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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第三章 胡椒貿易とダークエルフの島
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11話 テルニの街とセンスの無い僕

 門で簡易鑑定検査と入場料を支払い商業ギルドに向かう。


「うーん、街中にガラの悪い人が増えてるね。でもここに集まっているって事は、まだ内乱は始まっていないよね」


「そうですね、街の様子を見てもギスギスはしていますが、内乱が起こっているようには見えません」


「内乱にはなっていないけど、ガラの悪い人達は増えているって事だよね。破裂寸前とかじゃなければ助かるんだけど、望み薄かな」


「そうね、穏便に済みそうならこんなに人を集めたりしないわ、早く商業ギルドで情報を貰うべきね」


 まだ内乱が始まってないなら、胡椒を買う時間は有りそうだし、ギリギリ間に合ったっぽいよね。


「そうだね、急ごう」


「「はい」」


 足を速めて商業ギルドに入る。


「メアさん、こんにちは、またお世話になりたいのですが、宜しいですか?」


「? ……まあ、北の大陸の商人さん……ワタルさんでしたよね? まだこちらに滞在されていたのですか?」


「いえいえ、もう一往復してきました。商談と情報が欲しいのですが、お願い出来ますか?」


「往復ですか、こんな短期間で、いえ、別室にご案内しますね」


「ありがとうございます」


「それでワタルさんがもう一度来られたのは、スパイダーシルクと胡椒の売買ですか?」


「はい、上手く利益が出ましたので、もう一度と思いまして」


「そうなんですか、無茶をなさいますね」


「あはははは、まあ自覚はあります」


 どこでも2回目の胡椒貿易は無茶だと言われるよね……ずっと胡椒貿易って訳にもいかないかも。


「それで取引の方は可能でしょうか? 更にキナ臭くなっていますが」


「そうですね、スパイダーシルクを販売するのは別の国の方が良いですね。いま、国内の王侯貴族は高価な物を買うよりも、内乱の為に現金を欲しています。高価な買い物は控えられていますし、反面現金化の為に胡椒がかなりお安くなっております」


「そうなんですか、前回よりもかなり安く手に入るんですね」


「はい」


「どの位手に入りますか」


「時間しだいですが、すでに集まっている胡椒でも相当な量になっていますから。3日間で20白金貨分は卸す事ができます。お値段も3分の1程お安くなっていますし、お買い得ですよ」


「うーん、スパイダーシルクを卸せる所まで行って、取引をしてから戻って来て胡椒を買う事は可能ですか?


全部で65白金貨分ぐらいにはなると思うのですが、もちろんスパイダーシルクが前回の値段で取引できればの計算なんですが」


「今の状況でしたら十分にお取引は可能でございます。胡椒はドンドン運ばれて来ておりますので」


「そうですか、なら、スパイダーシルクを取引出来る国の港と、この国の現在の状況をお教え願えますか?」


「はい、まずスパイダーシルクの取引出来る港は、ここから西に魔導船で5日程の距離にフォルリ王国のテルニという港町がございます。そこならばスパイダーシルクの取引も可能だと思います。


 そして、この国の状況ですが、いまだ武力衝突には至っておりませんが、両陣営共に引かず。衝突は時間の問題となっております。


 衝突は王都を中心に行われる可能性が高く、この街は戦火に見舞われる事は無いと思います。しかし内乱が長引き戦火が広まれば絶対に安全とは言えません。早めのお取引が推奨されますね」


「分かりました、ありがとうございます。では、テルニに行ってから戻ってきますので、その時はよろしくお願いします」


「かしこまりました、胡椒を手配してお待ちしておりますので、ご無事でお戻りください」


「はい」


 ヨーテボリを出て商業ギルドでの内容を説明する。


「そうなのですか、とりあえずヨーテボリの街が内乱に巻き込まれる可能性は低いのですね。


 更に胡椒が3分の1も値下がりしてるなんて、それで当初は35白金貨分の胡椒を買う予定を65白金貨分まで増やしたのですね」


「ええ、どうせなら南方都市の商業ギルドで全額下ろしてくれば、更に34白金貨分の胡椒が安く買えたんだけど……失敗したね」


「でも65白金貨分の胡椒でも、捌き終わるまでにどの位の時間が掛かるのかしら」


「そうだった、しかも普段よりもかなり安く買えるから、莫大な量だし。怪しまれずに捌くのが難しい以前に、受け取りの段階で怪しまれそうだね。普通に運ぶとしたらどの位の船が必要なんだろう」


 ルト号に乗り西に向かう。行きは自動操縦が使えないから時間が掛かる。帰りは2日位で帰れそうだけど。


 時間がズレるとメアさんに怪しまれるかもしれない、向こうの港町でお土産探しと、観光で時間を潰すか。暗くなるまで船を走らせて、夕食を取ってイチャイチャして眠る。


 朝か、朝のキスを済ませサロンに……あれ? いつもと違うな? いつもはこのまま朝食に行くのに、更にしな垂れかかって来た。


 ? いつもと違う行動に軽く混乱していると耳元でお願いされた、甘い吐息が耳に掛かる。


「うふふ、ご主人様にお願いがあるの。海岸沿いに走ると魔物が出なくて退屈だから外海にでて走りたいの、ねえ、良いでしょ?」


 思った以上にどうしようもないお願いだったな。夢中になってるのは分かっていたがここまでとは。


「イネスのお願いだから叶えてあげたいのはやまやまだけど、今回は駄目です」


「えーなんで?」


「今回は初めて行く街だからマップも使えないんだよ。海岸沿いを通って行かないと通り過ぎたら面倒だし。外海に出て魔物との追いかけっこで、時間がズレて紹介してもらった街と違う所に行っちゃうと手間も増えるから駄目」


「しょうがないわね、じゃあ戻りの時なら良い?」


「戻りならマップも使えるし良いよ」


「分かったわ、戻りの時まで我慢するわ」


 そこまでガッカリしなくても……何がそこまで彼女を駆り立てるのか、僕は安全と分かっていても魔物に追いかけられるのは避けたいんだけど。


 でもイネスにパワーボートレースに使われているようなパワーボートをプレゼントしたら喜んでくれるかな? ……爆走して凄い所に突っ込みそうだから止めておこう。


 フェリシアも操船は好きだし、いざとなったら2人にパワーボートをプレゼントして、ご機嫌を取る為の切り札にもなりそうだな……覚えておこう。


 海岸線を通るのでイネスの望む魔物の襲撃も無く、のんびりとした船旅が5日間続きテルニに到着した。なんか5日間思う存分イチャイチャ出来たし、僕的には外海に出るより、楽しい航海だった。


 ここでも一応街から離れた場所から上陸する。門で簡易鑑定を受けて入場料を支払い商業ギルドを目指す。


 街並みはヨーテボリとあまり変わらず、ガラの悪い者達の姿が少し少ない位かな。この大陸全体が北の大陸より治安が悪いと聞いていたけど、のんびり観光出来る街は無いのかな。


 商業ギルドに着いて空いているカウンターに向かう。ありゃ、男の人だ、そうかここでも女性カウンターが人気で男性カウンターには混んでいても人は来ないんだね……


 女性カウンターに並び直したいが、イネス、フェリシアもどうしたの? って顔してる。ここから並びなおすのは無いな。


「こんにちは、少し金額が大きい話をしたいんですが、ここで大丈夫ですか?」


「かしこまりました、別室にご案内します」


 なんか男性職員相手だと、ドキドキしない分、冷静に話せそうだね……でも綺麗なお姉さんの方が良いな。


「それではご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「はい、実はこの布を大量に運んで来ました。こちらの商業ギルドで取引は可能ですか?」


「これは……スパイダーシルクですね。北の大陸からいらしたのですか?」


「ええ、こちらの大陸では人気だと伺っていますが、どうですか?」


「はい、もちろんお引き受けします。どの位卸して頂けますか?」


 どの位? 何反あったっけ? 金額で考えてたから数では考えていなかった。どうしよう。えーと1白金貨で50反だから350反か。


「確か350反程だったと思います」


「350反ですか、相当な量ですね。商業ギルドでは、相場以上の値段はつきません、商店に直接持ち込めば更に値が上がりますが、こちらで構いませんか?」


「ええ、量が量ですので商業ギルドでお願いします」

 

「かしこまりました、1反10金貨でお引き受けします、品物はどちらに?」


「明日の朝運んで来ますので、宿の紹介と荷車の貸し出しをお願い出来ますか? 宿は高くても安全な宿屋をお願いします」


「かしこまりました、ではこの珊瑚亭がお勧めです。荷車は何台必要ですか?」


「3台お借りしても構いませんか?」


「かしこまりました、では、明日の朝、お待ちしております」


「あっ、代金は現金で受け取りたいんですが大丈夫ですか? この大陸のギルドカードを持ってないんです」


「そうなりますと、少しお時間を頂きたいです。北の大陸に戻られるのであれば、胡椒で交換させて頂く事も可能ですが?」


「いえ、胡椒はヨーテボリで仕入れる約束がありますので」


「なるほど、あちらは値が下がってましたね。では2日ほどお時間を頂きたいのですが」


「分かりました、では荷車はその時にお借りします。ああ、度々すいません2日間待つ間にお土産を探したいのですが、この国のお酒と、名産品でお勧めは何ですか?」


「お酒は麦で作ったお酒を蒸留したものが有名ですね。私はきつくて飲めないんですが。名産品でしたら、この国では珊瑚の飾り物が人気です」


「ありがとうございます、探してみます」


 麦で作ったお酒を蒸留した物? ウイスキーかな? 珊瑚の飾り物は喜んでくれそうだな。しかし相変わらずスパイダーシルクは高く売れるな、日本円で1反1千万円ってどうなんだろう?


 老舗の呉服店だと何百万もするって聞いた事があるけど、この大陸では取れないのと海を渡るリスクを考えると妥当な値段になるのか?


 それでも1千万は無いよねー、でも売れるから商業ギルドも買うんだよね。この世界でもお金を持ってる人は持ってるんだろうな。


 商業ギルドを出て珊瑚亭で部屋を取る。ここも1泊1人2銀貨か庶民には優しくない値段だよな。安全が第一だけど。


 2日間の間は食料の買い足しと、お土産を探しながら観光する。お酒は驚いた事に蒸留された後に寝かされずに販売されていた、果物のジュースで割って飲むのが主流らしい。南方都市でもそうなら知識チートの出番だ、ギルドマスターに会えたら話してみよう。


 珊瑚のアクセサリーはなかなか綺麗な物だった。真っ赤な珊瑚とピンクの珊瑚のイヤリング、指輪、ブローチ、ペンダントを数種類ずつ購入した。女性に対するお土産としては失格だが、数種類の中から気に入った物を選んでもらおう。


 イネスに髪が赤いんだから、赤いイヤリングとかどう? って聞いたら赤い髪の中に赤いイヤリングがあると良いのかしら? っと言われた……僕には無理だ。


 結局イネスとフェリシアにも気に入ったのを買ってあげる。センスの無い僕にはどうしようもない買い物だった、お土産のアクセサリーも2人の意見を全面採用した。


 2日後の朝、暗いうちから借りて来た荷車に、スパイダーシルクを積み込んで商業ギルドに出発する。


 中に入るとお兄さんが待っていた。やっぱり女性カウンターに並びなおすべきだったな。スパイダーシルクの確認が終わり35白金貨を受け取り街を出る。


 ルト号に戻り一息つく。


「何とか無事に商談がまとまったね。あとは胡椒を65白金貨分か。前回の7白金貨分でゴムボート40艘分だったから、その9倍以上の数で、その上に3分の1程値引きされてるから……どの位になるんだ? 考えるのが怖い」


「あの時も沢山運んで沢山送還して大変でしたね。それの10倍位ですか? 何日かに分けて運ぶのが良いと思います」


「うふふ、そうね無理して1日で運ぶよりもいいわ。ご主人様、もう外海に出ても良いかしら?」


「ええ、でもあまり無茶はしないでくださいね。僕は怖いけどどの位の量になるか計算してみるよ」


「分かったわ、ご主人様も考え過ぎは体に悪いから気を付けてね」


「ええ」


えーっと、こんな計算なんて何年ぶりだ? 高校でも数学は完全に捨ててたからな。算数の時代からもう苦手だったんだよなー、えーと、まずは……うわぁ、計算間違い? 物凄い量なんだけど。


 安くなってるからって絶対に買いすぎだよ……ゴムボート495艘分ってどうやったら積み込めるんだ? そしてどうやったら捌ききれるんだよ。


 これはヨーテボリに船で乗り込んで、別の大型船に運ぶって言わないと怪しい事この上ないな。


 別の大型船に運ぶってだけでも怪しい気がするけど、今回の事が終わったらヨーテボリには暫く近づかないようにしよう。香辛料の詰め合わせとお酒と布も買い足しておくか。


 2人に話すと苦笑いしながら手伝ってくれると言ってくれた。出来るだけ早く終わらせよう。


 怖い事は忘れて、リムと楽しく遊ぼう。リムをもっちもっちして心の平穏を取り戻す。


「リム、大好きだよー」


『……りむ……も……』


 リム、恐ろしい子。そんな事言われたら、もう離れられないよ。リムを抱きしめて悶えまくる。


 ……2日でヨーテボリに到着した。魔物には1度しか襲われずにイネスは不満一杯だ。魔物は僕にはどうしようもないので勘弁してほしい。


 これから大変な荷運びだ気合入れないとね。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
気になるから書きますが、通常、彼女でもないのに貴金属のお土産を贈るものですか? サンゴで商売するならわかるけど。
[気になる点] >ここから西に魔導船で5日程の距離 >のんびりとした船旅が5日間続きテルニに到着した 商業ギルドのメアさんが考えてる魔導船の速度とワタルの魔導船の速度は全然違うんだから、余程理由があ…
[気になる点] 何度も訂正すみません… 主人公の計算結果が気になったので適当に計算しました。 おかしな点があれば否定して頂いてもいいです。 ゴムボートの積載量は分かりませんが気になったので。 今回…
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