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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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21話 出港

 ヨーテボリに帰還後、地道に復興を続けてある程度の目途を立て、北の大陸に戻ることを決定する。でも帰る前に一つ仕事が残っている。うちの女性陣を手に入れようとしているスキダドゥル男爵様をきっちり型に嵌めて、ヨーテボリの役に立てるお仕事だ




「ああ、そのような要望がスキダドゥル男爵から出されたことは聞いております」


 代官が男爵の要望に言葉を返すが、僕が話の流れを理解しているからか、半分笑っているように見える。


「しかし、困りましたな」


「ん、何か困ることが? 冒険者のような下々の者が貴族の傍に侍ることができるのですから喜びこそすれ……もしや既に他の高位貴族のお手付きに?」


 おお、想定問答集に書かれていた反応の中の一つにバッチリ当てはまる反応だ。


「いえ、それなら申し訳ないが男爵に遠慮してもらえば済む話です」

 

「……つまり、私が遠慮して済む話ではないと? 失礼だが子爵殿は私の立場をどのようにお考えなのかな?」


 僕の父上は偉いんだぞ! ってことだな。でも、こちらが調べた結果、男爵の増長も納得できる程度には男爵の父上が属している派閥は強い力を持っているらしい。


 この国は王族派、貴族派、中立派に別れており、男爵の父上は貴族派の重鎮。かなりの権力者だ。


 ちなみに代官は中立派の派閥の中の小派閥の一人、つまり弱い。港は復興したらかなりの利益になる場所だから、後々挿げ替えるための人選だから仕方がないのだけど、選ばれた方としてはたまったものじゃないよね。


 代官が強欲に利益を追求していた気持ちも少し分かる。


「国内では治まらない問題になりかねないということですな。詳しくはこちらの商業ギルドのギルドマスターに説明させましょう」


 代官がギルマスに話を振る。今まで空気のような扱いだったが、実はギルマスはこの舞台の重要人物。


 信用できない代官の監視役であり、この舞台の進行を監督する舞台監督であり、そして男爵を追い詰める舞台役者でもあるという、マルチな役割を担っている。


 ギルマスが深々と頭を下げ、どういう状況なのか説明を開始する。


 まず、僕達が他大陸の人間だという説明。


 その他大陸の人間である僕が巨大な船の持ち主で、どれほどの経済力を持っているか。


 この時点で男爵は少し戸惑った様子だが、まだ余裕はあるようにみえる。男爵の庇護に控えている側近達の顔色も変わっていない。


 続いてアレシアさん達の身分。Aランクの冒険者と聞いて、男爵の顔が少し引き攣る。冒険者ギルドは巨大組織であり、その上澄みであるAランクの冒険者はそれなりの権限と地位を保持している。


 少し男爵と側近達に焦りが見えはじめた気がする。


「だが、所詮は他大陸の人間ですよね? それほど問題になるとは思えませんが?」


 ついに男爵の側近が口を挟んできた。


 これも想定問答集に書かれていた反応だ。


「そうですね、ただ経済力と力を持った他大陸の商人と冒険者であれば問題にはならなかったでしょう。ただし、その程度の商人と冒険者であればの話です」


「つまり、それだけの存在ではないと?」


「さようです」


 ギルマスがそう返事をして、僕達の活躍を説明し始める。


 ヨーテボリの復興への協力に関する内容。襲ってきた盗賊の大集団をどのように処理したか、そして古竜討伐……傍で聞いているとまるで物語の主人公のような活躍をしている。本当に僕の話をしているのだろうか?


「という訳でして、かの商人はヨーテボリに支店を開いた古竜討伐者であり、現在、その討伐した古竜の頭部を陛下に献上するべく、冒険者ギルドの長が王都に向かっております」


 今回は僕も結構活躍したし、古竜討伐者に含まれてもいいよね?


「つまり男爵殿はこの国に多大な経済効果をもたらし、五千の盗賊を歯牙にもかけず滅ぼし、あげくに古竜討伐という前人未到の功績を立てた者達を、下々の者と侮り妾に召し上げようとしたということになりますな」


 ギルマスの説明の後に、代官が分かりやすく止めを刺す。表情は真面目だが、内心では狂喜乱舞していそうだ。


 そして止めを刺された男爵と側近の表情が死んだ。 


 騎士や兵士と同一にはできないが、間違いなく男爵程度では対抗できない強力な武力を持つ存在に喧嘩を売ったのだと自覚したのだろう。


 しかも王家に古竜の頭部を献上というのも不味い。


 他国の者が献上するのであれば王家にというのは間違いないが、その献上者を王家と仲が悪い貴族派の一員が邪魔をした。


 その事実が明るみに出れば、王家は嬉々として責任をとらせようとするだろう。


 つまり、責は男爵程度では収まらず伯爵にまで及ぶ可能性が高い。優秀と噂の側近は当然、男爵もその事実に思い当たり冷や汗をダラダラ流している。


「しし、子爵殿、その商人……殿と冒険者殿はお怒りなのですかな?」


 対等な感じで話していた男爵が、代官に下手に出ながら質問する。両者の格付けが爵位通りになった瞬間だな。


「そうですな、怒りというよりかは呆れが近いでしょうか? 商人殿は困った様子で、こうなると陛下に直接談判する必要があるとおっしゃっていました」


 男爵側の表情が絶望に染まる。


 王家の介入が現実味をおびたからだ。


「子爵殿、私は商人殿がそのような人物だと知らなかったのです。なんとかなりませぬか?」


「ええ、私も誤解があると思いましたので、陛下に訴える件についてはお待ちいただいております」


「本当ですか!」


 おお、男爵側が大喜びだ。ここまで想定問答集というか台本通りの展開で、ドナテッラさん達の読みが怖くなってきた。


「ただ、何事もなくとはさすがに……」


 代官がわざとらしく匂わせる。こう言ってはなんだが、代官に小物な演技がとても良く似合う。


 演技ではなく素の可能性も高いけどね。代官って小物だもん。僕も小物だから実は少し共感するところがある。


「こちら側も商人殿に思い止まって頂くために色々と便宜を図っております。まずはその補償と―――」


 代官の後にギルマスが言葉を続ける。たぶん、代官が余計なことを言わないように介入したのだろう。ナイス判断。


 それにしても本当に台本通りだな。


 日本で金が金を生むという言葉を聞いたことがある。


 僕は大金を持っているから、安全でリスクが低い投資でも大金が稼げるみたいな認識だったが、目前の交渉を見るにそれだけではないように思う。


 間違いなく僕が認識していた理由もあるのだろうが、ピンチの時もお金の余裕が視野を広げ、自分の利益にかえる選択肢を生み出す、そんな錬金術が見えないところで行われていたような気がしてきた。


 まあ、日本のことを今更僕が想像しても仕方がないか。


 今回の交渉も想定問答集と台本通りに落ち着きそうだし、ギルマスがしっかり利益を確保してくれるだろう。


 これが終わったら北の大陸に帰る準備だな。


 既にある程度準備は終わっているが、余裕があればあるほど残される側の負担が減るから、帰るまでの時間もしっかり荷運びは熟そう。


 あと、メアさん達の生活環境のフォローだな。


 トヨウミ商会南の大陸支店が完成したら、その後に広い敷地のあまりに幹部寮も含めた従業員寮も建設する予定だが、今は比較的マシな建物を借りて寮にしている。


 そこに外に出しても問題ないであろう便利グッズは運び込み済み。それに加えて表には出せないが、トヨウミ商会内部だけで楽しめるように、缶詰やインスタント食品、レトルト食品、お菓子各種を大量購入し運び込んである。


 それでも次に僕達が南の大陸を訪れるのがいつになるか分からないし、物資が追加できるのであれば追加しておいた方が良いだろう。


 長期保存が可能な物に限られるが、地球のお酒や食料品が楽しめるのは福利厚生として大きな効果が望めるはずだ。


 現にメアさんは豪華客船やフェリーの飲食物に夢中だもんね。


 まあ、復興初期段階だから次の南の大陸訪問は早めにと考えているのだが、戻ったら定期航路やらなんやらの仕事が待ち構えているから先が読めない。大量に物資を運んでおこう。




 ***




 港に沢山の人達が集まっている。


 広い港が満員電車状態で、外なのに酸欠でぶっ倒れないか心配になるくらい密集している。


「凄い人数だ」


「ふふ、みんなワタル様がヨーテボリの為にどれだけのことを成し遂げてくださったのか知っています。だから少しでも恩返しをしたいのですよ」


 凄まじい数の人ごみに思わず声を漏らすと、メアさんが状況を説明してくれる。


 そう、この人達は北の大陸に帰る僕達を見送るためにわざわざ港に集まってくれた人達だ。


 男爵との話し合いはこちら側の完全勝利に終わり、トヨウミ商会だけではなくヨーテボリ全体に便宜を図るところまで持っていけた。


 無論、男爵の領地だけではなくその父親の領地でも便宜を得られる契約を結ぶことができた。


 男爵の側近は本当に優秀らしく、事の重大さを理解すると直ぐに伯爵に知らせを送り、すぐに伯爵側からも人員が到着。


 ことが大きくなるのを防ぎたかったのか、こちらの条件がほぼ通ることとなった。まあ、こちら側も無茶な要求はしていなかったので、妥当なところに落ち着いたというのがドナテッラさん達の意見だ。


 その後、僕達に対する謝罪の場も設けられ、男爵は伯爵の使者と共に僕達に蒼ざめた顔で謝罪し、そそくさと帰っていった。たぶん男爵は伯爵から雷を落とされることになると思う。


 そんなこんなで細々とした用事を済ませ、出港の日時を伝えたところ、盛大なお見送りをしてくれることとなった訳だ。


 人を強制的に集めた訳ではなく、みんな自分の意志でお見送りに来てくれたのだそうで、自分達の頑張りが報われたような温かい気持ちになる。


 色々と頑張ったもんな。荷運びとか、荷運びとか、荷運びとか……あれ? 盗賊退治とか古竜討伐とか色々とあったはずなのに、全面に押し出されてくる思い出が荷運びばかり……まあいいか。


 イベント以外、ほぼ荷運びしかしていなかったもんね。


「ふふ、頑張った甲斐がありました」


 荷運びを。


「無論、私もあの人達と同じ気持ち、いえ、命がけでワタル様の恩義に報いる所存です」 


 冗談交じりの僕の言葉に、メアさんのガチな言葉が返ってきて背筋が冷える。僕達が離れている間に、メアさんの強すぎる信仰が落ち着くと良いのだが。


「で、では、そろそろ出発しましょうか。メアさん、国から使者も来ると思いますが、後のことはお任せします」


「はい! お任せください!」


 古竜討伐関連に関してもメアさんに丸投げして僕達は旅立つ。国がどう動くか分からないが、待っていたらどれほどの時間がかかるか分からないからね。


 それに国の動きが間に合ったら間に合ったで面倒事に巻き込まれる可能性が高いから逃げるに限る。


 集まってくれた人達に手を振り、大歓声に見送られながら僕達はルト号に乗り込む。さて、南の大陸とはしばらくお別れだ。


 ふふ、帰還途中には時間を作って商売の神様からの報酬を貰わないとな。楽しみでしょうがない。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
荷運びやあゝ荷運びや荷運びや なんか素饂飩をずっと食ってたみたいな思い出やん 残念ながら神格化ってのはいないときにこそ加速するんよ。
結局船倉にたらふく積んできた食料の供給はうまくいったのかな? 現地の人に任せっきりだと品物を運ぶごとにかすめ取られ苦しむ人たちの所には殆ど行き渡らなさそうだが
手っ取り早く恩を返してくれてもええんやで?
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