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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十五章
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16話 決着

 放水船を購入し古竜の奇策になんとか対応した。そうすると古竜が逃走を選択する。逃走を阻止するために僕もなけなしの勇気を振り絞りレンジャー号で突撃する。色々あって首を負傷してしまったが、珍しいことに今回の戦闘では僕も結構活躍している。




「あれって死んでいるんですかね?」


 虚ろな表情をしている古竜をみて、イルマさんに質問する。


「どうかしら? 首筋の傷が致命傷ではあると思うけど、まだ完全に息の根は止まっていないように見えるわ」


 首筋の傷? あ、本当だ。古竜の長い首の下の方にざっくりと切れ目が入って血が噴出している。


 従魔陣でブチ切れてレンジャー号に夢中だったから、その隙を女性陣が突いたのだろう。スッパリ切れているから、最後を決めたのはアレシアさんかもしれない。


 ……で、この状況はどうすればいいのだろう。顔は地面に降りているが、胴体はレンジャー号にもたれかかっている。バックしてもいいのかな?


 ……とりあえずしっかりと確認してみるか。シートベルトを外し、首の痛みに耐えながら古竜の顔に近づく。


「ガァァ!」


「うわっ、痛っ、首が……」


 確認しようと古竜の顔に近づくと、いきなり顔が動き出し噛みついてきて乗船拒否に弾かれる。


「グフッ……無念だ、こんな見るからに冴えない男に……」


 死に瀕しながらも最後の機会を狙っていた古竜。


 まあ、僕が安全なレンジャー号の中から出て近づくことはないから、その最後の足掻きも失敗に終わるのは確定していたのだが、近づいてくる巨大な口にビビって首を更に痛めてしまった。


 そして最後の言葉……古竜が本気でそう思っていたから死に際に呟いたのだろうが、本気だからこそ結構ショックだ。今回僕、半泣きになりながらも結構頑張ったんだよ?


「今の無茶で完全にこと切れたようね。ワタル、お疲れ様。クラレッタに治療してもらいに行きましょう」


「……そうですね」


 ショックではあるが勝ちは勝ちだ。首も痛いし古竜の言葉は忘れて治療してもらおう。




 ***




 僕が治療を受けている間に、女性陣は古竜の解体を進めている。ドナテッラさんの作戦があるから、結構大変そうだ。


「ワタル、どうですか?」


 リムの回復魔術が終わり、クラレッタさんが声を掛けてくる。


 最初はクラレッタさんに治療してもらおうとしたのだが、リムがやると飛びついてきたからだ。飛びつかれた拍子に首に痛みが走ったが、リムの可愛らしさで全てを乗り越えることができた。


 クラレッタさんの質問に答えるために、首を動かして確認する。


「痛みはまったくありません。リム、凄いよ、完璧だよ」


 クラレッタさんの質問に答えながらリムを抱きしめ、お礼を言いながらモチモチする。リムから褒められて満足気な感情が伝わってくる。


「ふふ、それなら良かったです。リムちゃんも良くできましたね。毎日頑張って病院の皆さんを治療してきた成果ですよ」


 クラレッタさんも僕がモチモチしているリムを優しく撫でる。そういえばリムって毎日病院で治療しているんだったな。


 それで治療スキルをしっかり伸ばしていたのか。さすがリムだな。ただでさえ可愛くて癒されるのに優秀とか、欠点が見当たらないよ。


 あと、毎日病院で一緒に働いているからか、クラレッタさんとリムの仲良し度が上がっている気がする。もしかしたらクラレッタさんにもテイムスキルが生えるかも。


 そうしたら、またスライム仲間が増えるかもしれない。ちょっとワクワクする。


「ワタル、ゴムボートを交換してちょうだい」


 まったりしていると、アレシアさんからリクエストが届く。古竜の血は貴重なので、ゴムボートに集めて保存している。


 ゴムボートは召喚した時点で綺麗だし、その上クラレッタさんかリムが浄化もしてくれるので衛生面でもバッチリなはずだ。


 まあ、空気に触れている時点で、劣化とかありそうなものだけど、竜は血そのものから僕達と比べて強靭らしいから、少しの劣化くらい問題にならないそうだ。


 それでも劣化しない方が良いのは当然なので、送還したら時が止まるゴムボートを活用すればそんじょそこらの竜の血とは一線を画す品質を維持できるだろう。


 しかも、普通の竜の血ではなく古竜の血なので、更に価値が跳ねあがるはずだ。


 それにしても何度目の交換かな?


 戦いの間に大量の血をまき散らしていたはずだが、それでもドンドン血が溢れだしている。やっぱり竜って特別な存在なんだな。




「ふう、ようやく切り離せたわね。ワタル、胴体は送還してしまって大丈夫よ。その後は顔の処理に取り掛かるから、それ用のゴムボートもお願いね」


「了解です」


 ハイダウェイ号を送還し、再び古竜が載るように再召喚。そして品質の劣化を防ぐためにまた送還する。これで古竜の胴体は鮮度を保てる。


 そして本命の古竜の顔。顔というか頭部だけど、この頭部がドナテッラさんの作戦に大きく関わっている。


 まあ、古竜の討伐に成功したら、顔を晒して周囲に見せつけながら戻ってくるというだけの作戦なんだけどね。


 既に目立ちまくっているから、突き抜けて頭を叩かれないようにアピールする作戦だ。


 ドナテッラさんとメアさんは、僕達が古竜討伐に成功することを微塵も疑っておらず、討伐してからの工程の方に重きを置いて指導された。


 頭部を見せつけるように戻ってくるにしても、古竜の素材は貴重なので、痛む部分は先に解体して保存する必要があり、その解体方法をギルドの解体職員を引っ張り出してきて指導された。


 古竜の頭部で貴重なのは……というか貴重でない部分が存在しないので、目から脳から舌から一切合切解体して、劣化がし辛い皮膚と牙を残した状態で持ち帰るように言われている。


 正直、命がけで戦った相手の頭部を晒しながら帰るのは嫌な気分になるのでは? と思っていたのだが、幸いなことに全然嫌な気分になりそうにないことは救いだ。


 小さい男と思われたくないので公言はしないが、冴えない男に頭部を晒される古竜、ざまぁと思っている。


 死に際に古竜が発したってことは、何の含みもなく真実そう思っているってことだよね? 言葉の重みが違う。


 だって、遺言というか辞世の言葉だもん。


 僕だって二十歳を超えているのだから人の悪意に触れたことは何度かある。その中でもトップクラスに不愉快だった。


 今回は戦いが終わったからノーサイド、なんてスポーツ精神あふれる感情は抱けそうにない。


「ワタル、頭部を運ぶ台車だけど、思った以上に頭部が大きいけど大丈夫なのかしら?」 


 内心で不満をぶちまけていると、ドロテアさんから質問された。


「……えーっと、確認してみないと分からないですね。ちょっと試してみます。カーラ、すみませんが手伝ってください」


 力仕事になるのでカーラさんに応援をお願いする。


 OKを貰えたので、再びハイダウェイ号を召喚。デッキには頭部を失った古竜が力なく寝そべっている。こういう姿を見ると、さすがに不満を抱いている自分が馬鹿みたいに思えるな。まあ、最後の言葉は忘れないし、許さないけどね。


 ハイダウェイ号の隅っこに立てかけていた台車をカーラさんと協力して外に降ろす。


 まあ台車と言っても車輪はついていない、ただの丈夫な板というか筏なんだけどね。


 車輪は船購入画面で、これは船のカテゴリーに含まれるのか? と疑問に思ったが、船を牽引するボートトレーラーを活用。


 筏の前後二ヶ所ボートトレーラーを固定し、それをレンジャー号で牽引して帰る予定だ。


 普通ならレンジャー号にもボートトレーラーにも負担が掛かりそうだが、船召喚をした船には不壊の効果がデフォルトなので実行できる荒業だ。


 欲を言えば前後だけではなく、筏の四隅にボートトレーラーを配置したかったのだが、召喚枠の影響でなくなく諦めた。


 時間があればちゃんとした台車を作っても良かったのだけど、二日しか時間がなかったからさすがに間に合わなかったよ。


 それでも、これだけの為にヨーテボリで港とストロングホールド号の移動に現地の船を使ってもらっているので、船召喚の枠は切実にもっと欲しいと思っている。


 ……船召喚のスキルレベルを上げれば増える可能性はあるのだけど……慈善事業費がね……慈善事業費って名ばかりで、お仕事を連れてくる借金みたいなものだから、増えると怖いんだよね。


 まあ、今は考えるのは止めて目の前に仕事に集中しよう。


 とりあえず筏に古竜の頭部が載ればなんとかなる……見た感じ行けそうだが、念のために載せてしっかりと確認しておくか。


 無事に筏に古竜の頭部を載せることができたので、アレシアさん達には解体を続けてもらい、僕の方はカーラさんに手伝ってもらいながらボートトレーラーと筏を固定していく。


 普通なら素人仕事の雑な工作だと不安でしかないのだが、ボートトレーラーは不壊だし、筏と結びつけるロープもストロングホールド号で使われている物を拝借してきているので不壊。


 心配なのは筏が壊れることくらいなので、おそらく大丈夫だろう。筏なら僕達でも応急処置くらいならできる。


 それでも四苦八苦しながらボートトレーラーと筏を固定し、急ごしらえの巨大台車が完成する。うん、見た感じ不安でしかない。船召喚のチートな力に感謝だな。


 アレシアさん達の解体も終わり、素材も無事にゴムボートで送還。古竜の頭部は筏の上に載せてこちらもガッチリと固定後、ハイダウェイ号に載せて送還し準備完了。


 古竜の頭部は見せびらかしながら戻る予定だが、さすがに誰も居ない山道で外に出している意味はないので収納しておく。帰路でも人目に付く時間帯以外は収納したまま進む予定だ。


 ふぅ、終わった。後は帰るだけだが、今日はさすがに疲れた。


 村長さんに報告した後は出発して、暗くなったら休むことにしよう。


 ん? そういえば休む時って陸地だとハイダウェイ号……古竜の素材なら大丈夫な気がするが、貴重な素材なのだから少しでも状態を保つ努力をした方がいいよね?


 ……寝るのはレンジャー号で良いとして、食事の準備などは外だな。久しぶりに本格的な野営に挑戦することになりそうだ。


 まあ、最近僕もキャンプの腕を上げてきているので、なんとかなるだろう。


 でも、やっぱり船召喚は海向きの能力なんだな。陸地だと色々と制限されて地味に不便だ。


1/27日、『めざせ豪華客船!!』の単行本第7巻が発売されました。

魔の森での冒険など、楽しい冒険が繰り広げられていますので、お楽しみいただけましたら幸いです。

よろしくお願いいたします。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
いくら火竜が好戦的でも古竜の火竜がそうかどうかなんてほとんど例がないから検証なんかできないのにアレシアたちの適当な知識による口車に乗って交渉を一切せずに攻撃して倒すとかワタルとは思えない行動、いや、全…
創造神の罠じゃなかったのは少しだけ残念 何が残念かってその後の仕返しを含んでだよw まだ再起不能っぽいね いやホント残念(もっと創造神にザマァをwww
素晴らしい 大航海時代を描いている
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