってスラスラと書いてくれた。俺もそれに名前を書く。二人が書き終わると用紙は光り出して、やがて、俺と彼女の中に半分ずつ入っていった。


「これで契約完了だな。クレアも問題ないよな?」

「まあ、それなら」


 さてと、ちょっとしたトラブルはあったけど、悪い事ばかりでは無かった。

 ただ、当初の目的であるゴブリンの討伐は終わってない。


「ヘルリーナ、この周辺にゴブリンって居るか?」


 この周辺に住んでるなら知ってそうだなと、そう思って聞いてみた。


「向こう側に居るぞ」


 ヘルリーナが指さした先は、森の奥ではなく左手側。


「じゃあ、行くか」

「そうだな。さっさと依頼を終わらせて帰ろう」


 ヘルリーナに案内をされて、俺たちはゴブリン狩りに向かう。

 向こうと言った割には、そんなに距離は近くなくて、結構歩かされた気がした。


 けれど、その甲斐もあってか、大きなゴブリンの群れに接触する事に成功した。


 いや、数多くね?


 ってか、服を着てないゴブリンって、こんなに気持ち悪い醜悪な雰囲気を持ってるんだな。


 俺は生まれてからすぐにアストレアに出会って、服を着させられてたというか、与えられたから着たというかで、そもそも今の姿に進化する前の通常のゴブリンの外見の時から衣服はしっかりと着ていたから、他のゴブリンを見て新しい発見ばかりだ。


 ま、そんな事を言ってたって始まらねえしな。


 依頼はゴブリンの討伐だ。何も考えずに斬れば良い。


「大丈夫か?」


 クレアが少し心配そうな表情をしていた。


「大丈夫だ。何ともねえよ」

「そうか。なら良い」


 何について心配していたのか、それは何となく想像が付く。


 剣を抜いた。ゴブリンの集団に一斉に"鑑定"を行う。


 特に危険な能力を持っている個体は居ない。いや、特殊個体が数体居た。

 二体はゴブリンナイト。ナイトと言うだけあって、剣術のレベルは3だ。通常のゴブリンはそもそもスキルが無い。

 もう二体はゴブリンメイジ。メイジと言うだけあって、こちらも魔法のスキルが特化している。いや、それでもレベル3くらいしかないけど。

 問題はこの一体、ゴブリンジェネラルだ。こいつは剣術がレベル5で、ゴブリンの中では最も強い。だが、それ以上に気になるは図体のデカさだ。

 ゴブリンナイトもメイジも、実は通常のゴブリンより断然に大きい。人と同じくらいだ。だが、ジェネラルは違う。高さは人の二倍くらいだが、体積の大きさは五倍くらいあるだろう。

 大きさはパワーでもある。あいつだけは気を付けないとな。


「さて、行きますかね」


 クレアの準備が終わったのを確認して、俺はゴブリンの群れに向かって走り出した。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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