表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/145

第8話

「んぅ……」


 知らない天井……じゃなくて、知ってる天井だ。


 違和感のある方に視線を向けると、今まであった物、右腕が綺麗さっぱり無くなっていた。


 利き腕無いの困るなあ……


 こういう事があったら、いつもなら隣に居そうな陵が今は居ない


「んしょ」


 ベッドから立ち上がろうとして、ちょっと手間取った。

 いつも右腕を支えにして立ち上がるから、これ無いの思ってる以上に不便かもしれない。


 利き腕じゃない方で寝室の扉を開けた。


 うん、開けるの難しい。開けられたけど。


 二階から一階に降りて、リビングとダイニングが一緒になった部屋の扉を開ける。


「おはよう」

「お、おはようございます」


 すると、私の気配に気が付いていたのか、ソファの上から顔を出してた陵が軽い挨拶をしてきた。

 部屋に居るのは陵とその弟子であるハイエルフのジェネ、その隣に見知らぬ獣人の女の子、それから……


「ミレイさんっ!? やっと目覚めたんですねっ!?」


 恐らくこの部屋の中で一番心配してくれていたレイア、ダイニングに着物を纏って優雅に座る天照大御神(アマたん)が居た。


「昨日は大変だったよ」

「腕、無くなっちゃったんですね」

「やられちゃった。暫くは不便に感じるだろうね」


 腕が無くなったことは、そんなに私の中では重たい話じゃない。どっちかと言うと不便だなって気持ちが強い。


「腕以外は回復?」

「うん、大丈夫。昨日はアマたんが?」

「そだね。僕が来た時に意識が無かったから」

「ありがと、助かったよ」


 やっぱり、諸々の怪我の処置をしてくれたのはアマたんだったんだね。


 擦り傷とか、細かい出血とか、完全に見る影もないくらいに回復してる。


「陵、あの敵は?」

「殺した」

「流石」


 流石に仕事が早かった。


「美玲、これからどうする?」

「どうするって?」

「この世界の神々とってこと」

「あれ、神様だったんだ。急に襲われたから知らないんだよね」


 急に家を吹っ飛ばされて、ってあれ?


 家、直ってない?


「家を直してくれたのは?」

「もち僕」

「だよね。マジ感謝」


 アマたんが直してくれたらしい。怪我から家の欠損まで、本当に頭が上がらない。

 確かに、所々を見ると綺麗になってる場所がある気がする。


「で、神々についてだっけ。敵対するのはデメリットが多過ぎると思ってるんだけど、どう思う?」

「俺は見せしめにある程度は殺した方が良いと思ってる」

「うーん、めっちゃ過激派」


 陵に聞いたらそういう答えになるのは、簡単に想像出来た。


「僕は見せしめとして殺すのではなくて、力や富を貰うべきだと思う。最高神のアラティナに直接文句を言えば良いと思うよ」

「あーね」


 前に神々とゴタゴタがあった時はそういう事はしなかった。しなかった理由としては、こっちに被害が無かったからだ。


「レイアは?」

「私は……もし、もし出来るなら、優秀な人材を頂きたいですね」

「なる、ほどねぇ」


 大きな外枠を考える案ではないね。んまあ、それは良いとして、さっきから地味に気になってるんだけど、そこの獣人の、ハイエルフのジェネが相手をしている女の子は何処からやってきたんだろう?


「この女の子はミリシャに頼まれて預かった。後で話したいことがあるらしい」


 そんな視線に気が付いたのか、陵が説明してくれた。


「まさか、奴隷商に殴り込んだ?」

「……多分?」

「あれほど証拠を持って来いって言ったのに……」

「まあ、そうやって怒るのはミリシャと話してからで良いんじゃないか? 色々と考えがあるみたいだし」


 いや、考えがあるって……


 無いとは思うけど、攫われた、盗んだ奴隷が他国に居る事がバレたら、その国への攻撃の大義名分を与えることになる。


 たかが一人の身柄とは言え、国際的な犯罪をしたようなものなんだから。


 ……聞いてみないとわかんないし、大人しく話を待つしかないかな。


 あんまり良い方向には進まなさそうだけど……


「右腕無いの、困らない?」

「困るけど、どうしようもなくない?」


 アマたんの疑問はもっともだと思うけど、じゃあどうこうしろって言われたって、どうしようもなくない?


「ってか、りっくんもみっちゃんもそうだけど、片腕無くなったのに、平然とし過ぎ」

「流石に寂しさはあるけどね」


 今まであったはずの身体の一部が無くなったんだから、そりゃあ、何も思わないって訳にはいかないよ。


「右腕、どうしようかな〜」

「右腕を作る方法もあるけどね?」

「そうなの? アマたん教えてよ」

「機械の腕にしちゃうとか、あとは、呪いで腕を生やすとか」

「機械は良いとしても、呪いはちょっと勘弁かな」


 機械の腕、か。なんかちょっと楽しそう。


「あ、そろそろ最高神がやって来るよ」


 アマたんがそう言って少しして、この世界の最高神であるアラティナが私たちのリビングに降臨した。


「で、今回はなんだったの?」


 無礼とも取れる単刀直入な質問を最高神にぶつけた。


 私も陵もアラティナを敬う気持ちなんて殆どと言って良いほどに無い。

 神に襲撃をされたのは初めてだけど、嫌がらせとか危害を加えられたのは初めてじゃない。

 それが前回もそれなりに騒ぎになって、もう二度と神々は私たちに危害を加えないって、そんな話をしたばっかなのに私の腕は神に斬り取られた。


「その……なんと、申し開きして良いか……」

「なんで神々が私たちに干渉してきてるの?」

「その、統率が取れていない者も神の中には居まして……」


 しどろもどろって感じで、アラティナを責めても何も改善されないことはよく分かる。


「じゃあ、神々は全員殺して良いんだな?」


 その様子を見ていた陵は痺れを切らしたのか、本当に物騒なことを呟いた。

 この世界で神々が居なくなったら、環境や生活、様々な物が狂い始める。それほどに神々の存在はデカい。


「そ、それは……」

「それが嫌なら何か考えてくれ。いつもなら、美玲とアラティナさんの会話に口を挟んだりしないんだけど、今回は結構大きな実害が出たからな。

 ……もし、これが人の手によるものだったら、そいつらの周りは皆殺しにしてる」


 腕が無くなるのは大き過ぎる実害だよね。そこまで深刻には感じてないけど。


「殴ってもやり返されないとか思ってるだろ。お前ら」

「……それは、否定出来ません」


 この世界の神々は人を下に見ている。玩具として扱う奴らも沢山いる。


「と、取り敢えずは腕を、せめて代わりの物を用意しましょう」


 アラティナさんは強引に話をズラした。それには気がついてるけど、敢えて、その茶番に付き合うことにした。

 代わりの物って奴も気になるしね。


「こちらは魔術神、鍛治神、その他数名の神々の合作により生み出された物です」


 そう言って、アラティナさんはダイニングテーブルに無骨な腕を置いた。


「私の腕と大きさ違うから付けられないよね」

「新たにミレイ用の腕を作ります。どうでしょう?」

「どうでしょうって言われてもね。どうやって作るのか知らないけど、そんな簡単に作れるの?」

「多少はお時間を頂くかと」

「だから、今回は手打ちにしてくれ?」

「……はい」

「嫌だよ。これで手打ちにしたら、また同じことが起こるよね。根本的な解決に至ってない」


 二度目三度目があったら意味が無いんだよ。


「ってか、機械の腕を作るなら、神なんかより腕の良い技師を知ってるから、アラティナが干渉する隙なんてないよ」


 今まで黙っていたアマたんが口を開いた。神なんかより腕の良い技師って初めて聞いたよ?


「まあ、この技師に関してはみっちゃんに引き取ってもらう必要があるんだけどね」

「引き取る? この国に?」

「そうそう」

「天照大御神、勝手に他の世界から……」

「君がそれを言うのかい? 別世界の仲の良い神に頼まれたんだよ。だから、どうかなみっちゃん?」

「その技師に伝えておいて。私の腕を作ってくれるなら、この国に迎え入れるって」

「交渉成立だね。で、アラティナはどうするの?」


 アラティナさんが私たちに用意しようとした詫び印は、先にアマたんに結ばれてしまった。


「俺たちが欲しがっている物の場所を必ず教える」


 陵がそんなことを呟いた。


「どうだ?」

「それは可能ですが……」

「美玲は?」

「私もそれで良いよ」


 彼が提案したのは滅茶苦茶美味しい話だった。私たちの国ってかなり物資とかが不足してて、だからこそ、実は物作りを一つするのですら、かなり手間だったりする。


 だから、その提案の大きさは深く考えなくてもわかった。


「わかりました。私もそれなら異論は無いです。では……」


 あっさりと了承したアラティナさんは水晶玉を一つ取り出した。これ、レイアがグラティーナ王国の王のリリアーナと話す時に使うやつと同じ物だね。

 あの時は一級品だとばかり思ってたけど同型が存在してるんだね。


 その水晶玉をアラティナさんから受け取る。


「知りたい事は水晶玉経由で聞けば良い?」

「はい」

「うん、わかった。じゃあ、存分に使わせてもらうね」


 人手も足りてないし物資も足りてないし、どっちを取っても私たちが一から探すのは手間暇が掛かり過ぎて困ってたんだ。もちろん、ある程度はレイアが頑張って何とかしてるけどね。


 片腕の対価がこれなら、良い値が付いたと思える。


「じゃあ、アラティナさんもアマたんも好きにして良いから」


 私の片腕の話はこれでおしまい。次に処理をしないといけないのは……


 この獣人の女の子についてだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

小説家になろう 勝手にランキング

学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ