CASE.21 既知の非常識と未知の常識
ポイント評価やブクマが増えているみたいで嬉しいですね(^-^)
あ、そういえば感想は一言だけでもいいので頂けたら嬉しいです( ̄▽ ̄)
誤字脱字の報告とかもあれば嬉しい……無い方が良いんですけどね(笑)
準備を終えた俺とオルカちゃんはこの街を出て西の村へと歩き始めていた。
俺はいつもの格好で、何時もの荷物を新しく買ったリュックの中に入れて背負っている。腰には勿論、鉄の剣も差してある。
オルカちゃんの依頼の時の服装は割と堅実的で、生地の軽い短パンに黒の厚めのタイツと革製のブーツ、上は白の長袖シャツで胸元に大きなレースリボンが付いているもの。ワンピースドレスに比べて格段に動きやすくなっていて、そして背中には体格に合わない巨大なリュックを背負っていた。
結局、「戦闘ではまるで役に立てないから荷物持ちをやるわ」とオルカちゃんが自ら申し出て、そしてこういった依頼の為に必要なものは全てオルカちゃんが管理してくれるようになった。
前の四人組と同じ事をしているのがどうにも気に食わなくて、その事を告げると
「アイツらはアタシの使いが荒かったけど、これぐらいなら全然平気よ。気にしないで頂戴」
と軽くあしらわれた。やはり、オルカちゃんは見た目に依らず根性がある。
「いやー、これだけ晴れていたら絶好のピクニック日和だな」
「”ぴくにっく”って何かしら?」
「あれ、知らない? 晴れた日に軽食を作って自然豊かな所に散歩に出かける事なんだけど」
「へぇ、初めて聞いたわ。イスミは変な事は知ってるのね?」
「へ、変な事か?」
「変な事よ。だって、モンスターがうようよいるのに気軽に散歩になんか行けないじゃない」
「あぁ、確かに言われてみれば」
「……ホント、変なの」
おっと危ない危ない。どうやらこっちの世界にはピクニックの文化が無さそうだ。横からジト目でオルカちゃんに見つめられる俺は、ハハハ、と乾いた笑いしか出せなかった。
オルカちゃんには、俺が異世界人だという事は伏せてある。と言うよりは、そう疑われるような行為をしない様にしている。
別にオルカちゃんになら知られてもいい気がするのだけど、どこで会話に聞き耳が立てられているか分からない以上、出来る限り情報漏れが起きる事を避けたかった。どこかのタイミングでは話そうとは思っているけど。
「……あっ、あそこにニードラが居るわ」
「どれどれ……あ、あれがニードラなのか」
小さな指が差す方向の茂みで、確かにそいつはいた。
丸太の様な物を背負ったナメクジ、というのがパッと見た感想だろうか。それがノロノロと地面を這って進んでいるのが遠目に見えた。
「初めて見た」
「え、そうなの? 珍しいモンスターって訳でもないのに、変わってるわね」
「いや、ほら。俺ゴブリンばっかりの所から来たからさ」
嘘はついていない。召喚された場所の付近にはゴブリンしか見られなかったのだ。
「あー、まぁそう言う地域もあるわね。なら仕方ないわ」
「因みにだけど、あれってどんな攻撃をするんだ?」
「基本的には背中の木から精製した枝を飛ばしてくるわ。でもそれ以外に攻撃方法は持ってないみたいだし、何より行動が遅いから子供でも倒せるわよ。ああでも、少し堅いらしいわ」
「ゴブリンよりも倒すの楽じゃん」
「そりゃそうよ。自然系モンスターの中では最弱だもの」
「自然系モンスター?」
「……えっ、イスミ本気で言ってるの?」
「えっ?」
驚いた表情で俺を見てくるオルカちゃん。もしかして、こちらの世界では”自然系モンスター”なる言葉は常識なのだろうか。
「……その様子だと本当に知らない様ね。はぁ……今どきの子供でも知ってる常識よ?
イスミ、もしかして学校に行って無かったの?」
「……行って無かった、かな」
「そう……それなら仕方ないわね。
ならアタシが直々に説明してあげるから、感謝してしっかり聞きなさいよっ?」
「う、うん……」
「この世界のモンスターは大きく分けて三種類。自然系モンスターと魔系モンスター、そしてその他よ。
自然系モンスターは文字通り、自然に生息するモンスターの事を指すわ。殆どのモンスターがこれに当てはまるの。ゴブリンやスライム、ドラゴンなどもこっちに含まれるわ。
魔系モンスターは異形の者、という風に定義付けられているけど、正直な所明確な定義は無いわ。インプやデーモン、スケルトンやゴースト系は全部こっちね。
基本的にはこの二つに属するんだけど、ごく稀にどちらでも無いモンスターがいるの。それがその他に属しているわ。殆ど例が無いのだけど、少し前に遺跡で鉄の塊のモンスターが現れたって騒ぎになっていて、それがその他に属しているわ」
「という事は、自然系と魔系を知っておけば基本的には大丈夫、ってわけ?」
「まぁ、言ってしまえばそうなるわね。
というか、冒険者ならこれぐらい知っておきなさいよ!!」
「そ、そうだね……」
鋭い所を指摘され、苦い顔をしながら道なりに進んでいると、進路の先に例のニードラが見えた。
「あー、良い感じに道を塞いでるな」
「本当ね……イスミ、試しに戦ってみたら?」
「え、いいの?」
「別に戦って困るような事は無いわよ。と言っても、落とすアイテムなんて枝ばっかりで大した価値にならないんだけど……」
「まぁ、取り敢えず戦闘経験はしておきたいから」
そう言って俺はオルカちゃんに自分のリュックを見て貰って、腰の剣を引き抜いた。ゴブリンより弱いらしいから素手で倒せるのは明らかだけど、オルカちゃんが見ている以上そんな事出来る訳がない。
運の良い事に、ニードラは俺とは反対側を向いている。先手必勝、俺は迷う事無くソイツに駆け寄り、丸太部分に鉄の剣を振り下ろした。
「おらっ!!」
「──────!?」
堅い、と聞いていた割には剣がすんなりと丸太を両断し、ニードラはビクンと身体を跳ねさせると息絶えたらしく、そのまま地面に溶けていった。そして、そこにはオルカちゃんが言った通り、一本の細い枝が落ちていた。
「あー、やっぱ枝なのか」
「……」
「ん? どうかした?」
その枝を拾ってオルカちゃんの所に戻ると、何故か豆鉄砲を食らったような顔をしていた。その理由を尋ねると、少女はその顔のまま口だけを動かした。
「な、何でニードラを一撃で倒せるのよっ!?」
「ええっ!? ま、マズかった……?」
「マズいとかそう言う話じゃなくて!!
──────ああもうっ、どうしてイスミはこんなに常識が無いのよ……」
どうやら今の一瞬の出来事でオルカちゃんは俺に呆れた様だ。こんな短時間で少女にため息をつかせたのだから、俺、ある意味才能があるのでは?
「いい? 駆け出しの冒険者がニードラを一刀両断なんて出来っこないのよ!!
なのにイスミは軽々としちゃって──────はぁ……アタシ、組む相手間違えたかも」
「えっそれ酷くないっ!?」
「冗談よ……多分」
「信用ないんだけど!?」
「一々うるさいわよっ。ほら、倒したんだからさっさと行くわよっ!!」
「あっちょっと待って!!」
何が気に食わないのか、オルカちゃんは俺がリュックを背負い終わるのを待たずに一人スタスタ歩いていってしまう。どうやら、俺はこの先も彼女に振り回される事になりそうだ。
枝を落とすモンスターって、想像しにくいですね……トレントとかだと大き過ぎるし(^-^;
オルカちゃん、デレ過ぎてない? 大丈夫?
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