CASE.20 母性溢れる年下
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・ライノボア,
草原地帯を生息地とする、四足歩行の大型猪。剛毛故に弓矢などの攻撃は通りにくく、空に向かって反り返った二本の牙による突き攻撃は、初心者用の軽装備を貫通する程の鋭さを持つ。
また、突進攻撃も行い直線にしか突進しないが、万が一食らってしまうと防具の強さ関係無しに吹き飛んでしまうので要注意である。弱点は近接武器による斬撃攻撃、又は雷。
<ドロップアイテム>
・猪の肉
・太い牙
・硬い毛皮
・???
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・ゴブリン,
主だった生息地は無く、街や森林地帯、砂漠地帯や湿地帯などありとあらゆる場所で見られる。醜い小鬼のような姿をし、基本的には集団で行動をする。
単体では最弱のモンスターとして扱われるが、大規模な集団だと小国程度なら滅んでしまう程の戦闘力を有するので注意が必要である。また、本能的に火に弱い。
<ドロップアイテム>
・ゴブリンの核
・ゴブリンの角
・ゴブリンの剣
・???
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(……結構な数狩ってるはずなのに、どうしても最後の一つが手に入らないな)
あれから数日経った朝、朝食に向かう前に図鑑を確認し、どうしても埋まらないあと一つの項目に悶々としていると、ドアがノックされる音が聞こえて来た。
「イスミ、起きてるの?」
「起きてるよ」
「そう、ならさっさと朝食に行きましょう」
「ん、ちょっと待ってて」
パタンと重みのある音を立てて図鑑を閉じ、大袋の中に放り込んだ俺は貨幣入れと剣を持って玄関の方に向かう。
先輩冒険者達の話によると基本的に武器は持ち歩くものらしく、それは食事の時も例外ではないらしい。
玄関扉を開けた先には、いつもの様にオルカちゃんが立っていた。
オルカちゃんは依頼を受けるとき以外は基本的にワンピースドレスで着飾っていて、貴族のお嬢さんの様な雰囲気が出る。まぁ、だからあの四人組に絡まれたのかもしれない。
「ごめん待たせちゃって」
「本当よっ!! ……まぁいいわ。早く行くわよ?」
「あ、待って待って──────」
決して機嫌が悪い訳では無く、今日もツン前回なオルカちゃんは俺を置いて先々進んで行くのだった。
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「で、今日は何するつもり?」
朝食の魚コースをフォークで突っつきながら、オルカちゃんが尋ねて来た。
「取り敢えずいつも通りゴブリン狩りと、何しようか……」
「何よ、何も決めてないの? リーダーなんだからしっかりしてよねっ」
「ご、ごめん……」
パーティーの中では『リーダー』と『サブリーダー』なる役職があり、名前の通り『リーダー』が一番の発言力を持ち、その次に『サブリーダー』が力を持っている。
現状二人しか居ない俺達は、俺がリーダー、オルカちゃんがサブリーダーという事で決定し、依頼を俺の一存で決める事で話が纏まっていた……筈なのに。
「ならそうね……Eランクの採取系の依頼だと、この時期なら夜紅花の採取ね」
「オルカちゃんFランクなのにEランクの依頼を知ってるんだ?」
「何とぼけた事言ってんのよ、一つ上のランクでも採取依頼なら受けられるでしょ」
「あっ、そ、そうだった……完全に忘れてた」
「もう……ホント、どっかのリーダーがしっかりしないから、このアタシが依頼を把握しないといけないのよ?」
はぁ、とオルカちゃんにため息をつかれてしまった。
オルカちゃんはFランクで年下だけど、もう一ヶ月近くも冒険者を続けているので、実際は俺なんかより全然ギルドに詳しい。それに戦闘が出来ない為に採取依頼を中心に依頼をこなしている為、そっち方面の知識ではまるで頼りっきりである。
「ごめんって。じゃあ取り敢えずその依頼を受けるとして、ついでにゴブリンも退治しておこうか」
「ううん、それは無理よ」
「え、ど、どうして?」
「それにはまず夜紅花の採取依頼について説明した方が良さそうね」
オルカちゃんの話によると、夜紅花はこの街を西に出て、そこから二日歩いた先にある村を拠点としなければならないらしい。夜紅花は少し特殊な花で、夜になるとその村の近くの草原の地面から蕾を突き出し、真っ赤な花を咲かせるらしい。朝になると花は閉じ、蕾は再び地面に潜るので夜にしか採取出来ないという、手間のかかる花だそうだ。
「……そして西の方にはゴブリンが出なくて、朝はニードラ、夜はバーンフライが出るのよ。
因みにだけど、この花を一本摘んで納品すれば鉄貨二枚になるから、一人当たりの最低ノルマは十本って所ね。でも流石にそれだけじゃ行くだけ勿体無いから、出来る限り摘んで帰りましょ」
「なるほど。なら今回はこの一つだけを受けた方が良さそうだな。
でも、歩いて二日って事は、もしかして野宿?」
「もちろんそうなるわ。もし金に糸目をつけないって言うなら村まで馬車で行けるけど、一人当たり銀貨一枚よ?
Eランクの依頼を受ける為に銀貨一枚払ってちゃ、元も子もないでしょ?」
銀貨一枚稼ぐには最低限五十本もの夜紅花を摘み取らなければならない。宿の宿泊代が一日銅貨二枚という事を考えれば、七十本だ。どれだけの頻度で花が地面から出て来るのかは分からないけど、流石に自分から労働量を増やしたいとは思わない。
「なら野宿でいこう。オルカちゃんは、野宿ってした事ある?」
「いいえ、無いわ。そもそも一人で野宿なんて出来ると思う?」
「……あー、ゴメン。失言だったか?」
「別に謝る事じゃないわ。そもそもFランクの依頼は近場で行えるものばかりだから、基本的に野宿が必要になって来る依頼を受け始めるのってEランク以上になってからだもの」
「へぇ、そうなんだ」
その事は初めて聞いた。恐らく遠出になると不測の事態にギルドの対応が遅れるからとか、そういう配慮なのだろう。最低ランクのFだと、まだ身を守れる程の実力が無いと見なされる様だ。
「……本当に無知なのね。ったく、どうせイスミの事だから野宿に必要な物も用意出来ないでしょ?」
「うっ……その通りです」
「本ッ当にダメダメね!!
(……アタシが居ないと、何にも出来ないんだから……)」
「えっ、何か言った?」
「いいい言って無いわよっ!?
……と、とにかくアンタは今出来る準備をして、ギルドでその依頼を受けて来なさい?
その間にアタシが野宿の準備をしておいてあげるから」
「え、本当に? 助かるよ、ありがとう!!」
「ふ、ふんっ!! これぐらい出来て当然よっ!!」
手放しに褒められたのが嬉しかったのか、頬を真っ赤にして顔を背けるオルカちゃん。
でも実際、こうやって率先して準備をしてくれることに本当に助かっているのだ。一応常識的な範疇での野宿というものは知っている。だけどこちらの世界でもその知識が通用するか分からない以上、俺が野宿の準備をするなんていう危険な真似は避けたかった。
「やる事は決まったわね。それじゃあお互い準備を終えて、またここに集合するのよ、良いわね?」
「おう、了解っ」
何気に面倒見のいいオルカちゃんと口約束を交わし、俺は席を立った。
オルカちゃん、やっぱりいい子だったんだなぁ……
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