悪ー弐拾壱ー
ユニアドには外周部と中心部の二つに分けられている。
その区切りする判断基準は“廃墟”があるかどうか”だ。
事実、その区画ラインは面白いことにハッキリと廃墟とそうでない建物とで分けられている。
近年、街の組合ではこれを憂慮し、廃墟を取り壊し、そこに新しい施設や建物を建てるという計画が為されていた。
しかし、あまりにも多すぎる廃墟の数に予算が大幅にオーバーし、現在は手付かずという具合になっている。
そのためか、ユニアドの中心部と外周部に接する中間ラインは建物はおろか廃墟も無い不毛地帯となっている。
「ようやく中間ラインか…」
五人の内の一人が呟く。この辺りは風が強く、大声でも出さない限りとてもじゃないが言葉のやり取りなど出来ないだろう。
それでも、その声が寡黙なアイツのものではないことだけは分かる。
中間ラインでの範囲はそれほど広くはない。走ればすぐに中心部にたどり着けるほどの距離だ。
それでも無駄な体力は使うまいと歩いていく。
周りには身を隠すものはほとんどないが、まずそもそもここに人などいないはずなので待ち伏せや集団による襲撃という心配は無いだろう。
そうこうしている内に風が弱くなるのを感じた。
いつの間にか中心部に辿り着いたようだ。見るとチラホラとこの街の住人らしき者が数人見て取れた。
「で、今日はどこを襲撃するんだ?いい加減教えてくれたっていいダロ?」
ゴツい奴が無遠慮な声量で話しかけてくる。
「バカヤロ!そんな大声で言うんじゃねぇよ!」
小柄なデブが注意するが、お前も大きい。
「ハァッ…。これだから脳味噌筋肉な奴は嫌いなんですよね〜」
「「なんだとっ!?」」
長身の奴がわざと二人に聞こえるような声量で言ったのを、二人が聞き逃すはずがなかった。
これでは時間の無駄だ。これだから頭の足りない奴らは嫌いなんだ。
「ここでは目立つ。黙ってついて来い」
そう一言言って、裏路地に入り込む。
いい加減、そろそろ身を隠さないと住民に通報されかねない。なにせ、ただでさえ見た目がフードで顔と体に装着した武器を隠した、怪しい姿なのだから。
後ろにまずあの寡黙な奴が、その後あの三バカ共がついて来た。
ユニアドの中心部と言ってもそこには必ずしも不良やホームレスがいないという訳ではない。
ただ外周部にそういうのが多いだけで、中心部にも少なからずには存在する。
その者達の主たる生息域はこのように建物と建物の間に出来る裏路地だ。
ここなら身を隠す事も出来る上に移動も制限はあるが可能だ。まさにうってつけであろう。
しばらく歩き、大分人気が少なくなったのを確認する。
「よし、それじゃあ今日の襲撃場所を伝える」
これを伝える前に、俺にはこの三バカ共が笑うことは予想出来ていた。
唯一つ、寡黙なコイツも食いつくとは思ってもみなかったが。




