悪ー四拾六ー
建物の上から上へと駆け跳び自分の住む家のある住宅街にたどり着く。
「…ここでの生活も終わりか」
一人感傷に浸りながらに、その一つ一つを思い出すためにか上から降りた。
街並みを見、感慨にふける。
僅か一ケ月しかここでは過ごしていないというのに妙に長く感じられた。
それほどこの街に思い入れがあった、ということなのだろうか。
これからまた旅に出る。
いつまで続くのか分からない、いつ終わるのか分からない、そもそも終わりがあるのか分からない長い長い旅を。
これまでそのために幾つか街に訪れた。とある目的のため、役割を果たすために。
だがそのどれもが一週間もすれば終わっていたのだ。それと比べればこの街にいた滞在期間は過去最長とも言えよう。
だから長く感じられたのだろうか。
だがそれも終わる。例えどれだけ長く滞在していようと結局はココも同様に出なくてはならないのだ。
もっと言うなら、役目を終えたところにいる必要性は無い。
目的もここには無いことも分かった。
だから。
今日をもって。
僕たちはこの街を出る。
それはいつもと変わらない、僕たちにとってはいつも通りのことであった。
ここで過ごした時間は所詮ただの過去に過ぎない。
この街での出来事も、ユニアド学園で過ごしたことも、P組のクラスとの日々も、カナデさんとサヤさんとで過ごした時間も。
ただの過去だ。さして特別なことではない。
それもいつも通りのことだ。




