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進化したゴブリン、異国に潜入す。第4話

 とある日の夜。完全に日が暮れてしまった土地で俺は外を歩いていた。

 もちろん普通には歩いていない。ゆっくりと忍び足で石畳の上を歩く。目指すのは奴隷商の建物だ。


「今日は獣人を捕らえたらしいぞ」


 奴隷商の近くを歩いていて、急にそんな言葉が耳に入ってきた。


 獣人を捕らえただって?


「へー、どんな奴なんだ?」

「それがかなりの別嬪らしいぜ? 獣くせえらしいがなっ!!」


 がはははと下品に笑う男たち。そういう国だというのはわかってたけど会話内容が想像以上に酷い……ってか、低レベルだ。

 囚われた獣人を盗めば、ミレイ王の前で捕らわれたんだと証言してくれたりしねえかな。


 危ない賭けだろうか?


 ま、やってみるか。


 男たちが過ぎ去ったのを確認して、更に奴隷商に近付いて行く。この夜の目的は何らかの証拠を握ることだった。今回は獣人を攫う事を目的にしよう。そこまで分が悪い賭けだとも思えないしな。


 コソコソと裏を通って、人が入らないような道を通って探検を続けたけど、さっき男たちが話していた獣人の手掛かりは何も無い。


 はー……、やっぱり、そう簡単に色々解決しねえよなぁ……


 おっと!?


 こんな道に人が居るなんて……


 転がっていた大きな箱の後ろに身を隠して、歩いている人の様子を伺う。

 二人、か。うっかり口を滑らして欲しい所だけど、それは願うだけ無駄なんだろうな。


 息を潜めてじっとしていると、その男たちの声が聞こえた。


「今日の商品は数が多くて、人手が足りないらしいぞ」

「じゃあ、俺たちも中央に行った方が良いのか?」

「行こうが行くまいが、招集されるだろうな」

「まじか。じゃあ……」


 会話はこれっぽっちしか聞こえなかったけど、中央と呼ばれる場所に何かがあることはわかった。


 一応この場所は下見をしてるから、中央って呼ばれる場所が何となくどんな所かって予想はつく。

 つくけど、中央というだけあって、そのまま向かったら人に見つかる可能性はかなり高い。


 ……行くしかないんだけどな。せっかくここまで来たし。


 なるだけ見つからないように、物音をたてないように、中央と呼ばれる(俺が勝手に思ってる)場所を目指した。


 予想通りだった。段々と人が多くなってきた。


 中央と呼ばれている場所に繋がる大きな道の、その一歩手前くらいで人が多過ぎて立ち往生していた。細い路地からこっそり覗いてみるけど、今出てったら絶対に部外者が居るってバレる。


 これ以上に近付くのは難しそうだな。どうしようかな……


「おいお前、見ねえ顔だな」


 路地から中央の方向を観察してると、突然後ろから声がした。


 やべっ、バレた。


「なんか人の流れに沿ってたら着いちゃったんだよ。ここって何処なんだ?」


 喧嘩売られたら戦えば良いだけだし、あくまでも迷い込んだ体で誤魔化す。


 話しかけて来た男は一人。

 男の能力を鑑定してみると、剣術がそれなりに上手いらしいという事がわかった。


 争い事は面倒だし、極力避けたいんだけどな。


「おいおい、ここが何処か知らないで来たのかよ」

「ちなみに、どんな場所なんだ?」


 今までの答え合わせが出来たら良いと思って、その男に問いを投げてみる。


「ここは秘密の奴隷倉庫だ」

「奴隷倉庫? 秘密の、なんて言うくらいの場所を、こんなに簡単に教えて良いのか?」


 勿体ぶっておいて、場所の用途を初対面の相手に簡単に話すだろうか?


 なんて、感じた気味の悪さが的中した。


「……避けるのか」

「急に斬りかかってくるってお前、そういう事で良いんだよな?」


 油断させておいて、俺を殺すつもりだったんだな。簡単に避けられたけど。


 剣を取り出す。


 そして、斬り返した。


 流石にフェイントや読み合いのない鋭いだけの一手は、あっさりと躱されてしまう。


 ここで戦うべきか、一旦引いて考えるか。


 逃げたら追ってくるのか、それとも、放置されるのか。


 ……どっちだ?


 いや、考えるな。剣を抜いた以上は何方かが死ぬ以外に未来は無い。


 再び自分の間合いに飛び込む。相手はそれが自身の間合いでもあったのか剣を振るった。その剣を屈んで躱して、剣の間合いすらも潰す。


 師匠が言ってた。剣使いは案外、超近接戦闘が苦手だって。


 だから、そのアドバイス通りに剣を持ってる右手で、振り抜かれた相手の剣を抑えながら、左手で本気で顔面をぶん殴った。


 あっさり入った。


「ぐうっ……!?」


 痛そうな呻き声をあげて怯んだ。それを見逃す訳が無い。


 足で脚を払い、体勢を崩させる。

 崩れた体勢に、その脇腹に左手でボディブローを叩きつける。

 俺は剣を手放して、相手が剣を持っている腕を掴む。そのまま柔術を使って相手を地面に叩き付ける。

 叩き付けたと同時に相手の手から剣が離れた。と、同時に手放された剣を俺は握って、握り直して、その男の首に突き立てた。


 これくらいの剣の腕なら、まだ余裕だな。


 幸い細い人通りの少ない道だったから、目撃者は一人も居ない。……そう思いたい。


 これ、出会い頭に全員ぶっ殺して行けば良いんじゃねえか?


 いやいや、ダメだろ。


 壁……登れるかな?


 軽くジャンプして、壁をキックして、反対側の壁をキックして、更に反対側の壁をキックして、それをひたすらに繰り返して、建物の屋根に強引に登った。


 案外、やれば出来るんだな……


 そのまま屋根伝いに中央に向かった。


 中央には大きな建物が一つ。多分ここにお目当てが居るのだと思いたい。


 屋根を壊して侵入するか、それとも窓を割って侵入するか。

 労力が少ないのは窓なんだけど、窓って人目に付きやすいからなあ……


 屋根の上から下を覗き込む。あ、ちょうど良いベランダがあるじゃねえか。


 スルッと、ベランダに降り立つ前にベランダに人が居ないかしっかりと確認する。よし、居ない。


 しゅたっ


 ベランダに降り立つと、そこは木製の扉で締め切られている。

 木製の扉は観音開きになる種類の物で、俺はその扉の真ん中を剣で斬り裂いた。


 あんまり大きな音を立てずに、鍵を破壊する事に成功した。


 扉を恐る恐る開けてみる。


 良かった敵はいない。開かれた先にあった部屋は、ベッドが置かれた寝室の様だった。


 客室か?


 まあ、今は関係ねえか。


 寝室の恐らく廊下に繋がるであろう扉には鍵は掛かっていなくて、扉の取っ手があっさりと回ったもんだから拍子抜けした。


 とりあえず中央にあった御高めそうな建物への侵入に成功した。廊下には偶然にも誰も居なくて、それを良い事にそろりそろりと探索を始めた。


 いやマジで、ちょっとだけ歩いてみたけど、人の気配が全然しねえ。


 なんだよこれ。探索すんのは楽だけど不気味だな。


 歩きながら、廊下に面している扉を一つずつ開けては閉めてを繰り返す。

 その扉の先には色々な物があったりもしたんだ。それにしては、鍵が掛かってないのは不用心に思えた。


 一つ下の階に降りる。


 おっと!?


 今までとは違って、普通に人が歩いていた。息を潜めて壁に張り付く。そして、突き当たりの影に隠れてやり過ごす。


 その人が何処かに行ったのを確認して、ササッとその階の廊下も移動する。

 この階は人気もあるし、部屋の鍵も閉まってるし、容易に探索は出来なさそうだ。


 この階は一旦後回しだな。下の階に移動しよう。


 そうやって、廊下を見るだけの探索をしていて、とうとうお目当ての物がありそうな場所に辿り着いた。


 それは段のある式場にも見えて、オークションする為に物を並べるなら打って付けの構造をしていた。


 ってことは、この裏に、バックヤードに今日の商品が置かれるのか?


 その予想は的中した。


 そろりそろりと忍び足で段上の裏を覗くと、そこには複数の人が檻に閉じ込められていた。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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