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第9話

「さて、アラティナさん」


 ミリシャとのやり取りで、早速アラティナさんの力を借りる事にした。どれくらい使えるのか、その情報の精度はどれくらいなのか、何処までこの世界の最高神様が下界を把握してるのか、そのチェックも兼ねてだ。


「なんでしょう?」

「この獣人の女の子の村、何処にあるか教えて欲しいんだけど、わかったりする?」

「この子の故郷、ですか」

「アルセーヌ帝国の奴隷商人に攫われたっぽくて、この子は帰り方も故郷の場所も知らないみたい」


 本当は知ってるのかもしれないけど、私の腰よりも小さい子の発言を鵜呑みにして森の中を巡るのは勘弁したい。


「流石に外見からだけでは何も……」


 流石にキツいか。


「そっかあ。じゃあ、聞き方を変えるんだけど、この周辺に虎耳の獣人は住んでるの?」


 レイアが管理している神王国ヤマト1階には獣人も生活していて、だからこそ、虎耳以外の獣人が存在していることも知ってる。耳によって種族が違うなら、その種族の村に行けば何か手掛かりとかありそうじゃん?


「この周辺、ですか。調べるので少し待っていてください」

「調べる?」

「星の記憶に接続します」


 星の記憶? 接続?


 天照大御神ことアマたんに視線を向ける。すると、肩を竦められるだけで、アラティナさんが何をしようとしているのか、それについての解説はしてくれなかった。


「みっちゃん、最高神にのみ許された権限だと思えば良いと思うよ」


 と思ったら、軽い解説をしてくれた。


 アラティナさんが立っている床が光りだした。身体が光によってフワリと浮かされたようにすら見えた。

 宙に浮いた最高神の周りには、沢山の文字が浮かんでいて目では追い切れないほどだ。


 やがて光は収まり、アラティナさんはゆっくりと地面を踏んだ。


「わかりました。アルセーヌ帝国と神王国ヤマトの間にある……「待って、その説明だとわかんないから、地図が欲しいかも」」


 国と国の間って言われたって何処だよってなるじゃん。しかも、その間は深い森で、木々が生い茂ってる中であっさり見つかる訳なくない?

 一人の獣人の故郷を探す為にローラー作戦なんて手間の掛かる事をする気は無いよ。


「では、こちらの紙に地図を描きましょう」


 アラティナさんは特に気に留めた様子も無く、この国からアルセーヌ帝国までの航空写真の様なものをテーブルに広げた。

 それが上から見た物だってわかるのは、私が実際に上空から神王国ヤマトを何度も見たからだ。


「ここですね」


 国と国の間の森の中、私たちの国から見て右側に獣人の住処があるらしい。


「ありがと。これだったら空から行けば一瞬かな?」

「風魔法を使うのなら、そこまで時間も掛からないと思います」


 アラティナさんがそう言うし、今から行ってこようかな。


「ミレイさん、私も連れて行ってください」


 レイアが立ち上がった。


「それは良いけど……」

「じゃあ、決まりですね」

「だね。あと陵には来てもらうよ」


 私が片腕しかないから、もし何かがあった時に陵が居なかったら本当に何も対応出来なくなる。


「そうなるよな。今の状態で美玲を一人にさせる訳にはいかないし」


 何を今更、そう言いたげな顔を彼はしていた。


「頼りにしてるよ」

「なるべく離れないでくれ」

「で、獣人の子は……」

「ジェネに相手をしてもらってる」

「じゃあジェネ、手伝って」

「へ? は、はいっ」


 私から陵の弟子を何かに指名するのは、滅多にないことだ。だからか、彼女はすんごい驚いた顔をしていた。

 ねえ陵、小さい子の面倒を見るのが面倒くさいからって、弟子に世話を丸投げしたね?


 少し責めるような視線を向けてみたけど、彼は肩を竦めるばかり。さっきからずっとそれじゃん。……まあ良いんだけどさ。


「ジェネはその子を外に連れてきて。陵、レイアも行こっか」


 地図は大体覚えたし、このままひとっ飛びで目的地に向かおう。


 風魔法を使って私と陵を、風の精霊王(シルフィーネ)を呼び出して、レイアとジェネ、獣人の子を浮かせた。私たちは神王国ヤマトを飛び立った。


 アラティナさんに教わったポイントに降り立った。


「この場所、知ってる?」


 獣人の子に聞いてみる。


「知ってる……と思う」

「ふうん?」


 森の中だから、どこに行ったって見えてる光景も変わらないし、区別がつかないのかもしれない。

 だから、私も曖昧な返事をするしかない。


「陵」

「特に気配はしない」


 地図の通りに移動したのに、何も手掛かりが見つからない。ってか、ここに住処が存在してたんじゃないの?

 アラティナさんに言われた通りの場所に来ても、簡単に接触出来る訳じゃないんだね。


「師匠」

「どうした?」

「この先に結界がある」

「へえ、よく気がついたな」

「んえ、どういうこと?」


 陵とジェネが興味深い話をしてて、思わず口を挟んだ。


「王様、えっと、あそこです」


 ジェネが指をさした先は、やっぱり、私にはよくわからなかった。普通に森が続いているようにしか思えない。

 レイアに視線を向けてみる。私もわからないと首を横に振った。


「陵はわかってるの?」

「目だとわからないかな。何となく気配的に気色悪さを感じるくらい」


 陵でもわかってないんだ。へー……

 ジェネはハイエルフって特殊な種族だから、私たちが気が付かない事にも気が付けるのかもね。


「手掛かりだと思うから、私たちを案内出来る?」

「はい、良いですよ」

「ありがとう」

「ジェネ、帯剣しておけ」


 陵は鞘に収まった剣を彼女に突き出す。


「えっ、まだ私は……」

「良いから」

「……はい」


 彼女は迷った視線を陵に向けた。そして、その剣を受け取った。

 って、その剣って特殊な奴じゃない?? 陵がそれで良いなら私は何も言わないけど驚きはするよね。


「行きましょう」


 ジェネに先導されて、私たちはあっさりと知らない世界に足を踏み入れた。今までの森林とは生えている木々の種類が全く違う。


「ここ、しってる!」


 獣人の子が元気良く大きな声を出した。


「見たことあるの?」

「あるっ!」

「じゃあ、ちゃんと当たりかな」

「そのようですね」


 アラティナさんの地図は正しかった。けど、各々に特殊な技法を用いて身を隠している……と。


「美玲、レイア、後ろに」


 陵の言葉の直後、装束を身に纏った人が姿を現した。彼は私たちの前に立ちそいつと対峙した。

 って、この人の格好、見たことあるような……


「その装束、見たことがある。ここの人だったのか」


 陵の言葉にそいつは動揺を走らせた。

 私も思い出した。この装束を見たのはミリシャが殺した死骸を回収しに行った時だ。死骸を寄越せと言われて、キッパリと断ったのを覚えている。

 唯一気になるのは、この目の前の装束の人はあまり玄人ではないということ。私たちが出会った黒装束の人たちは感情の起伏を感じ取れなかった。


「この子、君の国の子じゃない? って言っても、わかんないかな?」


 獣人の女の子の背を押して、装束の人に見えるように位置を移動させる。


「ガラネ様……?」

「……様? 偉い人の子供なんだ?」


 装束の人はしまったと言った顔をした。うーん、色々と不安になる人だね、この人。


「君、あんまり上役の人じゃないでしょ。他の人連れてこれる?」

「……必ずこの場から動かないようにお願いします」


 その装束の人は木に飛び乗って、何処かに消えていった。


「どういう生活してるのかな」

「さあ?」


 村とか町とか見えないから、余計にどんな生活をしているのか想像も付かない。


「ミレイさんと私、どっちがやります?」

「この子の受け渡しは先に私がやるよ。他はレイアに任せる」

「わかりました」


 レイアが何を狙っているのかは、何となく予想が出来ていて、だからこそ、程々に口を挟んだら私は黙るつもり。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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