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後編

 

 ある夜、二人はいつものように夢の中で報告会を開いていた。

「ええ?!ノエラ、婚約したの!」

 ノエラは十二の時、貴族院に入る直前に格上の伯爵家の次男と婚約を結んでいた。

 正式に婚約をした日の夜のことだった。

「だって、わたしだってもう十二だよ。今年はもう貴族院にだって入るし、婚約者ができてもおかしくないでしょ?」

「はあ、貴族って何かすごいよねー」

 お互いが好き合って結婚するだけではないことはさすがに知っていたが、貴族院にすら通っていないのに将来の約束をする感覚がミリアには分からなかった。知識はあっても実感は伴っていなかったのだ。

「すごいって……。ミリアだって一応貴族の血を引いているじゃない」

「わたしは貴族として登録されていないから貴族じゃないよ。彼らの言う貴族は『尊い血をその身に流していてなおかつ貴族としての誇りを持っている者』、でしょう?しかも誇りって言うのがまた貴族として幼少の頃から教育されている者って、選民意識高すぎるよ」

 あけすけなミリアの言葉にノエラは苦笑するばかりだ。

「身も蓋もない言い方だなあ、否定はしないけど。……まあ、両家共に一定以上の利があって契約したからねえ」

 文句は言えないよ、とノエラは言う。少なくとも貴族である以上逃れられないものだから、と笑った。

 子爵家は国の中枢を担うほどの伯爵家とつながりができ、伯爵家は次男の行く末を考えなくていい、有り体に言えば領地を分け与えなくて良くなり、当の次男はそのままであれば男爵の位しか得られないのに対して、婿入りすれば子爵の身分を得られる等々。それぞれ各々この婚約による利益を計算して二人の婚約が決まったのだった。

「ノエラがそう言うならまあ、いいけど。別にあの両親みたいに愛し愛される関係にとは言わないけど、せめてノエラを大切にしてくれる人ならいいなあ」

「か・な・り、壁が厚いですねー。あの人ミリアが設置した壁破れるかなあ」

 そう言って二人で笑い合った。その時は、まだお互い相手の常識とか分別を信じていた。あちらも貴族としての誇りとやらを持っているはずだから、たとえ利害から始まった関係でも歩み寄り良い関係を築くために努力してくれるだろう、と。

 しかし、願いは叶わず貴族院で相手の伯爵令息は別の伯爵令嬢と良い仲になり、もともとあった婚約が障害となるようになったのだった。


 それは、件の二人が影で『晴れて』恋人同士になって一つの季節が過ぎた頃。

「レイマール様、お待たせしました」

「いや、そこまで待っていない。気にするな」

 そう言って問題の伯爵令息レイマールは安心させるように微笑む。

「ああ、早くこのように隠れずとも貴女に逢えるようになればいいのに」

「レイマール様……」

 相手の令嬢は困ったように微笑う。

「仕方のないことですわ。貴方には婚約者がもうおられるのですもの」

「そのことなのだが」

「どうなさいました?」

 不思議そうにする彼女にレイマールは決意を秘めた目を向ける。

「私たちの障害となっている婚約を取り消そうと思っているのだ」

 婚約というのは両家が様々なことを考慮し取り決め、承認したものであり、別に好いた者ができたとしてもそうそうなかったことにはできない。いくら、貴族院に入る前に将来について安心できるようにと探した結果伯爵以上の条件に合う令嬢がおらず次点で手を打ったのだとしても。

 だから、彼女はなおさら分からないというふうに軽く頭を振る。

「まあ。どのようにするのですか?向こうもそうそう伯爵家とのつながりを絶とうとなどしませんでしょう」

「そうなんだが、もし、彼女に私と婚約を続けていられないほどの罪があるとしたら……?」

 彼はその顔に嗤いを含ませた。

「あら。確かに、そうなれば貴方の隣に立つ資格などなくなりますね」

「そもそもそのような資格があったかも疑わしいが、な。」

 二人は上手くいったときの情景を思い浮かべて、

「良いな?」

「わたくしたちの未来のためですもの」

 美しい残酷な笑いを浮かべて見つめ合った。

 そうして二人が考えたのが、婚約者であった子爵令嬢が婚約に値しない者であると公の場で認められればよい、という乱暴なものだったのだ。

 つまり、二人は互いのことしか見えていなかったのだ。特にその令嬢の方は貴族院で婿となる男性を見つけるように両親に言い含められていたのだから、子爵令嬢ごときに邪魔をされるなど許せるものではなく、身分が上の自分の方が優先されるべきだと思っていたのだ。罪を捏造されて追いやられる婚約相手のその後のことも何も考えもつかなかったのだ。

 もし、それが成功し歳を重ねてからそのことに思い至ったとしても、彼らは『若気の至り』ですませたのだろう。彼らにとっては、子爵令嬢という自分たち以下の存在はどうでもいいそこにいるだけの存在だったのだ。むしろ自分たちの役に立てて光栄だろうとさえ思っていた。

 そして、貴族同士の諍いを仲裁する役目もある国王もそれを止めなかったのは、国政にも関わり国によく貢献している伯爵家と、税を納めるのにも苦労している子爵家では伯爵家の方を優先するべきだと考えていたからだ。また、断罪した後に子爵家に温情を与えれば、感謝して忠誠心が強くなり、都合の良い優秀な魔術師の駒が手に入ると考えていた。そのような打算があったため、ろくに裏も取っていなかったのだ。もしそれが冤罪だった場合罪をかぶせられたのに恩着せがましく忠誠と強制してくる相手をどう思うかなど全く考えていなかった。自分の考えが間違っているはずがないと盲信していたのだ。

 貴族制度が長く続くうちに彼らは貴族が正義、身分が第一、最終的には身分が上のものの言うことは絶対で白も黒に黒も白に変わるという考えが浸透していた。

 もっとも、そんな扱いをすることを許さない者がいたため、ことはそう簡単に進まなかったのだが。

 彼らは、今このときも幸せになる未来しか見えていなかった。すぐそこの扉の前に内心にドロドロとした怒りを溜め込んで殴り込もうと考えている存在がいるのにも気付かず、もうすぐ願いが叶うことを信じて疑っていなかった。

 せめて、彼らは家を通じて婚約という契約を破棄もしくは撤回し、賠償を子爵家に払うという筋を通すべきだった。それをしなかったのは彼らとその保護者たちの怠慢であり、驕りだった。それを見た国の大半を占める民衆や下級貴族たちがどう思うのか想像できなかったのだ。




 広間の扉が開き、闖入者は臆すことなく歩んでくる。すでに揃っていた人々は驚きながら扉の方に注目する。

 皆に見られながら入ってきたのはミリアだった。粛々とだが臆すことなくミリアは広間の中央まで進み国王に向かって跪く。

「其方は……」

「国王陛下にはお初にお目にかかります。コールスラン神殿に所属しておりますミリアと申します」

「其方があの……。して、何用か。衛兵には誰も通すなと命じてあったはずだが」

「申し訳ございません。わたくしが無理に通ってきたのです。ですから、彼らをお咎めにならぬよう。――本日は、ここにおります子爵令嬢が不当な扱いを受けていると聞いていてもたってもいられずに参上した次第です」

「ほう」

 国王は眼光鋭くミリアを射貫く。

「其方は確か孤児であったな。なぜ子爵令嬢をかばおうとする」

 確かにいくらコールスラン神殿が子爵領に一番近い神殿で、ミリアがその神殿長に認められた優秀な魔術師といえども、貴族令嬢であるノエラと知り合う機会などそうないはずである。

「それは、こちらをご覧いただければお分かりになるかと」

 そう言ってミリアは両方の手首につけられた腕輪を外そうとする。

『ミリアっ。駄目だよ!そんなことしたらっ』

 『念話』だ。これは空気を震えさせずに話す魔術で『念話』の優れたところは、普通に話すよりもずっと早く言葉や意思を伝えることができる点にある。ただし、この二人の使う『念話』は魔術とは違い魔力を使わないこの双子特有のものであった。そのために魔術師も揃っているこの場でも気付かれることはない。

『あのねえ。わたしはこれでもかなり怒っているんだよ。だから今回はノエラのことは聞けないよ。だってノエラをこんなふうに見せしめにするなんて信じられないし、大体いくら伯爵家で子爵家よりも身分が上で資金力もあるからって元々あった婚約を破棄させるなんてあり得ないし、自分たちの方がどう考えても悪いのに勝手に捏造してノエラが悪いってことにして慰謝料まで払わせようとしてるし、それを王族が黙認してるし、本当に理解できない。せめてお家同士の話し合いで済ませてくれれば黙っていたのに』

『で、でも』

『それとも、あんな男でも好き?』

 そうミリアが訊くとノエラは躊躇いながらも答える。

『好きじゃないけど……』

 それを聞いたミリアは苦笑したように正直だね、と返した。

『だったら、この際この国から出ちゃおうよ。こんな、自分たちのことしか考えていない人たちが中枢にいる国なんてこっちからしたら不条理なだけだよ。双子だってばらせば外に出たって文句言われないし、きっと。むしろ厄介払いができたって喜ぶんじゃない?』

 普段はあまり言葉の多い方ではないミリアが怒濤のように文句を言い連ねる。

『そ、そんな乱暴なこと』

『それとも、両親に申し訳ないとか思ってる?あの人たち結局自分たちのことしか考えていないよ』

『それは、……知ってるよ、とっくに。特にお父様はわたしのことは愛してる、可愛い、って言いながら見た目の良い家を飾る都合のいいモノとしか考えていないことくらい、ね。お母様はお母様でわたしを通してお父様を見ているだけ。それに弟か妹も生まれるみたいだし、わたしがいなくても問題ないだろうし』

 ノエラはどこか寂しそうに言う。それに気付いているのかいないのか、ミリアは明るくノエラに『提案』する。

『なら、一緒に行こ。わたし、ずっとノエラと一緒に暮らすのが夢だったんだ』

『そう、そうだね。ずいぶんなやり方だけど確かにこの国から出てしまえば一緒に暮らすのだって夢じゃないかもしれない。――分かった、いいよ。ミリアの思った通りにして』

『うん』

 そうこうするうちにミリアは腕輪を外し終える。すると、

「どう言うことだ」

 腕輪を外す様子を見ていた国王が呆然として思わずというふうに声をもらし、次いで睨み付けるようにしてミリアを、ノエラを、そして子爵夫妻を見る。

 ミリアが身につけていた腕輪は一種の魔術具で、容姿を変えることのできる物だった。はじめは神殿長が用意した物をつけていたが、ミリアが魔術の研究に没頭するようになってからは自分で作った物を使っていた。今さっきまで使っていた物は、魔力は大分喰われるがその分魔術具などを規制している城内でも気付かれることのない仕様の代物だった。勿論、ミリアがそれを開発した理由は双子であることが露見すればノエラが一番危険だと考えたからだ。それを知っていたからその魔術具を見た神殿長はため息をつきながらも使うことを許可したのだ。

 そうして誰にも気付かれることのなかった魔術具を外したことで、ノエラと瓜二つの容姿が晒されたのだった。

「どう言うことだ?」

 国王は針を落としてもその音が聞こえそうなくらい静まり返った場に今度は詰問口調で言葉を落とした。

「……あ」

 子爵夫妻は自分たちが捨てた子が今、ここで現れるとは露程にも考えていなかったため、反応を返すこともできずにいた。

「ミリアは」

 重苦しいほどの沈黙を破ったのはノエラだった。わざわざこの状態を作り出した当人のミリアはどこか面白そうにこの場の面々を見回していて、当てになりそうになかったから仕方なく口を開いたのだ。『念話』で文句をいいながら。

「わたくしの双子の片割れです」

 そうノエラが言った途端、ザワリとどよめいた。声高に言う者はいなかったが、少なくとも声を張り上げなければ全員に声を届けることはできないくらいには騒がしくなった。

 まさか、と言う声。恐ろしい、凶事の前触れだ、と言う者など様々だが、双子を誰も彼もどこか化け物を見るような目で見ていた。

 子爵夫人だけは、

「ノエラ!」

 血相を変えて悲鳴を上げた。彼女はどうやら双子であることに気付いていないと思っていたようだ。子爵はそんな妻を落ち着かせようと必死だ。

 そんな中、

「皆の者、鎮まれ」

 国王が声を上げ、たったそれだけでその場の者全てが押し黙った。その辺はさすが一国の王である。

「今は双子の吉凶のことを論じるときではない。問題は子爵令嬢が伯爵令嬢に行ったという悪意ある行為のことだ」

「お言葉ですが、ノエラがそのようなことをする暇はなかったかと存じます」

 ノエラは子爵家の財政状況を少しでも良くしようと奔走していたのだ。そんな無駄なことに使う時間はなかった。

 しかし、

「ふん、其方が子爵令嬢と姉妹であるのならばその証言は信用に値しない」

 国王は先程までと違い、ミリアの言葉を欠片も聞く気がないのがありありと分かる態度で、そして何よりも汚らしいものを見るような目をして彼女の言葉を切って捨てた。それは、双子蔑視を体現していた。双子の吉凶は関係ないと言ったその当人が、そのような態度を取ったのだ。姉妹だから証言にならないのではなく双子だから駄目だ、と。

 ミリアがそれをどこか失望の目で見た一方で、ノエラを貶めた張本人の伯爵令息・令嬢は、国王の態度に後押しされたのか、言いたい放題自らの言い分を主張しだす。

「暇ならいくらでもあっただろう!そいつは授業など実技以外ほとんど受けていなかったのだからな!」

「そうですわ。わたくしたちが真面目に先生方のお話を聞いている間に悪事を働いていたのです!」

 それに続いて一緒になってその場にいた関係者という貴族の子女たちがノエラを非難する。

 それをまとめると、そもそも子爵令嬢という立場でしかないのに国の中枢を担うほどの伯爵家の令息と契ろうとすること自体が烏滸がましい、婚約までこぎ着けたのも何か裏で細工したのだろう、そのような性根の者を国の次代を担う人物と結ばせることはできない、そもそも凶事の前触れたる双子をこの国に残しておくことなどできない、といったものだった。

 その中で、子爵夫妻はミリアが悪いと言いたげな目で睨み付け、罵った。

「この、悪魔めが!」

「ノエラを誑かしたんだろうっ」

 彼らはミリアがノエラを唆したのだと思っているらしい。それは、伯爵令息たちの言うとおりノエラが悪事を働いたと言っているも同然なのだが気付かないらしい。彼らにとってノエラは自分たちの愛の象徴だから愛しただけに過ぎないのだ。

「そうですか」

 喧々囂々としたなかでぽつりとミリアが諦めたような声でつぶやいた。

 この惨状はとても醜いものだった。国王らの対応は王侯貴族としては間違ったものではなかった。しかし、子爵家を切り捨てるかのようなやり方はあまりにも横暴だった。これによって下級貴族たちの不信感はかなりのものとなっただろう。子爵夫妻は下級貴族家の当主としては目上の者に睨まれたものを切り捨てると言うやり方は賢明なものだったかもしれない。しかし無情なその方法は貴族からは非難され領民からはいずれ自分たちもそうなるのではないかという疑念を抱かせるやり方だ。

 片割れ(ノエラ)にはああ言ったが、彼女がどうしても国を離れたいと言ったり、想像と違ってこの国の王族をはじめとする貴族たちの考えが自分たちに少しでも寄り添うものだったりしたら国を出ないつもりだった。ミリアの方がまだましだが、二人とも本当の市井の暮らしというものを知らないのに、国まで変えて生きていくというのは困難なことでかなりの危険を伴うことを理解していたからだ。それくらいだったら多少の不愉快なことは飲み込んで、今まで通りの生活をするか、神殿長は双子に偏見を持っていないのを確認しているからから神殿にノエラを迎え入れて暮らすかしようと思っていた。

 しかし、実際には彼らは自分たちのことしか考えず、自らの考えこそが正しいと疑いもしていない。このような者たちが頂点にいるこの国に自分たちの居場所はないと今回のことで嫌と言うほど身にしみた。これ以上この国に大切な片割れを置いておくことはできないとミリアが断じるには十分な出来事だったのだ。

『ノエラ』

『うん……』

 その『声』はやはりどこか沈んでいた。

『やっぱりイヤ?』

『ううん、そうじゃないよ。でも、なんと言ったって今までわたしを育ててくれたのはお父様とお母様だもの。そう簡単に切り捨てられないよ』

『別に忘れる必要なんてないよ。ほとぼりが冷めた頃に会いにこればいいし、ね。別に罰せられるようなことに手を出しているわけではないでしょう?』

『うん。――また、会える?』

『生きてさえいれば』

 実際に生きていたからもう一度肉親に会えたミリアが言うことだから妙に説得力がある。

『生きていれば、かあ。……確かにこのままじゃ、どうなるかわかんないもんね。まさに命あっての物種だね』

『そうそう。戦略的撤退ってやつ』

『ふふ、逃げるって言うんだよ、それ』

『まあね。――……ごめんね』

 おそらく、今回のことがなくてもそのうち双子であることは露見してしまっただろう。人の口には戸は立てられない。ミリアだって一日中どこでも腕輪をつけているわけではない。どこかできっと綻びが生じて、表に出てしまうことだった。だからといって、このタイミングで必ずしもやらなければならないことでもなかった。それに、そうなる前にこの国を出てノエラとの関係を探られないようにしようと思っていた。その時にはダメ元で他国にあるスレイル教の神殿を頼ることも考えていた。ここで出しゃばらなければもうしばらくはノエラが家族と一緒に居られる時間を持てただろう。

『何を謝っているの?ミリアが謝ることなんて何一つないじゃない』

 ノエラは呆れたような笑いを含ませて『声』をとばしてくる。

『これからはずっと一緒に居られるんだから。でしょ?』

『うん』


「「ずっと一緒」」


 双子はまだまだ騒がしい中、不思議と気付かれることなく手を繋いで広間から、国から消えていった。




 彼らの一部が自分たちの失ったものが何だったのか気付くのは、ずっと後になってから。

 後悔の意味を深く理解した頃、もう取り返しがつかないことも悟ったのだった。


 美しい花園も美しいままにしようと思えば手入れが必要となる。

 何もしなければ雑草がはびこり、彼らが『美しい』と評する姿とは全く違うものとなる。逆に傲慢に同じものを植え続ければ土地は疲弊していつの日か何も生えぬ不毛の地と化してしまうだろう。

 彼らは国の手入れを怠った。美しい花を愛でてもそれを支える土や虫を彼らは嫌ってちゃんと見ることをしなかった。

 美しいもの、自己に都合の良いことしか受け入れず、その結果彼らを支える土台が揺らいでも気付かず、崩壊が始まって初めて自分たちの下にあるものの存在に目が行くのだった。いや、そうなってさえ誰かに責任を押しつけ開き直る。まさに『腐敗』という言葉が似合う状態だった。

 崩壊が始まってしまえば止めることは不可能であるのに、そうなるまで気付かない。

 なぜ、こうなってしまったのか。

 彼らはその真の理由に至ることができたのだろうか――。



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