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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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18話 純粋? な好意?

 討伐した古竜の頭部をお爺さんや村人達に披露し、宴会をするであろう村人達に海の魔物を差し入れしてから僕達は帰路についた。帰り道にはドナテッラさんのミッションに従い、古竜討伐を古竜の頭部と共にお披露目しながら進み、夜になりようやく休憩に入る。




 ふー……焚火を囲み、カップ麺とおにぎりをむさぼり、ようやく一息ついた……が、まだお腹が満足していない気がする。


 もう一個カップ麺を食べるか……うん、次はカップ焼きそばにしよう。カップ麺を経由しての〆のカップ焼きそば。


 このジャンクな流れは体には良くないだろうが、疲れた心を癒す効果は確実にあると思う。


 問題は手元にある二種類のカップ焼きそばのどちらを食すか。


 未確認飛行物体か屋台の焼きそば……悩ましい……うん、今はからしマヨネーズの気分だし屋台の焼きそばだな。


 ん? 僕が取り出したカップ焼きそばにリムとペントが反応する。どうやらリムとペントも焼きそばを食べたいようだ。


 ……僕のを分けてあげようかとも思ったが、僕も今日は一個丸々食べたい気分だし、三個作っちゃおう。


「ふぅ、それにしても古竜は手強かったわね。今の私達なら大丈夫だと思っていたのだけど、ワタルが居なければおそらく止めを刺すことができなかったわ」


 カップ焼きそばの準備をしていると、豚骨キムチの大きめのカップ麺を一息で完食したアレシアさんが呟いた。


「たしかにそうね。用心をして先に翼を潰していなければワタルが居ても逃げられた可能性が高かったし、私達の実力が確実に足りていなかったわね」


 アレシアさんの言葉にドロテアさんも同意する。


 僕の名前が出ているのがこそばゆいが、今回は珍しく僕も戦いに協力した自覚があるからちょっと嬉しい。


「実力というか決定力不足ね。古竜クラスと戦う機会なんて滅多にないと思うけど、ワタルと一緒だと次がないと断言はできないから対策を考えておく必要があるわ」


 イルマさんが僕に流し目を送りながら、会話を続ける。


 凄く色っぽいのですが、僕をトラブルメーカー扱いしていませんか?


 僕は基本的に周囲に流されているだけで、何事もなければ船に引きこもって自堕落に一生を終えるタイプの人間ですよ? 僕の安定志向は神様方のお墨付きがある。


「そうね、物理ダメージだとカーラなのだけど、古竜の物理攻撃を防ぐので手いっぱいだったわ。その部分をフォローできる体制を作ってカーラに攻撃に回ってもらうパターンももっと練っておくべきね」


 僕がカップ焼きそばの準備をしている間も、ジラソーレの真剣な話し合いが続く。


 今までも戦いの後に反省会をしている姿は見たことがあったが、ここまで真剣に打ち合わせをするジラソーレは初めて見るな。カーラさんまで食べるのを止めて話し合いに参加している。


 会話の流れがスムーズなので、アレシアさん達がパーティーを組んだ当初は頻繁にこのような打ち合わせをしていたのかもしれない。


 Aランクにまで登りつめ、僕と出会い劇的にレベルアップして油断はしていないものの余裕が出てきたところに、まだまだ安穏としていられない現実を目の当たりにし向上心に火がついたようだ。


 屋台の焼きそばを啜り感心しながらジラソーレの打ち合わせを見守る。ん? 見守るだけでいいのかな?


「なに? ご主人様」


「いや、僕達もあんな感じに話し合いをした方が良いのではと思ってね」


 凄いなー。真面目だなーとジラソーレを見守っていたのだが、こういう打ち合わせは僕達にこそ必要なのではなかろうか? そう思ってイネスとフェリシアに視線を向けたのだが、二人には伝わらなかったようだ。


「戦いに身を置くなら必要かもしれないけど、私達の場合戦わないし、戦うとしてもジラソーレの手伝いか、ご主人様の船に守られながらの攻撃でしょ? なにか話し合う必要があるの?」


「ご主人様、私達が話し合うべきは戦うすべではなく、身を守るすべについてではないでしょうか?」


 そう言われるとその通りとしか言いようがない。アレシアさん達に触発されて僕達も頑張らないといけないと思ったが、そもそも僕はなんちゃって商人なんだよね。


 イネスとフェリシアの言葉がストンと胸におちる。


 身の守りについては船に籠っていれば確実だし、偶の外出もイネスとフェリシアとアレシアさん達がしっかりと守ってくれる。


 つまり僕が馬鹿なことをしなければ安全ってことだな。そして僕は賢いとは言えないが度胸はないので無謀なことや馬鹿ことをはしない。


 つまり、今まで通りで大丈夫だということだ。


 無論油断は禁物なので、行動のすり合わせなんかは必要だろうが、それは護衛の邪魔をしないことが肝要になる。


 暇な時にでもアレシアさん達を含めて話し合えば問題ないだろう。今はジラソーレだけの大切な時間っぽいからね。


 カップ焼きそばを食べ終わると急激に眠気が襲ってきた。徹夜に加えて色々と疲れたし、歯を磨いて仮眠をとることにするか。




 ***




 目が覚めたら夜明け前だった。


 昨日は十時くらいには眠りについたから、仮眠のつもりがしっかり睡眠をとってしまったことになる。


 人通りがある時はゆっくり走る予定だから、ヨーテボリに到着するのは明日の夕方くらいになりそうだ。


 まあ、明日までに戻れば予定内だし、睡眠不足での運転は危険なので良かったと思おう。




「あんた、このまま進むと面倒な事になるぞ。絡まれるのが嫌なら隠れた方がいい」


 昨日と同じく古竜の頭部を見せびらかしながら進み、アレシアさんが行商人に説明していると、進行方向から来た行商人が話しかけてきた。


「面倒?」


「ああ、奴等が休憩している間に追い抜いてきたんだが、ちょっとうっとうしそうな貴族がこの道を通っている。魔導車に古竜の頭部なんて目立つ状態だと確実に絡まれるぞ」


 貴族か。しかも行商人さんが面倒だと判断したのなら、それなりに理由があるはずだ。素行が悪そうだとか、偉そうに周囲を威嚇しているとか、ろくでもない理由が。


「貴族ね、ありがとう。こちらで対策を考えるわ」


「礼は要らねえよ。あんたらにはヨーテボリで世話になっているからな。じゃあな」


 アレシアさんがお礼を言いつつ情報料を手渡そうとすると、行商人の男は軽く断り手を振って去っていった。


 あの行商人さんもヨーテボリに居たようで、僕達の行動に恩義を感じて情報提供してくれたようだ。情けは人の為ならずって言葉を思い出すな。


 それにしてもアレシアさん達もこの大陸の言葉が上手になったよね。毎日が現地での学習だから効率がいいのは確かだけど、それでも言語学習は簡単ではないはずだから、レベルも関係あるんだろうな。


 その恩恵を僕があまり受けられていないような気がするのは気のせいだと思いたい。


「どうしましょうか?」


 行商人たちと別れて緊急会議を行う。ドナテッラさんの作戦には貴族とか立場がある人間と関わる可能性も含まれていた。


 むしろそういう人に出会ったら積極的に吹聴するように指示されている。ただ、モメる可能性が高いとなると話は別だ。


「そうね、行商人がモメると判断したのであれば、このままいけばその可能性は高いと思うわ。モメても私達ならなんとでもなるけど、ヨーテボリにちょっかいを出されると面倒ね」


 そうなんだよね。質の悪い貴族って基本的に話が通じないから、魔導車や古竜の頭部を献上しろとか平気で要求してきそうだ。


 そして僕達が断わったら逆恨みして武力行使。それをアレシアさん達が軽々と撃退して終了……になればいいんだけど、今度は正面からではなく裏から嫌がらせとかをしてきそうだ。


 まあ、ヨーテボリの上層部とドナテッラさんとメアさんはそういうことも含めて、目立つことを選択したのだから対策をしていると思うが……。


「まあ、分かっているのにモメ事を増やす必要はないですよね。その貴族とすれ違うまでは徒歩で移動しましょうか」


「その方が無難ね」


 会議はアッサリと結論が出たので、道から外れて人目のない場所でレンジャー号と古竜の頭部を送還して徒歩で移動する。



「良いおなごたちだな。私がお前達の面倒をみてやろう」


 これで万事解決だと歩いていると、問題の貴族に普通に絡まれた。


 そうだった、レンジャー号と古竜の頭部を隠したから安心とか思っていたが、うちの女性陣は美女揃いで、注目度が抜群だった。


 そんな簡単な真実を見過ごしていたのは僕以外のメンバーも同様だったらしく、珍しく機転が利くイルマさんまで目を丸くして驚いている。


 古竜討伐なんて大仕事を熟したばかりだから、僕達もアレシアさん達も気が抜けていたのかもしれない。

 

 どうするの? という視線が僕に集中する。同時にフェリシアが杖で魔法陣を描いたので、おそらく念のために僕に結界を張ってくれたのだろう。


「おい、喜べお前達、男爵様の傍に侍る栄誉を賜ったぞ!」


 僕達が顔を見合わせていると、取り巻きの一人が凄く名誉なことだぞ、喜べと言った様子で話しかけてきた。行商人の目は確かだったか。


 まあ、忠告に従ってレンジャー号と古竜の頭部を隠しても絡まれているけどね。


 貴族だから確かに偉いのだろうが、男爵って下の方から数えた方が早い立場だよね? 明確な身分制度がない日本出身者としては、その辺りのニュアンスが微妙に分からない。


 そういえばヨーテボリの代官は爵位とか持っているのだろうか?


 まあいい、とりあえず断わろう。貴族制度の下、平民は貴族に逆らえない的な不文律がありそうな気もするが僕達は他大陸の人間なのでそこまで気にする必要はないだろう。


「……えーっと、お断りします。僕達は他大陸の人間なので、男爵様に侍ることはできません」


「ん? 男も居たのか? まあよい、他大陸の女は珍しいな。よい、許すゆえ、安心して我がもとへ来るがよい。異国の男も商人か? 珍しい物があれば買い取ってやろう」


 僕の存在が認識されていなかった。そして、僕達が他大陸の人間だということに引け目を感じて遠慮しているとポジティブな解釈をしているようだ。


 話が通じない貴族と想定していたが、通じないベクトルが少し違う気がする。


 なんというか、悪意が見えないと言えばいいのか、いや、言っていることは、質の悪い貴族そのものなのだけど、言葉に悪意が乗っていないというか、自分のところに来るのが幸せだと真実疑っていない様子なんだよね。


 僕男爵で偉い、みんな美人だし、幸せにしてあげるよ! とか思っているのが伝わってくる。


 テンプレートな悪役貴族ならアレシアさん達がボコボコにして終了だったのに……あれ?


 もしかしなくても、目の前の男爵ってテンプレートな悪役貴族よりも対処が面倒な分類だったりする?


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
人目がつかんとこまで誘導して埋めとけ。
殺して埋めとけばいいよ。
貴族の命を売ってあげればいいよ
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