13話 ダークエルフの村の恥部と次の目的地の情報
「何をしている、グズグズするな。はやくフェリシアを解放するんだ」
周囲の困惑も気にせずに要求を叫ぶロマーノさん。なんか痛々しくて見ていられない、ロマーノさんの両親は死んだ魚のような目になってる。お願い気が付いて、今なら思い出したら死にたくなる位の思い出で済むんだから。
「あー、村長さん、どうしたらいいんでしょう?」
「ワタルさん、申し訳ありません。監禁していたのですが抜け出してしまったらしく、探していたのですが……」
あーさっきの村長さんを呼びに来たのは、ロマーノさんが抜け出したからか。しかしドンドン村人が集まって来る。小さな村だから全員集まっちゃったんじゃ? ロマーノさんこれからどうするんだろう?
「落ち着くんだロマーノ、騙されていると言うが、現実にこんな良い島に移住出来たじゃないか。何を騙されていると言うんだ」
「父さんは分からないんですか? 俺達は移住してきたんじゃない、この島で監禁されているんだ。これからはあいつに飼育され繁殖させられる家畜になるんだぞ」
僕はどんな悪役なんだよ。なんでそんな結論になったのか理解できないよ。
「えーっと……僕はなんと言えばいいのでしょうか、村長さん、僕には彼が理解出来ないのですが」
「ええ、私達もロマーノと何度も話し合ったのですが、分かり合えませんでした。本当にどうしたものかと……」
村長さんも苦労してるんだな、こんな苦労は嫌だろうけど。
「ワタル、どうした真実を言われて焦っているのか? 今すぐフェリシアを解放して、この島から出て行くなら許してやるぞ」
「フェリシアに居なくなられると困るので無理です」
「聞いたか皆、あいつはフェリシアを無理やり縛り付けているんだ、救い出すぞ」
あっ、ロマーノさんのお父さんが後ろから近付いている。あっ殴った、全力で後頭部を殴ったよ、凄い音がしたけど、ロマーノさん生きてる?
「ワタル様、申し訳ありません。愚息がご迷惑をお掛けしました。すべての責任は私にあります。どのような償いでも致しますので、どうぞ村への援助だけはお願いいたします」
償いって、そんな大問題じゃないよね、でもロマーノさんみたいな人を野放しにしておくと何されるか分かんないから怖いんだよね。
この少ない人数から男手が2人も使えなくなるのは厳しいしな。しょうがないイネスとフェリシアに護衛頑張ってもらうか、何処に行っても危険が一杯だな。
「僕は気にしてませんので償いは結構ですよ。ロマーノさんとよく話し合って誤解を解いて頂けると助かります。それだけで十分です」
まあロマーノさんの思い込みを解くのが一番大変な気がするけど。
「はい、ありがとうございます。愚息にはどのような手段を用いてもワタル様にご迷惑お掛けしない様に教育しなおします。申し訳ありませんでした」
どんな手段を取る気なんだろう。次に会った時ににこやかな好青年にでもなっていたら、それはそれで怖いな。
「はい、もう問題はありませんのであまり気にしない様にしてください」
この場を解散して村長さんのテントに向かう。
「ワタルさん、この度は誠に申し訳ありませんでした」
「実害があった訳でもないので気にしないでください。しかし、なんでロマーノさんはあんな結論に至ったんでしょうか?」
「それなんですが、移住のお話を頂いて、村で会議をした時から強硬に反対しだしまして。どんなに話をしてもフェリシアは捕らわれているんだ、この村も危ないと言い出しまして。きちんとした契約が結ばれている事も説明したのですが、納得しませんでした」
「そうなんですか」
たぶんフェリシアの事が好きなんだろうけど、そこから思い詰めて想像を現実と思い込んだのかな?
従業員君も拗らせてたし、僕も気を付けないと。島の依頼の時、ジラソーレは全員僕の彼女だっとか妄想した事あるし……他人事じゃないかも。
ジラソーレのメンバーにも、フェリシアにもあんな人が居たんだから、イネスにも居てもおかしくないよな……美女は命を削るカンナってこんな事なのかな?
「まあ分からない事を考えてもしょうがないですね。そうだ、お土産があるので皆さんで楽しんでください」
「お世話になっているのにお土産まで、ありがとうございます」
「いえいえ、気にしないでください。関わったからには楽しく過ごしてもらわないと僕の心にも良くないですから」
僕が島に連れて来たから不幸になったとか、鬱な展開は勘弁して欲しい。ヨーテボリで仕入れたお酒、香辛料の詰め合わせ、布を置いて行く。
「それで村長さん、村でなにか必要な物は出て来ましたか?」
「いえ、今の所はまだ出て来てません。お酒や香辛料に布まで頂いて、十分過ぎる程です」
「そうですか、ああ、でも一応船の食料をある程度置いて行きます。この大陸でですが他の国に行ってみようかと思っていますので、次にこの島に来るのは数か月後になるかもしれませんが、大丈夫ですか?」
「そうですか、元々私達は森で孤立した生活をしていました。これだけの支援を頂ければ十分に生活できます。お気になさらないでください」
「では、船に戻りますね」
船まで見送りに来てくれた村長さん達に、食料を渡し南方都市に向かって出発する。
「ご主人様、ロマーノがご迷惑をお掛けし、申し訳ありません」
「あはははは、フェリシアは何も悪くないよね。それより、南方都市に着いてからの行動だけど、胡椒を卸して食料の買い出し、ギルドで情報を貰って出航予定なんだけど他に何かしたい事ある?」
「お土産は配らなくていいのかしら?」
「ああ、それがあった。あとは胡椒も到着前に船に出しておかないと」
特に変わった事も無く、3日で南方都市に到着した。係留所からカミーユさんに伝言を頼む。船から胡椒を降ろしていると、カミーユさんが荷車を引き連れて来てくれた。
「カミーユさん、おはようございます。朝早くからすいません」
「おはようございます、ワタルさん。ご無事で嬉しいです。こちらをギルドに卸して頂けるのですか?」
「はい、前回と同じ量があります。お願いできますか?」
胡椒を積み終え、商業ギルドに向かい、そのまま別室まで通された。
「胡椒の確認をしておりますので少々お待ちください」
「はい」
お茶を飲みながらリムと遊んでいるとカミーユさんが戻って来た。
「ワタルさん、前回と同様に素晴らしい品質の胡椒でした。72白金貨で卸して頂けますか?」
「はい、それでお願いします。30白金貨は現金で、42白金貨はギルドの口座にお願いします」
「まさかまた胡椒貿易に行かれるのですか?」
「いえ、行きませんよ。この大陸の別の国に行ってみたいので現金を多めに持っておきたいんです」
「そうでしたか、では、ギルドカードをお預かりしますね。白金貨は3日後までお待ち頂けますか?」
「はい、お願いします」
「あら、ワタルさん、冒険者ギルドの期限が切れてますよ?」
「冒険者ギルドの期限? ……あっ、依頼を3ヶ月に1度は受けなきゃいけないんでした、忘れてました」
「カードに期限切れのまま記入しておくのは良く思われませんので、冒険者ギルドで登録しなおすか削除なさった方がいいですよ」
「はい、後で冒険者ギルドに行ってきます」
うわぁー完全に忘れてた、航海してると3ヶ月なんて直ぐだよな、もう冒険者の肩書はいらないかな?
でも異世界っていったら冒険者だよね……ああ、でも登録してもまた期限切れになる気がする。一度削除してもらって必要になったら登録しよう。
「それで、他国の事について相談があるんですがお時間よろしいですか?」
「はい、どのようなことでしょうか?」
「はい、南の大陸の、カターニア王国の内乱で胡椒が値下がりしていたんで、無理して胡椒を多めに積んできたんですよ。それを国外に売りに行きたいんです。観光もしたいので、良い国はありませんか?」
「国外ですか? 国内の胡椒の需要もまだまだあるのですが、ワタルさんの目的は胡椒を高く売るより観光ですか?」
「もちろん胡椒も高く売れると嬉しいですが、ついでに面白いものや珍しい物が見たいです」
「そうですね、胡椒ならばどこに持って行っても売れると思います。観光でしたらこの大陸東部の宗教国家パレルモにある大聖堂が有名でしょうか? 私も見た事はないのですが素晴らしいらしいですよ?」
宗教国家か……なんかラノベとかだと面倒な国のイメージだけど、どうなんだろう?
「僕は宗教とかあまりきちんと分かってないんですが、行っても大丈夫ですか?」
「特に問題はないと思いますよ。大聖堂で神様を侮辱でもしない限り寛容な国家ですから」
おっ? 神の名の下に聖戦をとかの物騒な国じゃないみたいだな。それなら最近教会にも行ってないしパレルモに行ってみようかな?
「そうですか、行ってみようかな? それと胡椒ならどこの国でも売れるんですか? 飛び込みでお店に売りに行っても大丈夫でしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。どの国でも胡椒は入手困難ですので買い取ってもらえます」
「ありがとうございます、試してみます。それと今回のお土産です、この中から1つ選んでくださいね」
「ワタルさん、お土産は嬉しいのですが、あまり高価な物は受け取れませんし、女性にアクセサリーを贈るのにこのやり方はどうかと思いますよ?」
「あはははは、そこまで高価な物ではないですし。自分のセンスの無さは理解してますので、気に入らない物を贈るより、気に入った物を選んで貰って身に着けてもらう方が嬉しいですから」
「そうですか、では……このピンクのイヤリングを頂戴しますね。ありがとうございます」
「いえいえ、いつもお世話になっていますので、あとこのお酒をギルドマスターにお届け願えますか? 果汁で割って飲むと美味しいらしいです」
お酒の事すっかり忘れてたな、今度ギルドマスターに会えたらウイスキーの事聞いてみよう。
「かしこまりました、前回のお酒もお喜びでした、ありがとうございます」
「あっ、ディーノさんとエンリコさんに会えますか?」
「お2人は現在護衛で王都に行ってます。帰って来るのはまだ先になると思います」
「申し訳ありませんが、お2人の分のお土産もお願い出来ますか?」
「はい、構いませんよ、お2人が戻られたら渡しておきますね」
「よろしくお願いします。ではまた3日後に来ますので、失礼します」
商業ギルドを出て先に宿を取るために海猫の宿屋に向かう。
「すいませんワタルさん、満室なんですよ」
「そうなんですか、残念です」
「ワタルさんがジラソーレの皆さんを連れて来てくれてから、そのままこの宿をご利用くださってまして。それからお客様が増えて嬉しい悲鳴を味わっております。ありがとうございます」
「そうなんですか、ジラソーレの皆さんは今いらっしゃいますか?」
「いえ、依頼に出ています、戻って来られたらお伝えしておきましょうか?」
「お願いします、また顔を出しますね」
ジラソーレのメンバーがそのままこの宿に居着いたのか。それだけで宿屋が満室になるんだ、凄い人気だな……まあ気持ちは分かるけど。
「イネス、フェリシア、海猫の宿屋が満室だし、他の宿屋に行く気もしないので、ルト号で寝泊まりしましょうか?」
「ええ、私は船の方が好きだから問題無いわ」
「私もです」
「なら、冒険者ギルドに行って登録を削除してからお土産を配って、買い物に行きましょう」
「「はい」」
冒険者ギルドに入ると毎回思う、自分は冒険者に向いてないんだなって。僕はパワーレベリングでレベルが上がって、ここに居る人達に負けてないはずなんだけど、駆け出しの冒険者にも勝てる気がしない。異世界に来てこの性格は勿体ないな。
カウンターに向かい冒険者登録を削除してもらう。一応、聞いたら再登録はFランクに戻るが出来るらしい。高ランクの人は試験を受けて元のランクに登録する事も可能だそうだ。
グイドさん達にお酒を渡し、ドニーノさんにもお酒を届ける。こんな物かな? 後はジラソーレのメンバーにお土産を渡すだけだな。
パレルモに行くための食料を買い出しして船に戻る。
「ああ、何となくパレルモに行く気になってたけど、2人は問題無い? 行ってみたい場所があるなら、そこにも行くよ」
「うふふ、私も大聖堂を見てみたかったし問題無いわ」
「私もです」
「ではパレルモが次の目的地だね……そういえばパレルモって船で行けるの?」
「そういえば、どうなんでしょう?」
「分からないわ」
「うん、まあ次に商業ギルドに行ったら聞いてみるね。でも船でそのまま行けなかったらどうしよう?」
「そうね、船で移動できないと辛い旅になるわ。私も冒険者の頃は平気だったけど、今の生活に慣れちゃったし、長い陸の旅は嫌だわ」
「私は……そうですね私も嫌ですが、このまま楽な生活に流れるのは問題無いのでしょうか?」
「……問題はあるんだけど、無理して苦手なフィールドに行く事も無いかな?」
そういえば角兎を狩っていた頃の、必死な気持ちが無くなってる気がする。お金が稼げるようになって調子に乗ってるのかもしれないな。大抵は調子に乗ってると痛い目にあう、気を引き締めよう。
「まあ、場所を聞いてから考えたら良いんじゃないかしら?」
「そうだね、夕食を取って今日はもう寝ましょう」
「「はい」」
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。




