アメノハバキリ作戦
ー護衛艦あかぎー
【アメノハバキリ作戦前線司令部】
前線司令部は空母あかぎに設置された。
護衛艦あかぎは、いずも型の進化形態であり、司令部機能が充実しているのだ。
特殊作戦群群長と第5護衛隊群群司令が詰め、指揮を執ることとなる。
空母あかぎの艦長は、航空自衛隊飛行教導群出身の1等空佐であり、史上最年少の1等空佐でもある八洲勇人が務める。
米軍の伝統に習い、パイロット出身の幹部が艦長となったのだ。
彼は野心家として知られていた。
適性を問題視する声もあったが、的確な判断力が彼にはあった。
―陸上自衛隊陸上総隊司令部(朝霞)―
統合任務部隊の会議は終盤に差し掛かっていた。
洋介は手を挙げる。
それに対し、司令官は怪訝そうに訪ねた。周りの視線も集まる。
「どうしたね……?洋介君」
「自分を……地上部隊に同行させてください」
「「……!!」」
洋介は美香を自分の手で助けたいのだ。
当然、司令官は拒否する。
「まあ気持ちは分かるが……」
そこに幸一が割って入る。
「やらせてやりましょう」
「「!?」」
「通信担当だし、特殊作戦群とあかぎの間の連絡要員なら、適任でしょう?」
幸一がそう言うと、司令官も頷いた。
数年前にヤマト作戦を成功させ、陛下をお守りした戸村大佐に、海軍や海自の関係者は頭が上がらないのだ。
洋介は会議出席者に深く頭を下げた。
幸一の妻は、イージス艦ちょうかいで殉職しており、彼の心に深い傷をもたらしたのだ。
惚れた女を何としてでも助けたい……。
息子の気持ちは痛いほど分かっていた。
1人の参加者が口を開く。
「さながら、彼は特殊作戦群を持ち、北朝鮮から西条美香を救うスサノオですね」
ヤマタノオロチ退治のエピソードになぞらえた表現である。彼は日本神話に詳しいようだった。
司令官はフッと笑った。
「どこかのリメイク怪獣映画でも、そのエピソードに登場する、ある飲料が作戦名に用いられていたな……。あ!!もしかして!!」
司令官は何かに気付いたようだった。
「戸村大佐……始めからこれを見越して、『アメノハバキリ』という作戦名を!?」
幸一は「左様です」と言った。
陸上総隊司令官はまた笑った後、姿勢を正して洋介に語りかける。
「洋介君。君の役割は重大だ。恋人を必ず奴らから取り返せ!!」
洋介の力強い返事が部屋に響いた。