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第10話

 なんやかんやあって、私たちは獣人の村に招かれた。


 獣人の村は結界を超えた先に、森の中に擬態していた。それはきっと高度な技術で、一体誰がそんな事を出来たのだろうと俄然興味が湧いた。


「この度は娘を助け出してくれたこと、礼をさせて頂きたい」

「あ、いえ、配下が勝手にやった事なので」


 虎耳の生えた厳つい老人に頭を下げられて、私はサラりとそれを受け流した。


「ミレイ殿は王だと聞いたが、それは間違いないのか?」

「まあね。でも、基本的に私は外交も内政もしないから」


 間違いないけど、大半はレイアに丸投げしてるから、王らしいことをしてるかと聞かれると、あまりに微妙だったりする。してなくはないけど。


「そちらの幼子がか?」

「そうそう。頭良いんだよね」

「褒め方が雑過ぎませんか?」


 褒め方、扱い方が雑と言われると、視線を逸らすことしか出来ない。


「まあ、その、これくらい簡単に配下に詰められる王様だよ」


 レイアの反応から私の立場というものが理解出来ると思う。


「それは愉快だな」

「そう? 結構ナメられたりするんだけどね」

「普段からそう巫山戯ている訳でもあるまい」

「まあね」


 なるほど、そこまでバレるか。

 巫山戯ちゃいないけど、村長とお堅い空気で接するのも可笑しいとは思ってるからね。だって、村長は私の国民じゃないし。


「ミレイ王、単刀直入に問いたい。本題は何処にある?」


 村長は少し険しい顔をしていた。


「本題は君の娘を返す事だよ。それ以外はオマケ」

「まさか。何か条件があるのだろう?」

「いや、無いよ。ってか、条件を付けるなら人質にするって」


 条件を付けたいなら、交渉事をしたいなら、女の子を先に返したりしないよ。


「だから、私の出番はここで終わり。レイアにバトンタッチさせてもらうよ」

「では、折角の対話の機会ですので、何点か繋がりを作って帰れたらと考えています」

「……ほう?」


 訝しげな視線を村長はレイアに向けた。


「そう固くならないでください。何か無理難題を告げるつもりもありません」


 彼女の声はよく通り、澄んでいた。


「では?」

「まず、我々は国民を求めています。今も多種多様な種族の国民が住んでいます。なので、もし宜しければ如何ですか?」

「そんな簡単に移動出来るわけなかろう」

「それは重々承知しています。ですが、そろそろこの村も安全では無くなってきたのかなと。だから、お子さんが奴隷商人に捕まってしまったのでしょう?」


  レイアはよく落ち着いていた。結構村長も怖いと思うんだけどね。

 国民を増やす為の交渉はするんだろうなぁ……って、元々私は思ってたから、こういった切り口から始まるのは想像出来ていた。


「無理にとは言いません。ですがもし、何かあった時に避難して頂ければ、迎え入れること約束しましょう。働かなければ追い出しますが」

「ありがたい提案だ。確かに最近はアルセーヌ帝国の干渉が増えてきている」

「どんな形で増えているのか聞いても?」

「結界の前でウロウロしていたり、まだ村の場所はバレてはいないが……」

「なるほど、かなり危険な状態ですね」

「やはり、そう思うか」

「結界一枚を隔てた向こう側に居るのでしょう? 私たちだったらどうします?」


 急にレイアからキラーパスを受けた。結界の先に敵がウロウロしてたら、私だったらどうするかな……


「戦力が足りてるなら、近付いた者を全て殺して一切の痕跡を消す、かな」

「ミレイさん、それだと敵がもっと力を入れて村の探索をしてきますよ」

「じゃあ、敵の王様を殺す?」

「ああ、まあ、リョウさんが居れば容易いですね。そういうのは無しの方向でお願いします」


 私だったら直接親玉の首を取りに行くけど、それは普通じゃないからダメって言われちゃった。


「レイアが狙ってるような答えを言うの、言わされてる感があって嫌なんだけど」

「少しくらい付き合ってくださいよ」

「はあ……」


 わかってるよ。何を言わせたいのかくらい。


「味方と協力して、脅威を打ち払う。その味方が強大であればあるほど良いよね。だから、私の国民になって、私たちの協力を得ながら戦う。そうレイアは言いたいんだろうけど」

「そこまで話せって言ってないじゃないですかっ!」

「そんな言葉で説得出来るとは思わない方が良いよ」

「……」


 獣人は隣国に迫害されて生きている。私たちは隣国の人間族と同じ種族にどうしても見えちゃうから、その程度であっさりと頷くとは思わない。それに、故郷に対する固執も無いわけじゃない。


「そうだな。ミレイ王の言う通りだ」

「だから、この話はこれで終わり。あ、ただ、もし良かったら私たちの国に君たちの中の誰かを招待出来たらと思うんだけど。

 もし、殺されたくないってなった時に助けを求められるように」


 この村が焼き払われて、絶望に満ちて、希望を縋るように神王国ヤマトにやって来るなら、その手を取らない理由はない。


「負けると?」

「まあ、流石にキツイんじゃない?」

「……そうだな」


 村長に睨まれたけど、軽い口調で問題を叩き付けてやる。プライドがどうとか、そんな話をしてる訳じゃない。別にここの獣人が全滅しようが本音で話すなら私は()()()()()()


 獣人族がどれだけ人間族と違うのかは知らない。そもそも人間族にだって個性があるから、単純に人数で戦力計算は出来ないんだよね。


 陵が表に出たら、防衛戦においては役に立たないけど、大将戦であれば一騎当千では止まらない実力を発揮する。こんな感じで、環境によって人それぞれの活躍の幅も変わる。


「あー、やっぱり、招待するの面倒くさいし、地図あげるよ。今から書くからちょっと待ってね」


 脳内にインプットした地図を、めちゃくちゃ簡略化した奴をササッと紙に書き写す。


「これ、読める?」

「あ、ああ」

「森の中は君たちの方が詳しいだろうから、道は自分で見つけてね」


 アルセーヌ帝国、神王国ヤマト、獣人の村、それから森や川の部分を雑に表現する。


「この山が全て神王国ヤマトだから、わかりやすいと思うよ」

「それは、助かる」

「よし、これで良い?」

「はい。……全てミレイさんがやるんですね」


 悪態つかれた気がする。まあいいや。


「じゃあ、私たちはこれで失礼しようかな」

「待て。我々はまだ何も礼をしていない」

「要らないよ別に。拐われた子供を親の元に送り届けて金をせびる王様って嫌じゃない?」


 確かに大きなビジネスチャンスにはなる。でも、そんな事よりも王様のイメージの方が大切だ。別に私は優しい訳じゃないし。


「じゃあ、帰ろっか」


 私は会議室の扉を開けた。


「ミレイさん、私が開けるので自分で開けないでください。特に公の場なのですから」

「さっき言ったでしょ? 子を親に届けただけって」

「……それってそういう意味も入ってたんですね」

「だって面倒じゃん」


 レイアに話を任せようとしたのは、あくまで私は私人として来てるよってアピールも含まれていた。ま、面倒になって私が説明しちゃったんだけどね。


「美玲」

「陵、任せた」


 最強の護衛を隣に侍らせて、私は獣人の村を後にした。確かにミリシャの思惑通りに今後の利益に繋がるような状況に持っていくことが出来た。しかも結構コスパ良かった。

 村長の娘を連れて行ったら、そりゃあ、警戒心も緩くなるよね。

 だから、そこを更に押すために善人を演じてみたんだ。


 次にやらなきゃいけないことは……


 ああ、アマたんにお礼をしなきゃだね。


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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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