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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十六章
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14話 なぜあの時僕は……

 光の神様に体調不良(二日酔い)を治してもらい。森の女神様にはすりおろしリンゴ、美食神様には梅がゆを〝あーん〟で食べさせていただくというスペシャルなイベントを体験した。ハッピーウイーク四日目をションボリと過ごすことになると覚悟したのだが、最高の一日となった。




「よし! 気合十分! 体調万全! いくぞ!」


 ハッピーウイーク五日目。


 この素晴らしい時間も終盤に差し掛かり焦りがないこともないが、昨日が幸せ過ぎたので体中に活力がみなぎっている。


 今日一日、三女神様方を全力でおもてなししつつ、自分も全力で楽しむ覚悟も万全だ。


 部屋を出てまずは朝食に向かう。


 といっても、予定を合わせていないから女神様方が居るか分からないが、朝のルーティン的にデッキのカフェにいるだろう。



「光の神様、森の女神様、美食神様、おはようございます」


 予想通り女神様方はカフェでゆっくりと朝の時間を楽しんでいた。まあ、僕が呼びに行かなくても合流している美食神様がレアと言えばレアだけど、これは料理を受け取りに行けなかった僕の影響だよね。


「航さん、おはようございます。体調は大丈夫ですか?」


「航さん、おはようございます。無理をしてはいけませんよ?」


「航、おはよう。元気そうで良かったわ」


 女神様方の爽やかな朝の挨拶を聞くだけで元気百倍になるな。


 あと、昨日のことは確実に女神様方が付き合ってくれた結果だったな。僕の体調を気遣う言葉に、あきらかにからかいのニュアンスが含まれている。


「はい、無理なく元気いっぱいですので、今日一日元気に過ごせます。それもこれも光の神様、森の女神様、美食神様のお陰です」


 僕が本気でお礼を言うと、女神様方が若干苦笑いしたように見えた。


 これはあれだな、御褒美的に優しくしてみたら、相手の反応が凄まじくて少し引いた感じだな。


 女神様方からすれば、体調を癒し、すりおろしリンゴやおかゆを食べさせただけなので、何をそこまで喜ぶのかといった感じなのだろう。


 でも、あれだよ、そのどれもこれも、思春期全開の時期にやられたら、間違いなく僕に惚れていると、勘違いするレベルのイベントだからね?


 僕が大学生になり、異世界に落ちてきて酸いも甘いも噛み分けてきたからこそ、超絶テンションが上がって元気いっぱいになって妄想にふけるくらいで済んでいるが、違ったら大変なことになっていたはずだ。


「それで、航、今日はこの世界の虎ふぐを捌くのでいいのよね? 光の神の協力は取り付けたわ。森の女神も見学するって」


 僕でなければ耐えられずにストーカに落ちていた、などと怖いことを考えていると美食神様が今日の予定を確定してきた。


 美食神様にお願いされて、光の神様と森の女神様の予定まで組み込まれていて僕に断われるわけがないよね。


「決まったわ。じゃあ行きましょうか」


「あ、美食神様、朝食がまだです」


 美食神様の為なら朝食抜きも辞さないが、巨大な虎ふぐを捌くという、体力も神経も酷使しそうな作業が目前に控えているなら、朝食はしっかりと摂取しておきたい。


「ああ、そうだったわね。ご飯はちゃんと食べないといけないわ」


 美食の神様だけあって、食事と言えばはやる気持ちを抑えてスッと席に着く美食神様。この揺るがなさが神様っぽい。




 ***




「さて、まずはどうしましょう。そうね、毒の部位の特定から始めるべきね」 


 巨大な虎ふぐの前でブツブツと悩み、自分で解決していく。


「光の神、毒の部位特定はできるのよね?」


「浄化を薄く張れば反応で分かりますが、私は魚に詳しくないので、具体的に指摘するのは難しいですよ?」


「徐々に特定していくから構わないわ」


「それなら協力できると思います」


「じゃあお願いね。まずは表面を探ってくれる?」


 僕の存在意義が空気になっている。


 ここで何かしらカッコよくアドバイスできれば株が上がるのだが……うん、無理だ。


 余計なことをしないでおこう。


 恥を掻く未来しかみえない。


「森の女神様。光の神様が浄化とおしゃっていましたが、生活魔法の浄化と一緒なのでしょうか?」


「航さん、考えていることは理解できますが、まったく違う物ですから自分で毒を浄化して食べようなんて考えたら駄目ですよ?」


 見抜かれていた。やはり光の神様の御業と僕の生活魔法を一緒にするのは駄目だったか。


「では、うちのリムというエンジェルスライムや神官であるクラレッタさんの浄化だとどうでしょう?」


「毒のレベルによります。航さんの生活魔法の浄化よりかは効果が出ると思いますが……航さん……食べるのに困っている訳でもないのに、毒がある食材に興味があるんですか?」


 森の女神様が心底不思議そうに首を捻る。


 そんなに真顔で聞かれると恥ずかしくなるのだが、恥ずかしながら興味がないわけではない。


 というか、虎ふぐを捕まえる過程で、こちらで食べられていない食材を発見し、僕の未熟な知識では毒があるかないか確かめられないし、毒がなくても寄生虫とか様々な問題で躊躇う食材をうっかり確保してしまっている。


 僕の興味本位、しかも見た目が虎ふぐどころではないエゲツナイ見た目をしているから、光の神様の手を煩わせるのも躊躇われる。


「当然じゃない。毒があっても解決法があって美味しく食べられるのであれば、それはもう食材よ」


 突然、虎ふぐに夢中だったはずの美食神様が会話に乱入してきた。


「航、あなたがそう言及するということは、何か未知の食材があるのね?」


 ズイっと美食神様の美しい御顔が僕の平凡な顔面に迫ってくる。普通なら幸せな状況なはずなのだが、素直に返事をすると不味い気がする。


「ありますが、今回は虎ふぐに集中しましょう」


「でも、気になるわ」


「……と、とりあえず、虎ふぐの解体が終わってからですね。鮮度が落ちてしまいますよ」


「あ、いけないわ。航、後で必ず教えてね」


 鮮度という言葉が響いたのか、美食神様が虎ふぐの元に戻っていった。


「航さん、美食神はかなり期待している様子ですが、大丈夫ですか?」


「……大丈夫……ではないかもしれません」


「……料理に関して美食神の情熱は凄まじいです。航さん、頑張ってくださいね」


「……あの、森の女神様? ご助力頂けたりは?」


 上品な微笑みが森の女神様から返ってきた。それはアレだ、俗に言う笑顔で見捨てられたというやつだ。


「そんなに絶望した顔をしないでください。正直に話せば美食神は納得する神です。ただ、この状況で私が介入しても意味がないだけなんですよ」


 つまり、食に関しては他の神だろうと耳を貸さないから、自分で対処するしかないってことですね。何の解決にもなっていないアドバイスだが、ある意味では覚悟が決まった。


 覚悟は決まったけど、どうすればいいのかはまったく決まってはいないのだけどね。


 なんであの時僕は、うっかり食材を確保してしまったのだろう。それ以前にもダークエルフの島で目にした時はスルーしていたんだけどな、ナマコ……。


 別に大好物な訳じゃない。


 ただ、偶に父がナマコの酢の物を当てにお酒を呑んでいて、僕もそのご相伴に与っていただけなんだ。


 海中で虎ふぐを探している時にふとナマコが目に入り、あ、ナマコの酢の物もいいなと気軽にアームで確保してしまった。


 でも、よく考えてみると、ナマコの種類なんて知らないし、ナマコに毒がある種類が居るのかも知らない、捌き方すら知らない。


 でも、なんかクチコという珍味がナマコから作られるのは漫画の知識で知っている。


 そんな状況だ。


 普通の食材ならこんなの確保しましたけど、と言って見せれば済む話なのだが、ナマコなんだよなー。


 ある意味虎ふぐよりも引かれる気がする。


 正直、何を思ってご先祖様はナマコを食そうと思ったのか。ナマコは美味しい、美味しいんだよ?


 でも、それは食べてみないと分からない訳で、なんでアレを口に入れた?


 酷い話だと思うが、飢餓とかやむに已まれぬ理由があってほしいと切に思う。


 よし、試してみよう、もしかしたら美味いかも! 的な乗りだったら自分のDNAに絶望しかねない。


 ……よし、ナマコについてはその時に考えよう。


 だって、美食神様が凄い勢いで虎ふぐを捌いているもん。光の神様とのコンビネーションが優秀だからか、繊細な作業なはずなのにスパスパと普通の魚を捌いているように見える。


 あ、僕のオリハルコンの包丁、完璧に使いこなしているな。


 オリハルコンの包丁、僕は使いこなせないし美食神様に献上するべきかな?


 ……止めておこう。献上に成功するかしないかは分からないが、成功した場合、創造神様が難癖をつけてくる可能性がかなり高い。


 美食神様に媚びを売れないのは至極残念だが、航君、美食神に献上して僕には何もないのかな? なんて言われたら困る。


 ほれぼれする美食神様の包丁捌きを見守りながら、自己保身に走る自分に思うことがないわけではないが、まあ、仕方がないよね。


「航、こちらを収納してくれる?」


 そんなことを考えていたら、すっかり虎ふぐを捌き終えた美食神様が話しかけてきた。


 マグロよりも大きな虎ふぐなんだけどな……。


「こっちは安全な方ですよね?」


 大きな虎ふぐの身が混ざっているから、こちらが毒だった場合はショックが大きすぎる。


「ええ、こちらは大丈夫よ」


 良かった。ん? じゃあ毒の部位はどうするんだろう?


「味を確認してみたいのだけど、光の神が納得してくれないのよね」


 僕の疑問が伝わったのか、美食神様が毒の部位をどうするか教えてくれた。ただ、内容は結構とんでもないことを言っているよな。


「当たり前です。これを受け入れたら美食神は全ての毒を私に解毒させようとするでしょ。そんなのごめんです」


 凄く納得した。美食神様が解毒を望む理由も、光の神様が解毒を断わる理由も。特に光の神様は全力で断るだろう。


 ようやく創造神様が大人しくなったのに、次の仕事が解毒マシーンは勘弁してほしいよね。


 僕としてはベニテングダケだっけ? 猛毒だけど味は美味しいと聞いたことがあるから興味がないこともない。


 あれ? この様子なら美食神様ならナマコなんて楽勝で受け入れるのではなかろうか? 


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ナマコは日本では生で酢の物や加工した内臓が主流だけれど、中国みたいに乾燥させれば保存も効いて煮込めば柔らかく食べられる 丘が飢饉でも簡単に捕れるナマコは調理法さえ確立していれば食材としては優秀だと思う…
タコも毒の強弱はあれどほぼすべての種で毒持ちだからなぁ…… 海産物ってよくよく考えると毒持ち多すぎない?
元の世界では実際に食べられることがあるものと 似ているものを見かけたので確保してみました ただ、世界が異なるのでどこまで同じなのか 毒の有無や味の良し悪しについては分かりません って感じで言えば納得…
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